定例研究会レポート

女性の「からだ」と「こころ」を科学する 乳房文化研究会 トップへ

「現代ティーンのこころとからだ」
2015年1月24日 (土)

「現代ティーンのこころとからだ」

■ジュニアのバスト成長の事実
 萩野 智子 先生 (㈱ワコール人間科学研究所 研究員)
■ティーンファッション雑誌に見る中学生のボディ意識
 眞部 菊実 先生 ((株)新潮社 『nicola』(ニコラ) 編集長)
■現代少女のからだとこころ
 谷口 麻起子 先生 (聖泉大学人間学部人間心理学科 准教授 / 臨床心理士)

■パネルディスカッション
・コーディネータ :山口由美子運営委員
(聖泉大学看護学部 非常勤助手/リンパドレナージ セラピスト)
・パネリスト:眞部先生 谷口先生 萩野先生


成長期の少女達のからだの実際、またからだについての意識・興味関心事を、成長などの変化から追及する研究者、人気ティ-ンファッション雑誌の編集者、臨床心理士の立場から話題提議いただき、現代少女の「からだとこころ」を探求する研究会が開催されました。
萩野氏からは、数百人の少女を40年近く追跡調査したデータより特に今回はバストについてのお話でした。少女のバストはいつどのように変化するのか、3つのステップで変化し成長していくこと。そのステップは実年齢で、決まるのではなく初経の時期と大変関係があることがわかりました。
1.バストの成長のめやすは、初経からの年数(実年齢では決められない)
2.初経前後の4年間に3つのステップで「形」や「かたさ」が変化する
3.初経の1年以上前からバストはふくらみはじめる 
また成長期にはどんなブラジャ-を着ければいいのか。ブラジャ-着用の実態と、その必要性。いつ着ければよいのか。成長の個人差、バストがゆれることによる痛みや恥ずかしさなど、どのように対処すればよいのか本人、保護者の悩みやどうアドバイスしているか等のお話しをいただきました。

眞部氏からは、中学生に一番人気のある雑誌『ニコラ』の1997年創刊から現代までの読者層、企画内容のご紹介、そこから見えるティ-ンのボディ意識をお話しくださいました。
人気のある記事は読者モデルであるニコラモデル(ニコモ)が実践している美顔、美ボディなどビューティ関連。そのニコモのオ-ディションの状況、歴代のグランプリ受賞者の紹介。そこからは多くの有名女優さんが輩出され、ニコモの影響力は大きいとのこと。中学生の好きなもの「ランキング企画」から、ファッション、コスメ、芸能人・エンタメなどの上位のものをうかがうと中学生の興味関心事がよく伝わってきました。
おっぱい事情としては、胸のなやみアンケ-トでの、乳房の大きさの悩み、また「ニコラ保健室」に寄せられる成長期の乳房の悩みなどの紹介もあり、「おっぱい企画」は他の人気企画にくらべると、期待値は高いが人気は低いとのこと。今後も中学生が楽しい生活を過ごせるコンテンツを作り続けますと締めくくられました。
谷口氏からは、臨床心理学、摂食障害がご専門の臨床心理士の立場より 「思春期とは」どういう時期なのか。 身体の変化、大人の世界への出立の不安。 精神的、経済的な自立の時期は延びているのに身体の変化自体は変わらず思春期は来る、あるいは、その時期が逆に早まっているなどをお話しいただきました。
その「思春期と摂食障害」については、1980~90年の古典的な摂食障害(主にいわゆる拒食症)と近代以降の摂食障害の比較、身体観の比較。今は小学校低学年からのダイエットするという低年齢化がみられ、その理由は母親自身が痩身。子どもを太らせたくないなど。また長期化や複雑化がみられるなどの違いがあるとのこと。
その影響として、考え難い怪我をする。バレ-ボ-ルが続かない。夏でも冬服着用など、日常的に身体のぎこちなさが起こっており、身体性がなぜ変化してきているのか、身体性の伝承が重要である。大人の女性が科学的知識のみでなく、いかに生きるかということをこころだけでなくからだにも根ざした知として伝えられなくてはならないなど引用され、身体同士の関わり合いをする、身体の「常識」を言語化して伝える等の必要性を話されました。

(運営委員 藤井孝子)

▲ 上に戻る