定例研究会レポート

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Message from 3.11 
母乳でつなぐ命 part1
2011年10月22日 (土)

Message from 3.11 

■被災地・福島県いわき市の実態~実際に被災した住民の立場から~
 里見 孝弘 先生/福島県保健衛生協会 医師 (乳房文化研究会 会員) 
■被災地の実態~これまでの支援をふりかえって...今後の災害に備えての活動~
 井口 優子 先生/井口小児科内科医院 開業医
■被災地の実態~地域医療に携わる医師の立場から~
 大江与喜子 先生/医療法人財団樹徳会 上ヶ原病院 院長
・コーディネーター : 実川 元子 (乳房文化研究会 運営委員)

震災について、母乳という視点からは何が見える?という興味で参加した今回の定例研究会は、福島県の医師である里見先生、関西から被災地へ行かれた井口先生と大江先生、三方とも現場からの発信であり、「母乳」というテーマに限らず広く、貴重なお話を伺うことができた。震災以来ずっと関西にいる私にとっては、現場の具体的な話を聴けた点が、今回最も有難いことだった。具体的な話とは例えば、里見先生の仰った、粉ミルクを溶く湯の不足や、井口先生の指摘された、女性のパンティーライナーの必要など。被災地支援時の細やかな想像力の必要を痛感した。私は女であるので、災害が起こる度「生理中の女性は大変だろう」と心配になるのだが、女であっても出産・育児経験は無いので、授乳の困難といったことには考えが至らぬし、いわんや井口先生のお話にあった「人工肛門の方が避難所で肩身の狭い思いをしている」といったことには言われなくては想像が及ばない。

こうした問題に対しては、非・被災地にいる同じ立場のものが地道に訴え続けることが必要なのだろう。大江先生も「普段から遠方にネットワークを作っておくことが大事」と仰っていたが、それが非常時に役に立つ。と同時にやはり、影響力や知名度のある人が啓発(という語が適切か分からないが)の声を上げてくれると有難い。
より詳しく聴きたく思ったのはやはり、放射能の話。母乳は安全という諸学会の指針が示されはしたけれど、実際に被災地のお母さんたちで不安が消えない人は多い筈だ。それは本当に根拠のない不安なのか、その不安をどう解決すればいいのか、勿論すぐに答えの出る問題ではないが、更に多くの方の話を聴いてみたい。また、母乳育児が最上という前提で議論がなされていたことも、医学分野に明るくなくその共通認識を知らなかった私にはカルチャー・ショックであった。免疫力等のみならず心理的観点からも母乳育児は重要とのことだが、この点については、心理学や社会学などいわゆる文系分野からの知見も聞いてみたく思う。

京都大学大学院 人間・環境学研究会博士課程
村田智子(会員)

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