魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

20 Feb, 2015

乳房(ニュウボウ)ってエロチック!

トップレス・ダンサーの胸が気になる。

 イタリアを代表する振付家のコンテンポラリーダンスを鑑賞したときのこと。ダンサーは皆、上半身裸で引き締まったボディを披露していたのですが、中に一人だけ胸の豊かな女性がいました。彼女が激しく動き、男性とアクロバティックに絡むたびに、キレのよいパフォーマンスとは対照をなすやわらかな胸に、同性の私も釘付け状態。彼女の魅力的なバストのせいで、ダンスの多くを見逃した気さえします。このことが気になっていたのですが......。
 『乳房(にゅうぼう)の文化論』という本に興味深いことが書かれていました。社会学者の北山晴一さんの論考によると、フランスの家族社会学者コフマンは、各地の夏の海岸でトップレスの女性にインタビューしたデータをまとめ、乳房を「ふつうの乳房」「美しい乳房」「エロチックな乳房」の3つに分類したそう。彼女たちは様々なプレッシャーの中でトップレスになるか否か決断しており、求める理想像は「ふつうに、美しい乳房」であるとも。

 女性の乳房は、醜くてもエロチックでも視線を引きすぎてしまい、本人や周囲の平穏を乱すというわけです。海岸でトップレスになる女性は「ふつう」と「美しい」の間で揺れ動かざるを得ない。これはダンサーにも当てはまるのではないでしょうか。コンテンポラリーダンスにおける乳房の理想像とは、視線を引きすぎず、観客席の平穏を乱さない「ふつうに、美しい乳房」なのでは? 私が見たダンサーの乳房はエロチックすぎたのでしょう。
 女性のムネをあらわす言葉にはバスト、チチ、チブサ、オッパイなどがありますが、乳房(ニュウボウ)には独特の学術的な香りが漂いますね。考古学からマンガ研究まで、広範なジャンルの専門家が集結したこの文化論にふさわしい呼称といえるでしょう。ワコールが全面的に支援している「乳房文化研究会」の講演がベースになっており、知的好奇心、美的好奇心を刺激してくれる本です。貴重な図版も豊富なので、ぜひご一読を。

美しすぎるワコールディアのマーガレット。

 『乳房の文化論』ではブラジャーも重要なテーマです。上野千鶴子さんは、乳房の値打ちには歴史的な変化があることを突き止め「隠すから値打ちが上がったんじゃないか」「ブラジャーこそがおっぱいの値打ちを上げた」と考察。深井晃子さんは、1970年代アメリカのノーブラ運動について「実践する女性も少なからずいたものの、実際にはノーブラのように見せるブラ、『ノーブラ・ブラ』が登場することになる」とブラの歴史に言及しています。
 胸の豊かなダンサーを見て「ブラをつけたほうがいいかも」と思った私ですが、ブラはエロチックなバストを隠すだけでなく、隠すことでよりエロチックに見せたり、時にはノーブラのように見せたり、あの手この手で妄想を抱かせるアイテムなのですね。私がダンサーにつけてほしいブラはワコールディアのブラ(きっぱり)。踊るという言葉が似合い、筋肉の動きや肌の色を引き立て、見る人を楽しませてくれるブランドだからです。

 2015年春夏のワコールディアのテーマは「野風」。3月にはその真骨頂というべきマーガレットのシリーズが登場します。自然光を受けて輝くグリーンを表現したというみずみずしい色彩、アウトラインを繊細にかたどったチュールレースなど、オーガニックな風が感じられるコレクションなのです。マーガレットの花言葉は、発祥地のヨーロッパでは「ピュア・オブ・ハート」だそう。秘めた胸の思いがあふれ出しそうなイメージです。
 マーガレットを白1色や黒1色で表現したシリーズも用意されているのが、ワコールディアの遊び心。白のシリーズは無垢なエッセンスを蒸留したような気高さですし、可憐な花のダークサイドともいうべき黒のシリーズは、マスキュランを装うことで逆にセクシー度が高まりそう。「このブラなら、あの胸がどう見えるのか」とダンサーに脳内試着してみる私。しかしブラばかりに目が行き、ますますダンスを見逃してしまいそうな気もして悩みます。

「乳房の文化論」乳房文化研究会編 淡交社

■乳房文化研究会:https://www.wacoal.jp/nyubou-bunka/

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