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プロジェクト

新分野への挑戦 「大きな胸を小さく見せるブラ」の開発秘話

新しい芽の誕生
進化し続ける商品とプロモーション

プロジェクトは2009年春にスタートした。
それは、一人の若手デザイナーのアイデアから生まれたものだった。
プロジェクトの始まり
チーフパタンナーが、とある試作品のブラジャーをしげしげと見つめていた。大きな胸にコンプレックスを持っていた若手デザイナーが、バストを抑えることで、服を着たときの姿をより美しくみせたいという想いから試作したものだった。
欧米ではミニマイザーといって、豊かな胸を抑えて小さく見せるブラというジャンルが確立されている。しかし、日本でのその市場は小さいと考えていた。「でも、もしかしたら…」。胸の辺りが何かざわざわした。
バストを上げたり支えたりするのではなく、“抑える”ことで美しく見せる働きがあることに、チーフパタンナーとして新鮮な面白さも感じていた。チーフパタンナーはそのブラジャーを商品MDに見せ、意見を聞いた。
「面白い、いけるかもしれない」
それが『大きな胸を小さく見せるブラ プロジェクト』の発端だった。二人は早速、上司のもとに向かい、試作品を見せ、調査にとりかかりたい旨を告げた。OKが出た。

10%のニーズに賭ける
早速、ネット調査を開始した。知りたかったのは、一般の女性の中に「バストをコンパクトに見せたい」というニーズがあるかどうか。20〜40代の女性のモニター約500名に、ブラジャーに求めるニーズを調査した結果、「バストをコンパクトに見せたい」という回答は10.7%だった。
「数字は小さいけれど、そこにはニーズの強さがあった。それに応えるのがワコールの使命だと思った」
「店頭で売り出すには数字が低すぎました。しかし、ネット通販ならいけると思いました」
二人は、試作のブラジャーとネット調査のデータ、企画書を持って、ウェブストアマネージャーのもとに向かった。2009年の春だった。
当時、ウェブストアは苦戦していた。キャンペーンでオリジナルカラーの商品を展開するなどいろいろな販売アイデアを試みたが、上手くいかなかった。“ウェブならでは”をキーワードに、限定感、ニッチ性といったモノ軸のアドバンテージを利用したプロモーションに限界を感じていた頃でもあった。
ブラを選ぶポイントについて

ものづくりとウェブのプロが手を握る
「これだ。このままの名前で出そう!」
ウェブストアマネージャーは興奮した。二人が示した企画書には、「大きな胸を小さく見せるブラ」という仮称が書かれていた。当時、SNSが流行り始めており、これからはモノ軸ではなく、話題性や目立ち方がウェブのプロモーションの軸になると考えていた。「大きな胸を小さく見せるブラ」というストレートなネーミングは、まさにそのようなプロモーションに格好の材料だった。
「インターネットの世界というのはわかりやすいようで、実は非常にわかりづらい。片手間でできる世界ではない。当時、二人から提案された商品を見て、コンセプトの明快さに感心した。ものづくりはものづくりのプロに任せ、われわれはウェブのプロとして、この魅力的な商品の話題づくりに知恵を絞る。それぞれの部門が最大効果を生むべく力を合わせれば、この商品は成功する」
ものづくりチームは、早速、デザイナーや商品部と協力し、本格的な商品化にかかった。試作品はあくまでもプロトタイプで、それをワコールブランドの「大きな胸を小さく見せるブラ」としてネットで販売するためには、機能・コスト・デザインを含めてブラッシュアップしなければならない。検討を進める中で、「大きな胸を小さく見せるブラ」は仮称から、正式な商品名として採用された。
ウェブストアで初のオリジナル商品。ターゲットはあくまでもニッチな層だ。既存の商品のように、大きなマーケットは期待できない。そのため、それまでの商品開発のように素材開発や機能設計にかける予算がなかった。ものづくりチームにとっては非常に厳しい状況だったが、それでも限られた予算の中で最高の商品を作ることに注力した。
 一方、ウェブストア課は2010年4月22日発売のスケジュールに則って、独自にプロモーション計画を立案していた。
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男性の口コミでブレイク
2010年4月22日。ワコールのウェブストアのメイン画面に「大きな胸を小さく見せるブラ」新発売が告知された。しかし、初日に売れたブラジャー枚数はたった20枚。だが、ウェブストアマネージャーは動じなかった。
わずか10%のニーズの商品、売れるか売れないもわからない。しかし、話題を提供すれば必ずユーザーは動くはず。見事その予想は的中。マスコミリリースを打つや否や大きな反響があった。
「2日目(23日)、300枚売れました。mixiや日経などのサイトで『大きな胸を小さく見せるブラ』が取り上げられたからです。そこまでは計算通りでした。しかし、異変が起きた。26日に800枚、27日には900枚が売れた。同時に、mixiのニュースランキングで『大きな胸を小さく見せるブラ』が1位になり、Twitterのつぶやきも一晩で2,000件を超えていました」
ウェブストアマネージャーは当時の驚きを語る。自ら仕掛けたとはいえ、予想外の大きな反響だった。
「1カ月を待たず在庫がなくなりました。急遽、追加生産の手配をしましたが、生産に約2カ月が必要でした。多くのお客さまにご迷惑をかけた」
商品MDはうれしい悲鳴を上げた。
今回の成功の理由をメンバーは、“男性の口コミ”と分析する。「大きな胸を小さく見せるブラ」というネーミングに反応した男性がその話題を盛り上げたことで、商品名が浸透し、実際に悩みを抱えていた女性によって支持されていったのだと。
今までだと流行や新製品に敏感な女性の口コミや書き込みで、商品が売れていった。ところが、今回は男性がきっかけとなったというのだ。
小さく見せるブラ 受注実績

マーケッター、ネット業界が注目した成功事例
「大きな胸を小さく見せるブラ」の成功は、他方面にも思わぬ反響を呼んだ。「逆転の発想」、「SNSを使ったプロモーションの成功事例」として、マーケッターやネット業界が取り上げたのだ。その反応にウェブストアマネージャーは戸惑った。やれることは全てやったという自負はあったものの、SNSを通じたマーケティングやプロモーションは、当時(2010年4月)は現在ほどメジャーではなく、それほど反響があるとは思いもしなかったからだ。
2011年2月には、それまでネットでしか販売していなかった「大きな胸を小さく見せるブラ」の店頭販売をスタートさせた。ネットで見たお客さまから、店頭でも売ってほしいという依頼が数多く寄せられたからだ。
今回のプロモーションに携わったウェブストアバイヤーはこう語る。
「胸の大きい友だちから、『可愛いブラがない』とか『洋服を着ると太く見える』といった悩みを聞いていたので、売れそうだと思っていました。店頭で買うのにはためらいがあったけれど、ネットだと他人の目を気にすることなく買える。ネット通販の特性とお客さまのニーズがあった商品です」
過去にワコールでは、ネット通販のオリジナル商品が店頭販売されたケースはない。「大きな胸を小さく見せるブラ」の販路は今でもネット通販が主軸だが、同商品の話題性は商品特性を超えた広がりを見せたのだ。
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NEXT PROJECT 進化し続ける商品とプロモーション

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