PICK UP乳がんの体験談インタビューなど配信中!New 02/09UP

#02

女性らしく輝ける日々を過ごすための
「乳がん検診」の大切さ

前半では、増田さんご自身が乳がんを克服された経験を伺いました。「乳がんは検診を定期的に受ければ早期に発見できる」ということですが、具体的にどのような検診がありますか。

最近では、乳がんと闘っていらっしゃる芸能人のブログが公開され、20代や30代といった若い女性の方から、乳がんや検診についての注目が集まっています。早期発見につなげるためにマンモグラフィ検診などを受けることはとても大事ですが、「全ての年代の女性が必ず受けた方がいい」というわけではありません。

例えば、34歳以下の女性が乳がんにかかる確率は、乳がん全体の1割にも満たないと言われているほど、非常にかかる確率が低いのです。ですから必要以上に心配することはありません。また、マンモグラフィ検診はX線検査ですので、ほんの少しですが被爆のリスクがあります。20代、30代から年1回、もしくは2年に1回のペースで検診を受けたときに、被爆による体へのリスクは心配ないというエビデンス(科学的根拠)はまだありません。

一方で、「乳がんの死亡率低下」という観点から言えば、40代以降に2年に1回のマンモグラフィ検診を受けるメリットがあるというエビデンスがあります。

ただし、母や姉妹、祖母、叔母といった近親者に乳がんにかかった人がいれば、乳がんにかかるリスクが一般より高くなりますので、乳腺科の医師に相談することが大事になります。

年代によって検診を受けるべきかどうかが異なる、ということですね。

はい。20代、30代で血縁に乳がんの方がいらっしゃらない場合は、あとで紹介する「自己チェック」を毎月行うことで良いと思います。

40代以降の方の乳がん検診は、マンモグラフィ検診を2年に1回というのが現状ではエビデンスのある検診です。超音波検査もありますが、現状ではまだエビデンスのある検診にはなっていません。

ただし、乳房に異常や変化を感じたり、乳がんにかかった血縁者がいる場合は、早めに乳腺専門医を受診し、医師の指示に従っていただきたいです。

どの年代にもやっていただきたいのが、自分で乳房を触診する「自己チェック」です。月1回、乳房がやわらかくなる時期、生理後3~4日目くらいに乳房の左右の形や大きさの変化、乳房や脇の下、鎖骨周辺などにしこりやへこみなどがないか、見て触って調べてください。習慣的にチェックすることで、変化に気づきやすくなります。

しかし、40歳以降の女性は、自己チェックだけでは乳がんは早期発見が難しいです。通常、手で分かるしこりは直径2cm大(1円玉ぐらいの大きさ)とされていますが、早期乳がんは2cm以下なのです。

マンモグラフィが向いていない人がいる!?

40歳以降はマンモグラフィを受けていれば早期発見できるのでしょうか?

マンモグラフィ検診には向かない乳房の方がいらっしゃいます。マンモグラフィはエビデンスの高い検診で、受けるべきがん検診です。ですが、「マンモグラフィ検診を毎年受けていたのに、突然、進行性の乳がんが見つかった」という例があるのです。

乳房は、皮膚や皮下脂肪、乳腺組織から成り立っています。乳房内の乳腺組織の割合を乳腺濃度と言います。乳腺濃度が高い体質の人は、マンモグラフィで撮影すると、乳房内全体が白っぽく見えます。これをデンスブレスト(高濃度乳房)と言いますが、乳腺もがんも白く映るのでがんを発見しにくいのです。

マンモグラフィ画像を読影する医師は、「乳腺濃度が高いので判別困難」と報告すればいいのですが、「異常なし」と告げる場合があります。すると、もし乳がんだったとしても、早期発見には結びつきにくくなってしまいます。

米国では4割の女性が高濃度乳房と言われていますが、日本では7~8割の女性が高濃度乳房だとされ、早期に見つけ出すことが困難になるケースは少なくありません。

米国では「デンスブレストだから判別困難」と、医師が患者にきちんと告知すべきという活動が行われ、義務づける法律を施行した州は24州以上に及びます。日本でも、私が副理事長を務めるNPO法人「乳がん診断ネットワーク」において、こうした検診や診断に関する正しい情報を、多くの方々に発信する活動に取り組んでいます。画像診断にあたる専門家(医師、技師、画像検査を取り扱う企業)と、患者や今後患者になる可能性のある一般の方々をつないで情報交換を行う活動もしています。

デンスブレストと診断したら、「超音波検診もやりましょう」と提案してくださる乳腺科の医師もいらっしゃいます。しかし、自治体検診などでは、マンモグラフィのみという場合が多く、高濃度乳房で見えなければ「異常なし」という結果が届きます。でもそれは、判別困難だった可能性があるので、「私は高濃度乳房ですか?」と問い合わせることが大事になるのです。高濃度乳房であれば、超音波などの検査を組み合わせることが大切になります。多くの女性が問い合わせれば、「デンスブレストの場合は必ず患者に伝える」という意識が自治体で施行されるかもしれません。それだけでも、乳がんで苦しむ女性の数の軽減につながるはずです。

「医療ジャーナリスト」と「乳がんサバイバー」としての"使命感"

増田さんは乳がんを克服されてから、NPO法人「乳がん診断ネットワーク」をはじめ、さまざまな活動をされています。具体的にはどのような活動をされてきたのでしょうか。

乳がんになる前から医療ジャーナリストとして活動し、乳がんに関する医療現場や患者さんを取材してきました。乳がんと告知され、治療した後も、自分が乳がんになった意味をずっと考えてきました。そこで辿り着いたのが、医療ジャーナリストとして、そして乳がんサバイバー(経験者)として、「早期発見ができれば、簡単な治療で済み、こんなに元気になれる!」「そのためにも知識をもって自分に合った検診を受けてほしい」ということを伝えていくことが、大事ではないかと思いました。ちょっとした"使命感"かもしれません。それでまず、乳がんの体験談とともに医師の取材、監修による乳がんに対する知識をまとめた『乳がんの早期発見と治療』(小学館)という書籍を執筆しました。

次に「NPO法人女性医療ネットワーク」(http://www.cnet.gr.jp)の中の活動として、7年前に「マンマチアー委員会」(http://www.cnet.gr.jp/mamma/)を作りました。「マンマチアー」というネーミングは、マンモグラフィ+マンモエコーのマンモからヒントを得て、"女性の乳房の健康を応援する"という思いを込めた造語です。多くの女性に向けて、乳がんという病気や乳がん検診の啓発活動を行っています。月1回のペースで、乳がんにまつわるエビデンスのある医療情報やQOLアップの方法などを各専門家をゲストに招いて情報共有できる、無料で申し込み不要で参加できる場を設けています。

講演活動も行い、乳がん検診に関する知識や、患者視点からの経験談もお話しています。

乳がん患者が女性らしく輝くためのQOL

また、私も参加している日本乳癌学会では今年から、乳がんサバイバー(経験者)が企画して乳がん患者さんに向けたセミナーを開き、食事、運動、美容など生活の質を上げる「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)アップのためのサポート」を主軸にした発表を行いました。

最近では特に「外見(アピアランス)の重要性」が注目されています。保険適応になった乳房再建の情報はもちろん、ウイッグの情報、眉やアイラインの書き方、つけまつげのつけ方、ネイルケア、くすんだ肌色を明るく見せるメイクの仕方などを病院内でアドバイスしてもらえる場が、国立がん研究センターなどのがん専門病院にできています。外見を整えると、見違えるような笑顔で元気になる患者さんが少なくありません。アピアランスを整えることで、つらい抗がん剤などのがん治療を途中で離脱する割合が実際、減ってきています。

術後につける下着も、患者視点でさまざまな工夫がなされています。乳房の左右差なく、胸のラインを整えられるブラジャーも出てきていて、術後も着たい洋服が着られるようになりつつあります。これは、女性としてとても大事なことです。最近では「アピアランス」の医療者向けガイドラインができたほど、医療者たちも重視し始めています。

今後は、どのような活動をされる予定でしょうか。

今、最も注力しているのは、乳がん検診や診断に対する正しい知識を広めることです。何歳で、どんなリスクをもった女性か、ひとりひとりに合わせた乳がん検診が行われるように、専門家と国、行政、そして私たち乳がんサバイバー(経験者)が一緒に研究を元に考えていく時期に来ています。それをあきらめず、進めることで、乳がんで苦しむ人が一人でも減ると思っています。

乳がんになれば、それまでの当たり前のような生活が過ごせなくなる恐れがあります。しかし、正しい知識を持って自分の乳房をよく知り、自分に合った検診を受けて早期発見につなげれば、たとえ乳がんになったとしてもこれまで同様の自分らしい日常を取り戻せることを多くの人に伝え続けていきたいです。

取材を終えて

「何となく乳がんについての知識がある」。そんなレベルだった私にとって、がんを克服され、医療の知識も豊富な増田さんのお話は、説得力のあるものでした。誰もがかかる可能性があるからこそ、正しい知識を持って検診を受けることの大切さ、そして、乳がんは早期発見できれば怖くない病気であり、「忙しいから...」で検診を受けないことが後悔につながるということを、改めて実感しました。

(取材:高島 三幸)

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女性医療ジャーナリスト
増田 美加さん

女性の健康と医療の執筆・講演を行う。CNJ認定乳がん体験者コーディネーター。NPO女性医療ネットワークで、マンマチアー(女性の乳房の健康を守る)委員会を仲間と一緒に立ち上げた。著者に『乳がんの早期発見と治療 これで安心』(小学館)『患者力』(講談社)など。