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    ■編集部セレクト 

    ものづくりの現場から〜パジャマができるまで〜vol.6 染色工場(ローラー捺染:後編)

随所に見られるローラー捺染ならではの職人技

前編でご紹介したローラー捺染のさまざまな準備を経て、いよいよ本刷り、調整、色チェックという段階へ入っていきます。ここまでくれば、あとは機械にお任せなのかと思いきや、ここからさらに本格的で高度な職人の直感が生かされています。

最後に色を定めるのはスペシャリストの直感

本刷りに入る前に、まずはいったん試し刷りを行います。ローラー捺染による染色工程では、まるで一流の板前が包丁を研ぐかのように精緻な、捺染士の刃研ぎによって研ぎ澄まされたドクターブレードと呼ばれる刃を型にセットします。次に糊と顔料を調合した捺染糊を入れるカラーバックと呼ばれるボックスに捺染糊を入れます。カラーバックにはローラーが取り付けてあり、このローラーが回転することで捺染糊が彫刻ロールの表面に運び出されます。彫刻ロールがドクターブレードの刃先を通過する際に、彫刻部分以外の捺染糊をこそぎ落とすことで、染色される仕組みになっています。

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(写真:顔料を機械のカラーバックに入れ準備している様子)

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(写真:試し刷りの様子)

彫刻ロールは色ごとに印刷するため3色なら3本、5色なら5本をセットします。生地を数メートル分を回しながらプリント位置のずれがないか、色ムラや、かすれがないかなど目視しながら微調整を繰り返していきます。また乾燥すると色が変わるので、きちんと乾燥させてから色をチェックします。配色図案と見比べ、色のスペシャリストである捺染士の最終チェックを経ない限り、本刷りには進めません。場合によっては彫刻ロールの彫り直しもあるため、試し刷りしたものをデザイナーや色を決める職人とで入念にチェックし、最終チェックを終えるとすぐに本刷りに入っていきます。

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(写真:試し刷りした生地を乾燥している様子)

機械に生地が投入され、いよいよ本刷りに入ると、職人によるチェックの目はさらに厳しくなっていきます。

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(写真:本刷り中に目視で確認している様子)

捺染機にはクラフトテープが巻かれ、これは機械や生地についた微細なチリやほこりが染色の際に付着してしまわないように配慮されています。

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(写真:クラフトテープを巻いている様子)

また、上下左右のロールの位置を微調整したり、捺染糊の注ぎ足しを繰り返したりと、捺染機が動いているあいだ職人が手を休めることはありません。つまりローラー捺染においては機械捺染でありながらもまったくのオートメーションというわけではなく、むしろ材料作りや色決めといった準備工程よりも、生地を機械に投入してからのほうが職人の目が光り、職人の手ごころがしっかりと加わっているのです。こうして細やかな目配りによって染められた生地は、12本のシリンダー乾燥機を通過して110度程度の温度で乾燥させます。また、ある程度刷りが進んだ段階でいったん生地の端を切り取り、左右の色の濃度に差がないかなどをチェックします。

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(写真:染める前の生地が機械に投入されている様子)

熟練の捺染士によると、配色図案に書かれた調合比率通りにやっても、色の見え方は季節や湿度、生地の白度によっても微妙に変化するため、最後に信じるのは直感だといいます。たとえばピンクといっても人によってイメージするピンクは違うため、綿密なミーティングを経て、イメージや色の好みをつかむことが重要になります。実際に図案通りにやっていたのに「この色ではない」と言われてしまうこともあると話します。

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(写真:捺染士が最終確認をしている様子)

では、その直感はどこからやってくるのか?結局は自分なりの経験と感覚だといいます。素材の特性、気候や湿度、用途、そして色の好みなども考慮しながらゴールを見定めていき、最後はさわった時の顔料の感触や粘度で調整します。顔料の配合だけでなく糊の粘度でも調整し、自分の手の感覚を信じてベストな配合比率を探り当てていきます。色は人から教えてもらえないので、下積みには最低5年はかかるといわれています。捺染士は「料理人が味を定めていくと似ている」と話していました。

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(写真:刷り上がった生地)

日本の技術と、日本人の快眠を、これからも

ローラー捺染技術は機械捺染でありながら、多くの部分が優れた職人の技によって支えられています。こうした技術は、もはや伝統産業といってもいい希少なものとなっています。しかし、時代とともに日本のものづくりを支えてきた多くの技術が失われつつあります。いまでは鉄工メーカーがローラー捺染機の製造そのものを取りやめていて、この染色工場ではそうした事態に備え、すでにローラー捺染機の予備機も購入済みです。この捺染機はおそらく日本で最後の捺染機だといわれています。

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(写真:予備のローラー捺染機)

「これからの時代は技術力だけでなく発想力が必要」と未来に向けて、技術の伝承のみならず、さらなる革新を目指す職人たち。日本人のクオリティ・オブ・ライフを高め、豊かな眠りを支えるワコールのパジャマは、こうした現場のたゆまぬ努力と職人たちの技術によって支えられています。

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