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  • ものづくりの現場から〜パジャマができるまで〜vol.8 染色工場(スクリーン捺染:後編)

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    ものづくりの現場から〜パジャマができるまで〜vol.8 染色工場(スクリーン捺染:後編)

試行錯誤と経験によって磨かれた捺染技術

前編でお届けしたスクリーン捺染を行うための準備工程を経て、今回はいよいよ捺染から水洗、加工、乾燥、検査までの工程を、順を追ってご紹介します。大型で精緻な全自動の機械が並ぶ工場にあって、要所要所で目視によるチェックが、ものづくり品質の向上に貢献していました。

1色1枚の型枠に染料を流し込み、染め上げるスクリーン捺染

まず最初に、黒い樹脂でコーティングした刷版(さっぱん)(しゃ)というメッシュ状の生地を張り、スクリーン枠で囲った型枠を捺染台にセットしたら、ネジで機械に固定します。現在このスクリーン枠はアルミ製が使用され軽量化されていますが、以前は鉄製でかなり重量があり、その分抑えが効いて枠をしっかり固定するメリットがあった反面、大きな負担がかかっていました。

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(写真:工場に保存されているスクリーン枠)

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(写真:捺染機全体)

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(写真:捺染台にセットされたスクリーン枠)

スクリーン枠のサイズは標準の24インチサイズを使用しています。この型枠1枚につき1色ずつ染色されていきます。捺染台の前には、乳白色の糊と染料が溶かし込まれた色糊が入ったバケツと杓で、1色ずつ型枠に流し込んでいきます。今回の取材した時の生地の柄は赤色が多く、赤はバケツで、グレーなどの柄が少ない部分は杓で流し込み、バケツと杓を色の分配に合わせて使い分けています。

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(写真:型枠に色糊を流し込んでいる様子)

捺染機を動かすとセットされた生地が機械を進んでいき、それぞれの型枠ごとに施されたデザインと配色に準じた色柄を自動で捺染していきます。この時は6色での染色でしたが、最大15色まで使うことができます。

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(写真:生地が投入されている様子)

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(写真:生地が進むにつれ、捺染されていく様子①)

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(写真:生地が進むにつれ、捺染されていく様子②)

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(写真:生地が進むにつれ、捺染されていく様子③)

ただし、機械1台あたりに4〜5人体制で、かすれなどの不良がないか常に目視でチェックしながら作業が進められているため、あまりに色数が多すぎるとチェックが難しくなるので、12色までを上限とするケースが多くなっています。

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(写真:目視でチェックしている様子)

捺染された生地は機械の奥上部にある乾燥機に次々と送り込まれ、生地に塗布された染料を乾燥させます。乾燥機に入る直前の部分に取り付けられた扇風機は、濡れた生地に触れて跡がつくなどならないようにシワをまっすぐ伸ばし、広げる役割を果たしています。乾燥機にはローラーが6つあり、入口から出口までの長さはおよそ生地3〜40m分あり、温度はメーターで管理しています。乾燥時に、生地の左右で温度差があると色が変わってしまうため、左右の色むらなどが出ないように生地の右部分と左部分の温度をメーターでチェックし、温度管理を徹底しています。生地の素材や長さ、色数などの条件にもよりますが、この時はおよそ10分程度で生地の投入から捺染、乾燥までが完了しました。

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(写真:乾燥機に生地が送り込まれる様子)

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(写真:乾燥機)

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(写真:乾燥が終わった生地)

全長25mにも及ぶ大型のスクリーン捺染機がこの工場には8台もあります。ひとつの柄の捺染が終わり、柄またはカラーを替える際には、いったん型枠を自動型枠洗浄機と呼ばれる専用の特殊な機械や人の手でしっかりと洗浄し、色糊を完全に洗い流してから、また次の柄を入れるので、柄を替えるのにおよそ1時間かかります。色替えのみの場合は、30分程度の時間で洗浄作業は完了します。

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(写真:色糊を自動型枠洗浄機とホースの水で洗い流している様子)

高温の蒸気で化学反応させて色を生地に固着させる 蒸熱 じょうねつ 工程

生地に色柄を捺染して乾燥させた状態では、染料は生地の表面に糊の力で付着しているだけで、まだしっかりと固着しているわけではありません。そこで、染料を生地に固着させていく必要があります。スクリーン捺染では、染色過程で繊維素材と染料が化学反応し、エーテル結合と呼ばれる炭素と酸素が結合を起こすことで生地に固着するタイプの反応染料と呼ばれる染料が使用されています。この反応染料と綿の生地を熱と水分で結合させるのが蒸熱工程です。

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(写真:蒸熱工程の機械全体)

まず機械の中に生地を投入し、高温の水蒸気と湿熱によってスチームすることで化学反応を起こし、繊維の一本一本までに染料を結合させ、色が繊維にしっかりと固着する仕組みになっています。

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(写真:生地が投入される様子)

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(写真:機械の中で生地が蒸されている様子)

温度が低ければ色が薄くなり、水分が足りないとかすれや色むらが出てしまう上に、染料ごとに化学反応の速度が早い染料や遅い染料もあります。そのため、この工程での成否が完成品における色の再現性や発色の良し悪し、色むらの有無を決める重要な工程となっています。さまざまな試行錯誤を経て、最適な条件として導き出されたのが、設定温度105度、湿度100%、投入時間6分間という条件です。この基準は明確に定められていて、化学反応が起こる染料を使った製品の場合は生地などによって、設定温度も投入時間も変わることはありません。

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(写真:蒸熱工程を終えた生地)

余分な染料を洗い流し、高速乾燥を施す水洗・乾燥工程

蒸熱工程で生地に染料が固着したら、水洗機で余分な染料を自動で洗い落とす水洗工程へと移ります。水洗機には織物用とニット用があり、織物用の場合は生地を広げた状態で洗浄します。具体的には水洗槽に生地が投入されると、機械の下部に張った水の中を通っていく仕組みになっています。機械1台につき水洗槽が6つあり、最初は水で洗い、徐々に温度を上げてお湯で蒸らしながら洗った後、最後ふたたび水で洗います。ニットの場合は生地を広げてしまうと伸びてしまうため、洗浄はかなり難しい工程になりますが、織物の場合だと生地をしっかりと広げたまま最初から最後まで洗浄できるため、シワも出にくく、ひとつの生地を洗浄するのにわずか10分程度で仕上がります。

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(写真:織物用の水洗機全体)

水洗工程が終わり余分な染料を洗い流すと、続いては生地の風合いを良くするための仕上げ、繊維を柔らかくするため薬品や柔軟剤の塗布、さらにはUVカットや抗菌防臭といった加工などを施す工程へと移ります。作成された薬品や柔軟剤の入ったタンクからポンプで引き上げて機械の投入部分近くにあるバッグと呼ばれる容器に投入されます。ここで薬品や柔軟剤にしっかりと漬け込みます。

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(写真:薬品や柔軟剤を入れたタンク)

薬品や柔軟剤の塗布が終わると、さらに乾燥工程へと進みます。乾燥工程では、生地の両端に針を刺し、生地を広げながら185度のガスバーナーの熱で高温乾燥させます。乾燥機には同じ機能を持った7つの部屋があり、時間にしてわずか数十秒で素早く一気に乾燥させていきます。この時、生地が乾燥機に入るスピードを早く、出るスピードを遅く設定することで乾燥機の中で押し込まれ、生地を収縮させています。理由としてはこれまで見てきた前工程すべてにおいて、生地を縦に引っ張り、一度も生地がリラックスしていないためです。最後の乾燥工程で幅の調整と押し込み量の調整をすることによって、衣料に加工するために寸法安定性を確保し、加工に適した状態にします。

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(写真:乾燥機全体)

目視によるチェックを終えた生地はロール状に巻いて縫製工場へ

こうして仕上げ加工まで終えた生地は、検反と呼ばれる最後のチェック工程へと向かいます。検反機を通過していく生地を、見本と見比べながら汚れや目詰まりなどの不良がないか、検反専門の担当者が目視によるチェックを行います。ここでも前編の検査工程に登場した演色性の良い色評価用と呼ばれる特殊な蛍光灯が使われています。検反機はニット用が1台、織物用が10台あり、機械1台につき1人の検反専門の担当者がつきます。検反機のスピードは織物の場合かなりのスピードになり、最低でも一年間は訓練しないとできないスペシャリストの仕事です。特にニットはチェック項目の多さや難易度の高さもあり、特定の担当者によってチェックされています。また検査基準や検査手順、検反機のスピードなどは各社によって異なります。たとえばニットをはじめ、基準の厳しい製品や幅広でチェックする面積が大きいものなどは、機械スピードを遅く設定し、欠点があった場合の内容も細かく管理報告します。仮に検反で不良が見つかった場合は、不良箇所が含まれる製品であることがわかるよう、バヌックと呼ばれるタグを目印として取り付け、後工程となる縫製工場との情報共有を行います。

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(写真:検反機)

検反作業が終了した製品は、台車に乗せられ巻取り機へと運ばれていきます。そこで紙芯に巻いてロール状にし、梱包します。これですべての工程を終え、いよいよ次なる工程、縫製工場へと出荷されていきます。

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(写真:巻取り機)

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