魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

18 Dec, 2018

和装はもっと、私に近づく。

KCIがキモノをテーマにした展覧会を米国で開催中!

「キモノ・リファッションド」展の様子(ニューアーク美術館) “Kimono Refashioned”, Newark Museum,2018, ©Emily Laverty
「キモノ・リファッションド」展の様子(ニューアーク美術館) “Kimono Refashioned”, Newark Museum,2018, ©Emily Laverty

 外国人のカップルがレンタルの着物姿ではしゃいでいるのを見て、うらやましいなと思ったことがあります。和装のルールを逸脱してはいけないというプレッシャーなど微塵も感じられず、自由な解釈で着物を楽しんでいたからです。ワコールが支援するKCI(公益財団法人 京都服飾文化研究財団)が今、日本の着物がファッションに与えた影響を考察する「キモノ・リファッションド」展を米国で開催していると聞き、着物の魅力をフレッシュな視点で再確認できそうだなと興味を惹かれました。

※KCI(京都服飾文化研究財団)は、ワコールの出資により設立された、公益財団法人です。

「キモノ・リファッションド」展オープニングの様子(ニューアーク美術館)
Opening preview of "Kimono Refashioned", Newark Museum,2018, ©Mike Peters

 この展覧会は、ニューヨークからもアクセスしやすいニュージャージーのニューアーク美術館で2019年1月6日まで開催中。その後、サンフランシスコ・アジア美術館、シンシナティ美術館と、2019年9月15日まで米国の3都市を巡回する予定です。今回は、現地のホットな様子をKCIキュレーターの新居さんに伺うことができました。ニューアーク美術館でのオープニングには、マスコミや美術館関係者、支援者など大勢の方が集まり、大盛況だったそうです。

図録の表紙はイリス・ヴァン・ヘルペンの2016秋冬コレクション
"Kimono Refashioned": Japan's Impact on International Fashion/Asian Art Museum, San Francisco

 展覧会の内容は、着物が現代のファッションをどう刺激し、新たな創造を促してきたかに焦点をあてたもの。KCIの衣装コレクションを中心に、米国の美術館が所蔵する絵画や着物なども展示され、19世紀後半から着物文化が海外に受け入れられてきた様子がわかる構成になっています。米国の印象派画家ウィリアム・メリット・チェイスの「日本の着物を着た少女」(1890)に描かれたモデルは、染や刺繍が華やかな着物に身を包み、とてもリラックスした雰囲気です。
 着物をモードに取り入れてきた国内外の有名デザイナーのコレクションは、アイディアの競演といった感じで見ごたえあり。1991年秋冬のコム・デ・ギャルソンのイブニングドレスは、黒のシルクタフタに白と金で鶴の飛翔が大胆に描かれ、ドレスからのぞくクリノリン風スカートの朱赤も効いています。フォーマルドレスでありながら着物のエッセンスをシンプルに伝える強さは、日本のデザイナーならではの風格ですね。

左)日本の着物を着た少女/ウィリアム・メリット・チェイス 1890
Brooklyn Museum, Gift of Isabella S. Kurtz in memory of Charles M. Kurtz ©The Kyoto Costume Institute
右)イブニングドレス/コム・デ・ギャルソン(川久保玲)1991秋冬コレクション
"Kimono Refashioned", Newark Museum,2018, ©Emily Laverty

着物の着こなしは、下着が決め手。

 オープニングで注目を集めていたのは、日本の服飾デザイナーの先駆者の一人であり教育者でもあった山脇敏子氏のドレス(1956)だったそう。華やかな金の刺繍が施された作品で、浮世絵を思わせる大きな波のモチーフも人気の秘密かもしれません。ヨウジヤマモトのドレス(1995春夏)も、金色の菊の紋が目を引きます。帯のような張りのあるスカートとジャージ素材とのコントラストが面白く、和のテキスタイルの実力を知らしめる逸品ではないでしょうか。

(左)ドレス/山脇敏子1956 ©The Kyoto Costume Institute
(右)ドレス/ヨウジヤマモト1995春夏コレクション "Kimono Refashioned", Newark Museum, 2018, ©Emily Laverty

 当コラムとしては、下着を取り入れた作品もチェックしておきたいところですが、いちおしは、ガリアーノの黒のマイクロミニのアンサンブル(1994秋冬)。着物風にデザインされたダブルのジャケットを帯のようなベルトで締め、下半身はマイクロミニ+長いトレーン+ガーターベルトというセクシーさです。トム・フォードによるグッチのジャケット(2003春夏)に至っては、白の半襟が和装下着の襦袢(じゅばん)のようで、その自在な発想に驚かされます。

左)アンサンブル/ジョン・ガリアーノ1994秋冬コレクション
"Kimono Refashioned", Newark Museum,2018, ©Mike Peters
右)ブルーのジャケット/グッチ(トム・フォード)2003春夏コレクション
"Kimono Refashioned", Newark Museum,2018, ©Mike Peters

 モードの中に生かされた「キモノ」を見ていると、伝統的な「着物」ももっと自由に着られればいいなと思います。経済産業省・和装振興研究会の報告書(2015)によると、大人の女性の8割以上は着物を着たことがあるとのこと。着用シーンは8割以上が「儀式や冠婚葬祭」で、その他は「パーティやイベント」「趣味(習い事、観劇等)」「観光地や旅行先」がベスト3。今後着物を着るにあたり困っていることは「着付けができない」「価格が高い」「お手入れ方法がわからない」がベスト3でした。

 着付けの最初のハードルといえば襦袢です。着物の美しい着姿は襦袢で決まるといわれるくらい、下着は大切なんですね。そのハードルを下げてくれるのが、着物を現代にフィットしたファッションとして受け継いでいくために生まれたインナーウェア「和らんじゅ」です。紐なしで着られ、着崩れしにくく、伸縮性があり、動きもラク。そのデザインを見て、着物が現代のファションを活性化してきたように、現代のファッションのノウハウが、逆に着物を活性化させていくことを確信したのでした。

和らんじゅのワンピース

■「キモノ・リファッションド」展
・2019年1月6日まで:ニューアーク美術館
https://www.newarkmuseum.org/
・2019年2月8日-5月5日:サンフランシスコ・アジア美術館
http://www.asianart.org/
・2019年6月28日-9月15日:シンシナティ美術館
https://www.cincinnatiartmuseum.org/
■「KCI」
https://www.kci.or.jp/
■「和らんじゅ」
https://www.wacoal.jp/walinge/

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