定例研究会レポート

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おっぱい万華鏡
2007年1月27日

乳房文化研究会 定例研究会                    
「おっぱい万華鏡」 ダイジェスト

■講師 日置智津子  運営委員で
東海大学講師の先生から議論の叩き台と
なる問題提起がありました。

乳房文化研究会15周年を迎え、昨年(2006年)10月7日、東京・青山のスパイラルホールでの記念企画が実現しました。東京での初の催しでしたが、好評を博しました。これを期に1月27日、会員を中心に今後の新しい切り口、新しい話題についての定例研究会がワコール本社でもたれ、参加者のそれぞれが乳房への思いや関わりについて語り合いながら進行しました。30名の参加者の全員から発言があり、活発な議論が展開されましたが、主な問題提起を中心に記します。

雄になぜ乳首があるのか
 最初に「乳房曼荼羅」と題して、運営委員で東海大学講師の日置智津子先生から議論の叩き台となる問題提起がありました。
タイトルにふさわしく、まずおっぱいの写真がつぎつぎに計10点が映し出され、それぞれのおっぱいを見て浮かぶこと(ことば)を一言ずつ書くようにとの指示です。そのなかには、レトロなイメージの男性の写真があり、参加者は男性にも乳首があることを改めて確認することになりました。
 日置先生の指摘。「一般におっぱい=女性という意識が強いです」「私が大事だと思うのは、乳房の場所です。乳房は心臓の上にあります。だから、お互いの鼓動を感じる、お互いの命を感じあう場所になっています」「乳首はおっぱいの象徴です」「どうしておっぱいは胸に二つあるのでしょうか。一つ、あるいは三つ以上あるとおかしいでしょうか」「乳首はまさに子と母(女)を強力につなぐ魔法の道具です。人が一体化すること(男の女の営み)と同じく、子と母は乳首と口(口腔粘膜)という接点をもって生死の格闘をおこなっています。おっぱいは命のエネルギーを育む一つの道具立てです」。なお、参加者のおっぱいの感想についての日置先生の分析は講演録に掲載されます。
その後、ディスカッションに入りました。ここで出された日置先生の問題提起「雄になぜ乳首があるのか」をめぐって、冒頭から発言があいつぎました。「男のおっぱいは、おへそのように感じないもので無関心なもの」ですが、「男も触っていたら乳首が硬くなります。必ず硬くなってきます。気持ちよくなることもある」と男性の参加者から指摘がありました。その過程で、河田光博先生から「乳房にまつわるホルモンと脳」と題するミニ講演がありました。脳の中に放出されるオキシトシンというホルモンは、「子宮の収縮や乳汁の分泌だけではなく、外界からの危害に対する保護にも、母子関係にもとても強く働いていることがわかってきました」。ところが、このオキシトシンが「脳の中に放出されないと、哺乳動物が子どもの危機に対して私は知らないという、異常な母性行動をとるようになります」。一方でオキシトシンが、「ポジティブな社会環境をつくる作用、あるいは個体間の信頼関係をつくる作用が新たにわかってきました」。本能のメカニズムに関する河田先生の話は、参加者に示唆と刺激を与えました。

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