定例研究会レポート

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20周年 特別研究会
Message from 3.11
母乳でつなぐ命 part2
2012年1月28日 (土)

20周年 特別研究会<br/>Message from 3.11

■からだのなかの放射能 
  安斎 育郎 先生
安斎科学・平和事務所 所長/立命館大学 国際平和ミュージアム 名誉館長
■いのちのバトン
  鎌田 實 先生
諏訪中央病院名誉院長/日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)理事長

・コーディネーター : 北山晴一 (乳房文化研究会 常任運営委員)

安斎育郎先生のご講演を聴いて
 東日本大震災から、間もなく1年となるが、ニュースで福島原発事故が取り上げられない日はない。乳児栄養を専門にしている私には、被災地の赤ちゃんの健康状態が一番の気がかりだ。
 原発事故後、授乳中の多くのお母さんから、「母乳を続けても大丈夫でしょうか?」と質問を受けた。乳児にとって、母乳が最良の栄養源であることは議論の余地はない。しかし、放射能汚染と母乳栄養についての研究は見当たらず、また放射能に関する知識のない私は、「放射能汚染を受けない方が良いけれど、国の定めた基準値よりずっと低い値だから...。」と言葉を濁し気味に返答し、お母さん方の不安に応えられないでいた。今回の特別研究会の安斎育郎先生のご講演「からだのなかの放射能」は、今一番訊きたい話題であった。研究会の出席者も100名を超え、関心の高さが伺えた。
 安斎先生は原子力工学をご専門にされ、原発の良い面・悪い面、どこまで明らかなのかを客観的にお話しくださった。先生のご提案は、わからないことも多い原発事故に、これからを見据えた「リスクの最小化」の提案と「理性的に怖がる」姿勢の重要性で、私がお母さん方にしたかった回答であった。
 研究会には今回はじめて参加させていただいた。研究会において、専門分野の異なる先生方とお話できることは、私に新たな視点と研究を客観的に見つめ直す機会を与えてくれる、とても楽しみな時間となりそうだ。

滋賀県立大学人間文化学部生活栄養学科 助教
廣瀬 潤子(会 員)

鎌田實先生のご講演を聴いて
  1月28日わたしは始めて「乳房文化研究会」に参加するため千葉より京都に向かった。特別研究会「母乳でつなぐ命part2」が開催されることを聞いたからである。
いくつかのお話があったが、鎌田先生の講演はとくに印象に残った。実は鎌田先生のお名前は知っていたが、お目にかかってお話をしたのは始めてであった。お伺いして始めて認識したことがいくつかあった。
一つめ、これはわたしの全くの認識不足であったが、氏が今回始めて災害支援に携わったのではなく、実はチェルノブイリの原発事故以来現地に何度も足を運んで長く支援にかかわってこられたと言うことである。
もう一つは、何と大学の同窓生らしいと言うことである。私は医師であり、しかも氏とは、たぶん同じ頃に医学部学生であったようなのである。在学中にお話ししたことはなかったと思うが、多分同じ場所にいるのは卒業以来40年ぶりであったようなのである。
 ご講演は現場に足を運んだ方ならでは臨場感に溢れる多くのスライド写真と、氏の闊達な口調で、時にはボディランゲージを持ってぐいぐいと聴衆を引き込んで行くものであった。あまり具体的なことについての知識のないわれわれに災害の現実と支援について考えるきっかけを与えるものであり、われわれはそれぞれの立ち場でどう行動すればいいのかと言うことを改めて考える機会ともなった。

亀田総合病院新生児科 顧問
/NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会 代表理事
奥 起久子

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