定例研究会レポート

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母と子をつなぐ母乳哺育
2013年6月8日(土)

母と子をつなぐ母乳哺育

■母子栄養学から見た母乳哺育の新展開 
 成田 宏史 先生
京都女子大学 家政学部 食物栄養学科 教授
■人間らしさを育む授乳--おっぱいを与える母性と子育ちの発達進化
 竹下 秀子 先生
滋賀県立大学 人間文化学部 人間関係学科 教授

・コーディネータ :廣瀬 潤子運営委員
           (滋賀県立大学 人間文化学部 生活栄養学科 准教授)


私は大学時代生薬の勉強をした。その際、身の回りにある全ての植物・生物には人にとって有用な成分が含まれていること、そしてそれぞれが絶妙なバランスで成り立っており無駄なものはひとつもないことを知り、自然の神秘に感動したことを今でも覚えている。
今回お二人の先生の講演を聴き、忘れていた当時の感動がよみがえってきた。
              

第一部の成田宏史先生の講義は、生命の神秘とも言うべき「母乳」についてであった。「母乳は人間にとって唯一摂っても良い食べ物である、お母さんからもらう母乳に赤ちゃんにとって悪い成分が入っている訳がない」。この仮説に基づき研究され続けた結果、母乳中に「アレルギー予防の天然ワクチン」とも言うべき経口免疫寛容を誘導させる免疫複合体の存在を発見されたというお話は、聞いている者をワクワクさせる臨場感あふれるご講義であった。本を読むだけではなかなか分かりにくい経口免疫寛容の分野について、非常にわかりやくかつ、ウイットに富んだユーモラスなご講演で、あっという間の70分であった。

また、第二部の竹下秀子先生の講義では、人間も地球上に生息する動物の一種であることを改めて認識させられた内容だった。人間と、祖先を同じくするボノボやチンパンジーをわかりやすく比較して頂いたお陰で、新生児微笑や寝姿に至るまで、両者が非常に類似した発達過程を示すことがよくわかった。直立しているお母さんボノボが子供の手を引いている様などは、まさに人間社会でもよく見る光景で笑みさえこぼれた。また一方で、人間だけしか出来ない行為、例えば、相手の立場や気持ちに寄り添える点や、母親が我が子の目を見つめ、おっぱいを自ら与えようとする授乳は人間ならではの行為であり、改めて「授乳」の大切さ・意味深さも痛感した。

最初は「乳房文化研究会」という、とてもユニークなネーミングに惹かれ参加させて頂いた会であったが、今回、乳房一つをとっても、実に様々な切り口があり、非常に奥深いものがあることを知った。
これから、更にもっとユニークな切り口が飛び出してきそうで、今から次の会が待ち遠しい私である。

(江崎グリコ株式会社 健康科学研究所)

石田 美由紀 

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