定例研究会レポート

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ファッション誌と乳房
2013年10月5日 (土)

ファッション誌と乳房

■ヌード写真における乳房
 馬場 伸彦 先生 (甲南女子大学 文学部 メディア表現学科 教授)
■ぽちゃカワブームと乳房
 中沢 明子 先生 (ライター・出版ディレクター)
・コーディネータ :米澤 泉 運営委員
          (甲南女子大学 人間科学部 文化社会学科 准教授)


ファッション誌における乳房表象について理解し、そこから広がる女性の身体や消費に関する様々な問題を考える機会として研究会を開催しました。講師は、メディア文化論、写真論を専門とされている甲南女子大学の馬場伸彦先生とライター・出版デイレクターでファッション誌を作る立場である中沢明子先生にお願いいたしました。               

馬場先生からは、まず、乳房とは何かということを絵画や写真の裸体を事例に歴史の中で乳房がどのように捉えられ、乳房が誰のものなのかという話をいただきました。その中で、裸(ネイキッド)と裸体(ヌード)が違うこと、裸(ネイキッド)は「服を着ていないこと」であり、裸体(ヌード)は「芸術の一形態」であること、ファッション写真のヌードは服装の一種であることを教えていただきました。そして、服装のイメージを伝えるファッション写真に、服を着ていないヌード写真が多用される理由はセクシャリティ、ファンタジを表現するためであり、ファッション写真におけるヌードとは、単に衣服をはぎ取られて無防備な体ではなく、作り手のイメージを伝え、見る人のイメージを掻き立てるためのものであり、益々、ファッション誌におけるヌード写真が増えてくるであろうというお話をいただきました。
中沢先生からは、最近ブームになっている少しふっくらとした女性を意味する「ぽちゃカワ」について、その人達をターゲットとしたファッション誌や下着について詳しくお話をしていただきました。まず、ぽっちゃりオシャレの転換期は3段階あり、1つめは1990年初期に太っている人の着られる服から着たい服が欲しいという願望が顕在化し百貨店等で大きいサイズコーナーが展開し始めたこと。2つめは2006年、アマチュア男性ゴルファの古田選手が「ぽっちゃり王子」とネーミングされて「ぽっちゃり」という言葉が流行。世間に「ぽっちゃり」という言葉が浸透し始め、同時に少し太った女性芸人達がブレイクしたこと。そして3つめは2013年に専門雑誌が創刊されブームが本格化したことを教えていただきました。そして専門のファッション誌が出版されるようになり、オシャレな服が増えつつあるが、ぽちゃカワな下着についての洗練された記事はほとんどなく、まだまだオシャレな下着が、簡単に買える状態ではないというお話をいただきました。
その後、コーディネータの甲南女子大学・米澤泉先生が司会進行されて講師の先生方とパネルディスカッションを行い、会場からの質問を中心に、ファッション誌、ヌード写真、ぽちゃカワについてディスカションがくり広げられました。
様々なイメージを付与するファッション誌で「ヌード写真」と「ぽちゃカワ」といった夫々ユニークなテーマのお話をしていただき、ファッションの側面から乳房をめぐる問題を提起していただいた有意義な研究会でした。

  (事務局長 岸本 泰蔵)

   

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