定例研究会レポート

女性の「からだ」と「こころ」を科学する 乳房文化研究会 トップへ

静と動の美しさ
2016年11月19日(土)

静と動の美しさ

■身体表現とコミュニケーション
●柴 眞理子先生(しば まりこ)
放送大学 東京足立学習センター 所長>
  / 神戸大学 名誉教授 / お茶の水女子大学 名誉教授

■ロボットデザインと人間デザイン
●高橋 智隆先生(たかはし ともたか)
株式会社ロボ・ガレージ 代表取締役社長>
/ 東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授

■パネルディスカッション
●コーディネーター 杉野 菜穂子 運営委員
(株)ワコール 人間科学研究所 研究開発課
●パネラー 柴先生、高橋先生

乳房にかかわらず、また、スタイルやプロポーションといった静的な美しさに留まらず、様々な分野における「美」をとりあげ、現代女性の美と今後の予測を考える会を開催しました。

まず、「身体表現とコミュニケーション」というタイトルで放送大学の柴眞理子先生からお話をいただきました。コミュニケーションには、自分の内と外の2つがあり、意識的・無意識的な身体表現がコミュニケーションにおいて大きな役割を果たす。このことを舞踏を通じて教えていただきました。身体表現で大事なことは、心とからだを含めた「まるごとのからだ」が生き生きとした状態であり、身体感覚と身体感情が十分に働いてることであり、現代人は身体感覚・身体感情が十分に働いていない人が増えているのではないかということや、今回のテーマに合わせた4つの問い、「なぜ美しさを考えられるのか」「美しさはどこにあるのか」「私たちはなぜ様々な美しさを求めるのか」「誰のために何のために美しくありたいのか」について実習を交えて教えていただきました。美しい動きには原石のような美しさと宝石のような動きがあることや美しい歩行とは、姿勢がよく、無駄な動きはなく、推進力があり、それによって存在感が感じられる歩行であることなど、美しさはコミュニケーションのプロセスで生まれ、その豊かなコミュニケーションのプロセスは、「生き生きとしているからだ」から生み出されるということが分かりました。最後に精神病院でのダンスセラピーの活動を見せていただきました。普段動かない患者の方々がダンスを通して身体感覚・身体感情を取り戻し、生き生きと自分を表現されている姿に感動しました。

次に「ロボットデザインと人間デザイン」というタイトルでロボットクリエーターの高橋智隆先生からお話をいただきました。先生自身が命名されたロボットクリエーターという仕事について開発された数々のロボットの紹介を交えながら教えていただきました。また、期待が大きいロボット産業について正しい市場規模の見積りと正しい期待をしないと、開発する側・利用する側・投資する側も不幸になってしまうことや人間が簡単だと思っていることが、実はできないのがロボットであることなど、ユーモアと迫力のあるお話を聞かせていただきました。人型ロボットの役割として、人とのコミュニケーションを人型ロボットが担い、実作業は家電製品や実用ロボットが担うといった新しい価値観を考えておられ、そのために、人がロボットに話かけやすいように非常に繊細なデザインが必要とのこと、具体的には4つのデザイン=外観のデザイン、モーションのデザイン、普及のステップのデザイン、期待値のデザインが重要ということを教えていただきました。その実例として今話題のロボホンの実演や女性型のロボットを見せていただきました。今の時代の新しい産業というのは、何かニーズがあって創られたものではなくて、"ユーチューブ"や"ライン"のように、おもしろいものができて、使い始めて、使っていく中で後から使い道が生まれ、それが結果的にビジネスになる時代であり、ロボットや人工知能も、まず、それを形にしてみて、みんなが使える状態にしてみることが大事で、そこからフィードバックがあって製品やサービスが生まれてくるのではないかという話が印象的でした。

(事務局長 岸本泰蔵)

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