定例研究会レポート

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文学作品に見る乳房
2013年1月26日 (土)

文学作品に見る乳房

■文学作品からみた乳房 
 高城 修三 先生
第78回芥川賞受賞作家
■私たちが初めて出会う母の乳房----現象学的考察
 小川 侃 先生
京都大学名誉教授 / 甲子園大学 学長

・コーディネータ :本郷 重彦 委員(造形作家)
・パネラー :米澤 泉 委員(甲南女子大学 人間科学部 文化社会学科 准教授)

最近、「文学」をテーマにしていないね。やってみない?今回のコーディネータである本郷先生からの一言で始まった企画でした。本郷先生の知人である作家の高城先生と、その友人である哲学者の小川先生を講師にお招きして文学・哲学の観点から「乳房」を考える研究会を開催しました。正直、事務局としては参加者が集まるのか不安でしたが、新聞告知や書店にポスターを掲示したことが功を奏してか、沢山の方が集まり、「文学」というテーマへの関心の強さを知りました。

高城先生からは、まず、「乳房(ちぶさ)」や「オッパイ」の語源についてお話をいただきました。先生の説ではオッパイは幼児語であり、その言葉の中心は「パ」という発音で縄文時代の古い母系社会から守られ受け継がれてきた言葉でないかということ。それに対して「ちぶさ」は聖なる生命の源を表す「ち」の房であり、弥生時代に発生した言葉ではないかということでした。言葉が日本人のルーツに密接にかかわっていることを強く感じたお話でした。また、古代~中世文学に出てくる「乳」はほとんどが母子の関係を表していたのが、近代文学では女性が自己を表現するものとして用いられ、その代表的なものは1901年に発表された与謝野晶子の「みだれ髪」であり、その歌がいかに情熱的であるかを教えていただきました。
小川先生からは乳房を「ちぶさ」と読むか、「にゅうぼう」と読むかによって、読み手がどういう立場でどういう見方をしているかが分かるということや先生の専門である現象学とは科学でもなく、文学でもなく、人間に関わる全ての現象を研究する学問であり、その現象学において「乳房」は、人が生まれて初めて出会うものであること。そして子供の成長にとって快さ・安心を与えるものであるというお話をいただきました。また、私たちは生まれて以来、口と手で世界を確認しているのであり、乳児とそれを育む母の乳房との間に、生まれてすぐから「あうん」のコミュニケーションがあるという、母子関係の本質を考えるお話をいただきました。

事務局長 岸本泰蔵
((株)ワコール人間科学研究所 研究総務課長)

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