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読 む乳がん体験者・医師インタビューなど配信中。New 11/21UP

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#インタビュー

自分の体験を通してAYA世代のがんの悩みに寄り添いたい。
御舩美絵さんに伺いました。

2018.11.21

御舩美絵さんは31歳で乳がんを告知されました。15歳~39歳のAYA世代(adolescent and young adult;思春期・若年成人)のがんです。美絵さんは若年性乳がん体験者となった経験から同じ病気の人と話したい、と強く思ったと言います。その願いを実現するため、若年性乳がん体験者を支援する患者支援団体「Pink Ring」で活動を行っています。今、若年性乳がんを経験した女性たちは、どんなサポートを必要としているのか...。私たちや社会は何ができるのか...を考えたいと思います。

※御舩さんが胸に付けているのは、乳がんサバイバーのための勲章型シンボル「Pink Rosette(ピンク ロゼット)」。がん体験はあなたの命の勲章という意味です。がんを経験したからこそ、もっと優しく、もっと強く、もっと幸せに生きられる...というメッセージが込められています。

インタビュー・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト・乳がんサバイバー)

御舩 美絵さん

みふねみえ/1978年生まれ、広島県出身。大学卒業後、出版社に勤務。2014年より東京を中心に活動する若年性乳がん患者支援団体「Pink Ring」代表。CNJ認定乳がん体験者コーディネーター。2010年、31歳のときに乳がんと診断され、手術、乳房再建、ホルモン治療を行う。現在は、「Pink Ring」を運営する傍ら、ライター経験と闘病体験を生かし、取材・執筆・講演など、がんの啓発活動にも取り組んでいる。
若年性乳がんサポートコミュニティ「Pink Ring」
http://www.pinkring.info/

【若年性乳がん・AYA世代のがん】についてはこちら

同じ病気になった同世代の人と話したい!情報が欲しい!

Q1

増田

美絵さんが若年性乳がん体験者を支援する患者支援団体「Pink Ring(ピンクリング)」に参加したきっかけとその理由を教えてくださいますか?

はい。私は31歳で乳がんになって、同じ病気になった同世代の人と話したいと強く思ったんです。でもその機会はなかなかありませんでした。若年性乳がんは、全乳がんの2~4%と言われていて、患者同士が出会える機会は少なく、ひとりで悩んでいました。

あるとき、病院でたまたま一緒になった高齢の女性が乳がんで。その人が、私にとって初めての「がん友」になりました。「私はこうだったのよ」「こんな検査をしたのよ」と病気のことを共有できたことで、とても救われました。そのとき、同じ病気の人と話をすることは、気持ちを楽にすることだと知りました。

それに、将来子どもをもつための妊孕性(にんようせい:妊娠、出産ができる力)を残す治療をするかどうかを悩んだときに、「ほかの人はどうしたのだろう?どんな選択をしたのだろう?」と思いました。

同世代の人の体験談や治療の選択などの情報を得たかったのですが、探してもなかなか見つけることができませんでした。

そんなある日、インターネットで「若年性乳がん」「乳がん 妊娠」などと検索していると、"Pink Ring"がヒットしたのです。

若年性乳がんの人たちが集まって、グループワークやパーティをしていたり、フラダンスのチームがあったり...。当時、広島で治療をしていた私は、「東京にはこんな素敵な若い乳がん患者さんの会があるんだ!」と衝撃を受けました。乳がんでネガティブなものしか見てこなかった私は、初めてキラキラした宝石箱を見つけたような気持ちになったのです。
「ぜひ参加してみたい!」

それからしばらくして、夫の転勤で東京に引っ越すことが決まり、私が東京で最初にしたことは、「Pink Ringに参加したいです」とメールを出すことでした。

若年性乳がんの体験者に必要なサポートとは?

Q2

増田

Pink Ringに参加してどうでしたか?Pink Ringはどのような支援をしているのですか?

Pink Ringのおしゃべり会(グループワーク)に参加して、同世代の若年性乳がんの女性たち7~8人と机を囲んで、思う存分泣きながらいろいろな話をしました。すごく救われました。悩んでいるのは、私ひとりじゃなかったんだと思いました。同じ若年性乳がんの仲間同士、気持ちを共有できました。それがPink Ringと私の最初の出会いです。

Pink Ringは、20~30代で乳がんを経験した患者さんをサポートする団体です。「正しい情報の発信」「同世代のコミュニティの提供」「若年性乳がんの研究支援・研究活動」の3本柱を中心に活動を行っています。

Pink Ringの始まりは、2010年。医療者が中心となって臨床研究を中心に、会の運営がされていたのですが、今は私たち若年性乳がん体験者が主体的に会の運営をしています。医療者は、メディカルアドバイザーとして、正しい医療情報の発信や、メンバーたちのニーズや意見を、医療の現場にフィードバックする橋渡し役をしてくださっています。

臨床研究のころは、「35歳までに乳がんになった人」という年齢制限がありました。でも今は、特に制限は設けていません。「20代、30代で乳がんになった人」という程度です。若年性乳がん体験者の悩みは、恋愛、結婚、妊娠、出産、子育て、就労など、AYA世代特有の問題がたくさんあります。そういう悩みを共有できる人が参加できる会です。

Pink Ringの前代表が退くことになって「代表にならない?」と声をかけてもらい、最初は戸惑い、迷いましたが、私はPink Ringに救われたし、これからもPink Ringは必要だと思ったので、お引き受けすることにしました。

私と同じように地方にいて、「東京に行ったときにPink Ringに参加したい!」と治療を頑張っている人が、全国にたくさんいると思います。

「いつかPink Ringに参加しよう」という思いは、希望や頑張る気持ちにつながるし、孤独に若年性乳がんと向き合っている人に、このPink Ringの輪を広げて届けたいと思ったんです。そうして引き継いだのが、2014年です。今では、東北支部、北海道支部もできました。

【Pink Ringの活動】

Pink Ringは、現在、若年性乳がん体験者7名と医療者3名、合計10名の運営委員とサポートスタッフで運営しています。

おもな活動内容は、年1回のPink Ringサミット(次回は2019年3月予定)、月1回のおしゃべり会(原則毎月第1週木曜日19:00~20:30)、おしゃべり会の全国キャラバン(2018年は広島、福岡、石川で開催)、AYAキャンサーサミット、フラチーム、キャンサーヨガ、研究活動などです。

詳しくは、若年性乳がんサポートコミュニティPink Ring http://www.pinkring.info/ をご覧ください。

若年性乳がんの体験者がリアルに欲しいと思っている情報とは

Q3

増田

今、若年性乳がんの方は増えていると言われています。乳がん全体では年間約7万6千人の方が乳がんに罹患している(2013年データ)と言われています。それを考えると、毎日約210人の方が乳がんの告知を受けていることになります。若年性乳がんの方がその約3%とすると、毎日約6人の方が新たに若年性乳がんの告知を受けていることになります*1。美絵さんの経験を通してみたときに、若年性乳がんの体験者の女性たちが今、必要としていることはなんでしょうか?*1 国立がん研究センターがん情報サービス がん登録・統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

私の経験でもそうですが、若年性乳がんについて患者さんたちがリアルに「欲しい」と思っている情報がすぐに手に取れる状況にないのが問題だと思っています。必要と思う人に、必要な情報をなんとか届けたい。

まず、全国の若年性乳がんの人たちに「ひとりじゃないよ」と伝えたい。私も同じ病気の同世代の仲間に出会って救われました。私だけじゃなく、不安そうな表情を浮かべ、ひとりで私たちのおしゃべり会に参加した女性が、会が終わるころには「来ることを悩んだけど、勇気を出して参加してよかった。いっぱい泣いたから明日から頑張れます。同世代と出会えてよかった」と晴れやかな顔で帰っていきます。
「仲間がいるからね」と伝えたいです。病気になったことはつらいことだけれど、がんになったからこそ出会えた素敵な人がたくさんいます。そのことを知ってほしい。

それから、妊娠、出産の情報のこと。抗がん剤治療を行うと一定の割合で、妊娠しにくい体質になってしまいます。将来の妊娠、出産を望む女性に対して、どうしたら妊孕性(にんようせい:妊娠、出産ができる力)を残すことができるか、ということも、きちんと情報提供しなければいけない。

私は2010年に乳がんと診断されましたが、当時インターネットで「乳がん 妊娠」で検索しても、正しい情報も、体験談もほとんど出てきませんでした。

今はガイドラインや手引書ができ、環境は変わりつつあります。正しい情報をもとに自分で判断することは、その後、生きていくうえで、強い力になります。同世代の人と集まるコミュニティも大事ですが、それだけでは若年性乳がんの患者さんは救われない。「正しい情報をもとに自分で判断して向き合う」というプロセスが大事と思っています。

そのため、Pink Ringでは、正しい情報発信、コミュニティの提供、将来の若年性乳がんの患者さんのためになる研究支援や研究活動をすることに力を入れています。

「がん」の先も人生は続いていくから

Q4

増田

2人に1人ががんになる時代。「自分もいつかがんになるかもしれない」と思って、ヘルスリテラシーを高めておく、あるいは正しい健康情報を入手する方法を知っておく、と力になりますね。がん治療後も自分らしく生きるために、社会全体で考える時代になっています。美絵さんは、ご自身の経験を通して、今どんなことが重要だと思っていますか?

私も乳がんになったときに、胸を失いたくない、子どももほしい、死にたくない、と思いました。

胸は失ってしまったけれど、乳房再建で取り戻すこともできましたし、治療を終えて、新しい命を授かっています。

当然ですが、誰もがある日突然「がんです」と告知されて患者になります。ですから、詳しい情報はわからない...。混乱しつつもまずは「死にたくない」と思って治療をします。でも多くの人は、妊娠、出産する力を残す妊孕性の治療のこと、妊娠中にがんが見つかっても治療と両立できる可能性があること、治療をしながら仕事を続けられることなどは知りません。

今、乳房再建の情報はメディアでもたくさん取りあげられるようになって、胸を失っても乳房再建という道があることを、なんとなく知っている人は多いのではないでしょうか?このように、がんの情報を病気になる前に少しでも知っておくことはとても重要。

がんと診断され、生と死に向き合うことになりますが、がんの先にある人生を思い描いて治療の選択をしていくことが、その後の人生を自分らしく生きることにつながります。そのためには、病気になる前に知識を得ておく、関心を持っておくことが大切だと思っています。

若年性乳がんについて知っていただき、「もしがんになっても子どもをもつ可能性を残すことができる」「妊娠中にがんが見つかっても治療と両立できるのかもしれない」「働きながら治療することも可能」などの情報をみんなが得られる社会になると、大切な人ががんになったときにアドバイスできるかもしれません。

若年性乳がんについてもっと知ってほしい

Q5

増田

最後に、美絵さんから、がんを経験していない読者に向けてもアドバイスをお願いいたします。

20代~40代は、仕事や子育てに忙しい年代だと思います。自分の体は後回しにしてしまいがちです。

でも、気になることがあったら、勇気を出して病院の門を叩いてください。私も「病院に行ってみよう」と思う一歩で病気を見つけることができました。自分の体を守れるのは自分だけです。自分を大事に生きることができなければ、大切な家族や友人を大切にはできないと思います。

それから、AYA世代(若い世代)にも、がんとともに生きている人がいることを知ってもらいたいです。ちょっとした優しさや思いやり、その連鎖が続いていくと、がんを経験した人が生きやすい社会になるのではと思います。

恥ずかしいとか、みじめだと思うことなく「私がんになったんです」って言えて、がんになっても自分らしく活躍できる社会になっていけばいいなと、がんを経験した者として思っています。

インタビューを終えて

若年性乳がんやそのほかのAYA世代のがんは、増えてきているとはいうものの、がん全体から言えば、数は少ないです。そのため、情報や研究が少なく、患者さん自身が正しい情報を手に入れたいと思っても、難しいのが現状です。また若年性乳がんだからこその悩みがあるのにもかかわらず、社会はそのことを理解していません。美絵さんが話していたように、妊娠、出産、結婚の問題はもちろん、恋愛、仕事、子育て、美容のことなど、体験者の目線にたつと必要な情報が見えてきます。体験者同士が出会って、仲間を作ることで解消できることも少なくありません。がんを経験した、していないにかかわらず、若年性乳がんやAYA世代のがんに関心をもって、みんなが理解することが、私たちひとりひとりが生きやすい社会づくりにつながるのだと、美絵さんのお話を聞いて実感しました。美絵さん、ありがとうございます!これからも頑張って!!!(増田美加/女性医療ジャーナリスト・乳がんサバイバー)