Interview「トレフル」 デザイナー対談

1977年、ワコールで初めてのブランドとして「トレフル」が誕生しました。
めざしたのは、機能的にもデザイン的にも洗練されたヨーロッパのランジェリー。これまで培ってきたノウハウを生かして高級な商品をワコールから発信していきたい、という想いが込められていました。

それから40年以上にわたって「トレフル」は先駆的な素材やデザインに挑戦し、多様化する価値観に応えながら、ランジェリーの可能性に挑戦し続けてきました。
それを可能にしてきたのは、妥協のないものづくり。常に新しい風を吹き込みながらも、その根底にはいつも変わらない、ものづくりに対する真摯な姿勢がありました。

今回は、これまで通算で18年間デザイナーを務めた川戸と現在デザイナーを務める堀田に、「トレフル」で受け継がれる伝統や大切にしている想いなどをインタビューしました。

「トレフル」のデザイナーに
なるということ

「トレフル」 デザイナー「トレフル」 デザイナー

─ まずは「トレフル」のデザイナーになられた時期を教えてください。

  • 川戸
  • 実は、私は入社後すぐに「トレフル」のデザイナーに配属されました。当時は2名体制で、チーフと新入社員である私。今思えば、先輩であるチーフはさぞ不安だったことだと思います(笑)。その他のブランドを経て、再度「トレフル」を担当しました。通算するとこれまで18年、「トレフル」のデザイナーを務めたことになります。
  • 堀田
  • 私は、2016年から「トレフル」のデザイナーになりました。2017年からチーフデザイナーとしてコレクションを制作しています。

─ 「トレフル」はワコールで初めて誕生したブランドで、かつ最高級ラインです。歴史のあるブランドを引き継ぎ、デザイナーになると決まったとき、どのように感じましたか?

  • 堀田
  • レースが大好きで、デザイナーとしてずっと憧れていたブランドだったので、担当することが決まったときはとてもうれしかったです。同時に、これまで扱ったことがないほど繊細な素材や、驚くほど細かいパターン・・・。本当にできるかな?と正直不安もありました。
アルプスに咲く草花をイメージしたアップリケは、カップを囲むように丁寧に縫い付けて。雄大な自然の中で凜と咲く様子を表現。
(2019春夏シーズンコレクション)
  • 川戸
  • 不安、私もそうでしたね・・・。きれいなレースやデザインに携われることに喜びは感じていましたが、当時はそれ以上に不安の方が大きかったです。最初に担当したときはレースの種類も知らない新入社員だったというのもありますが、やはり「トレフル」のデザインを担当するのは緊張しました。
  • 堀田
  • 歴史のあるブランドの重み、ですよね。私も日々感じています。
  • 川戸
  • そうですね。そして経験を積めば積むほど、「トレフル」のデザインを担うことの重大性・使命感をより強く感じるようになりました。ワコールの最高級ラインのランジェリーとして他には真似できないようなことをしていかなければいけない、と。だからこそ、これまで取り入れたことのない新しい素材やデザイン表現にも積極的に取り組んできました。
繊細なレースの柄に沿ったカットワークが見事。身生地との縫い目が目立たず、まるで1枚のレースのよう。
(2013春夏シーズンコレクション)
  • 堀田
  • 最高級ラインである「トレフル」だからこそ叶えられる美しさを常に追い求めています。扱いの難しい繊細な素材や、手間のかかる縫製や仕上げなど…、こだわればこだわるほど越えなければならない壁が次々と出てくるのですが、そこは情熱と根性!で、解決策を模索します。思い描いた美しさを実現するためには絶対に譲れないし、妥協したくないですね。

─ おふたりの言葉から「トレフル」というブランドを創り上げていく、確固たる信念を感じます。実際にデザインをするときに意識されていることや、大切にしているポリシーはありますか?

  • 川戸
  • まずは自分自身が完全に納得しているということです。商品が店頭に並ぶまでたくさんの人が関わる中で、さまざまな意見やアドバイスをいただきます。自分が納得しないままその意見に流された結果、お客様からの評価がよくなかった場合、後悔してしまいます。反対に皆さんからOKが出ていても、自分が少しでも納得いかないところがあれば気の済むまで修正を繰り返していました。
刺繍に厚みを出したレースは、縫製部分を金づちで細かくたたき、平らにしてから縫う、手の込んだ手法を採用。
(2011秋冬シーズンコレクション)
  • 堀田
  • 私は常に進化することと、ファンタジックであることです。自分もキュンとするものをつくること。そうでないとつまらないものになって、誰にも素敵だなと感じてもらえないのではないかと思います。また、積極的に挑戦するところと、伝統やフィッティングなどを大事にするところのバランスも大切にしています。あとは、コーディネイトのバランスと抜け感。これも重要なポイントです。
大胆な花柄は、サーモカット手法を用いて描いたもの。さらにレースアップテープを飾って華やか。
(2019春夏シーズンコレクション)

受け継がれる想い

カットワークのラインをレースの中央あたりに持ってくることで、
1枚のレースで透ける部分と身生地と重なる部分を出し、コントラストを効かせたデザイン。
(2009春夏シーズンコレクション)

─ 長い歴史のある「トレフル」ですから、多くの方がデザインに携わってこられたと思います。先輩デザイナーから心構えについてアドバイスはありましたか?

  • 堀田
  • 高いお金を出して買っていただく商品なのだから、細かな縫い目にまで気を使って丁寧に仕上げること。そして決して妥協はしないこと、です。新しいラインの開発に悩んでいたことがあったのですが、あなたが本当に欲しいと思うものをつくったらお客様も喜んで手にしてくださるよ。と声をかけてくれたこともありました。
  • 川戸
  • 考えが煮詰まっているときに、そういう言葉をかけてもらうと気持ちが前向きになりますよね。
  • 堀田
  • 背中を押してもらったことで、モヤモヤ悩んでいたことがすっきりして自信をもって商品を提案することができました。
  • 川戸
  • 「トレフル」はワコールの最高級ラインのブランドなので、常に高級感と付加価値を追求しなければならないことを、教えられました。また、失敗を恐れず、新たなことに挑戦することも。
バストから裾にかけてあしらったレースの柄に合わせたカットワーク。
同じカットワーク技術でもレースやあしらう位置によって表情はさまざまに広がる。
(2008秋冬シーズンコレクション)
  • 堀田
  • 新しい挑戦をするときはどうしても不安になるので、後押ししてもらえるのは心強いです。
  • 川戸
  • 初めてのことや、新しいことに挑戦するには、失敗やリスクがつきものですが、当時のチーフデザイナーからは、「失敗しても全て私が責任を取るから、失敗を恐れず、何でもやりたいことに挑戦したらいいよ」と言っていただきました。その言葉はとても頼もしくて、その後の自分のキャリアにおいても大きく影響したと心から感謝しています。

最高級ラインのブランドとして、
一歩先を進む覚悟

カップに合わせた丁寧な裁断と贅沢な生地使いにより実現した、一方向に美しく流れるプリーツのひだ。
アップリケは花びらにつまみを入れて立体感を演出。
(2011春夏シーズンコレクション)
  • 川戸
  • 先輩デザイナーの方たちが常にアドバイスをしてくださっていたように、「挑戦したことがない」ことにあえて挑んでいくというのは、「トレフル」のアイデンティティであり、ワコールの最高級ラインとしての使命だと思います。
  • 堀田
  • 私も、新しい素材や表現方法、最新のテクニックにチャレンジして新しい道を切り拓いていきたい、と常に思いながらデザインをしています。
  • 川戸
  • 今では当たり前にみられるデザインも、実は「トレフル」がワコールで最初に取り入れた、という例は結構あるんですよ。
Vol.2 へ続く
対談 Vol.2 は、2019年12月公開予定です。

Designerプロフィール

川戸敦子

川戸敦子(かわと・あつこ)

卸売事業本部 企画商品部 商品企画2課 課長。
「トレフル」チーフデザイナー、「ラヴィエゼ(現ラゼ)」「グラッピー」チーフデザイナー、
「デューブルベ」チーフデザイナーなど、主にブランドの商品企画を担当し、
2016年4月より現職。

堀田佳余

堀田佳余(ほった・かよ)

卸売事業本部 企画商品部 商品企画2課 チーフデザイナー。
ウイングブランド「レシアージュ」「Cutie」「Kirei」「Graces」デザイナーを経て
2016年に「トレフル」のデザイナーに着任。2017年より現職。