WACOAL STUDYHALL KYOTO

The Beauty of Society Story.01

「千恵の遺産ブレスレット」福田千恵子さん

感性、知性など内面の「美」に加え、社会のありようの「美」を目指す「ワコールスタディホール京都」。美しいかたち、美しい生き方、美しい関係を、みらいに向けて紡ぐ人を応援しています。今回は、CHIE-NO-WA代表の福田千恵子さんに話をお聞きしました。

「凛としてそこに"在る"こと」
-最近美しいと思ったコト・モノについてお聞かせください。
「「美しい」という字は 羊 に 大きい とありますが、私は「美しさ」というものに 小さい、大きいという大小はないと思っていて、たとえ風に吹かれても、雨に降られても、ただそこに在る・・ということに美しさを感じます。 この間、鴨川で"何もしない"時間をあえて作って1時間ほど、鴨川の水が流れる様や、犬の散歩の様子など眺めていました。鴨川のY字の少し上のあたりにいたんですが、段差があるところから水が流れ落ちているのを見て、水音を聞いて・・・そうしていると、何があろうと周囲に振り回されず変わらぬ姿で凛としているのがいいなと思いました。」

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福田千恵子さん
埼玉県出身。一般社団法人CHIE-NO-WA代表。「人と人、人とモノ、人と地との交流に寄り添う社会」を目指し活動する。
2020年、観光庁より発行された、国際基準に準ずる「日本版 持続可能な観光ガイドライン」にて先進事例として紹介される。
https://chienoisan.com

※本記事は京都のフリーマガジン『ハンケイ500m』にて連載中の「The Beauty of Society」より転載しています。 

Story.01「千恵の遺産ブレスレット」

観光の新常識は、相手に寄り添う気持ちを大切にした「ツーリストシップ」。
 京都で起こる、地域住民と旅行者のあいだでのトラブル。それを解決できないかと立ち上がったのが、今回紹介する、福田千恵子さんです。

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ワコールスタディホール京都を訪れた福田さん。「駅からのアクセスも便利ですね」。

 大学進学を機に京都に住み始めた福田さんは、観光公害、いわゆるオーバーツーリズムを知ります。訪日観光客の増加によって公共交通機関の渋滞やマナー違反。それに対する住民の心ない言葉と態度。観光地で、これらは大きな社会問題になっています。
「観光学の論文を読みましたが『インフラを改善して混雑を解消する』といった対策ばかり。私には、どうしても腑に落ちなかったんです」。

 福田さんは勉強を重ねるうち、「大きな問題を解決するのは、お互いを気遣う小さな気持ち」と気づき、活動を開始しました。大学3回生の秋、一般社団法人CHIE-NO-WAを設立。目指すのは「ツーリストショップ」を世界中で共有し、観光の新常識にすることです。
 「スポーツにはスポーツマンシップという言葉がある。同じように、その精神に則って何かをする言葉が、観光にもあっていい」と思い立った福田さんによる造語が、ツーリストシップ。お互いの文化を尊重し、敬意を払うという意味が込められています。

 まず最初に取り組んだのは、「千恵の遺産」プロジェクトです。シンボルは、京都の伝統工芸「京くみひも」を使ったブレスレット。住民や観光客が身に付けることで、「尊重し合い、寄り添いたい」という意思表示になるよう制作されました。

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ブレスレットは正絹の「京くみひも」を使用しています。

 コロナ禍で訪日観光客が激減した2020年は「恩返しプロジェクト」を立ち上げました。きっかけは、京都の観光に携わる男性の「これまで京都に来てくれた人たちにお礼をしたい」という言葉でした。それに感動した福田さんは、「この言葉を諸外国へ届けたい」と思い、市民から1200通ものお礼の言葉を歩いて集めました。「京都に来てくれてありがとう、落ち着いたらまた来てくださいね」。このメッセージは、京都の工芸品とともに世界95ヶ国と地域の在日大使館に贈られました。

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恩返しプロジェクトの贈り物をフランス総領事へ届けました。

「多くの大使館から喜びの声が届きました。北マケドニアの外交官は涙を流してくださり、胸が熱くなりました」。

 観光公害をなくすため、住民や観光施設を訪ねたり、大使館に連絡をしたり。福田さんが呼びかけるのは、決して大掛かりでなく、誰もがすぐできる小さなこと。原動力は「価値観の異なる人たち一人ひとりが寄り添う気持ちを持てるように」という思いです。

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大学3回生のころ、法人立ち上げ日に、キックオフイベントを開催。「大学生50余人に来ていただきました。「千恵の遺産」の原点です」。

ワコールスタディホール京都は、福田さんのように、美しい社会のかたちを創造する人を応援しています。

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「ワコールスタディホール京都」について詳しくはこちらから

「The Beauty of Society」京都のフリーマガジン『ハンケイ500m』にて連載中