WACOAL STUDYHALL KYOTO

書道家 中澤希水と「美」。

講師インタビュー

書の古典と向き合いながら、自由に作品を発表する書道家・中澤希水さん。
美しさを表現するための、書道への志をお聞きしました。

書道家 中澤希水と「美」。

― 中澤先生が書道を始めるきっかけは何だったんですか。

父も母も書道家だったので、書道は生活の一部でした。1歳から筆を持っているので、経歴は40年近くになりますね(笑)。 当たり前のように書道をやってきたからこそ、 興味をもってくれる人に書道の楽しさをいかに柔らかく伝えていくのかがわたしの使命だと思っています。

― 書道教室とワコールスタディホール京都の講座で教えている内容とは異なりますか。

書道教室は正しい姿勢や書き順、書くリズムを意識しながら文字を綺麗に書く実用的な書道です。 講座のほうは漢字一文字を自由に書く芸術やアートとしての書道。 自己表現と言えるかもしれません。 そのどちらにも書道の魅力がありますし、両方やることで書道の面白さをより実感していただけると考えています。

― 先生が作品を書くときは、実用と芸術どちらの割合が強いですか。

芸術としての書道ですね。文字を書くというよりはドローイングを描くような感覚に近いです。 第一印象で惹かれて、次に「なんて書いているのだろう」に着地できたらと思っているので、言葉にとらわれない、 絵画的な感覚で楽しんでみてもらいたいですね。

書道家 中澤希水と「美」。

― 作品に対する美の基準はどこにありますか。

全体のバランスと引いた線の質ですね。頭のなかに線の太さ、墨の色の濃さなどのビジョンがはっきりとみえているので、 それが基準になっています。表現したい方向性を明確にして、墨、すずり、筆、和紙それぞれ何を使うのか。今使っている主要な筆は20本くらいですが、1本1本にその筆にしか引けない線があるので、画材を選ぶ感覚に近いとも言えます。 そうやってわたしから生まれた1本の線が、見る人の琴線に触れることができたときは、やっぱり嬉しいですよね。

― 美を追求するために日頃から心がけていることはありますか。

美術館で絵を観る、街の歴史に触れる、丁寧にお茶を淹れて飲む、旬の食材を食べるなど、それらを日々の生活の中で 自然と続けていくことを心がけています。いかに気負うことなく、平常心で紙に向かう事が出来るのか。 京都で滞在している間は、毎日梨木神社へ湧水を汲みにいき、汲んだ水で墨をすって書いています。 地球から湧く水で墨をするといういう行為や、お水をいただくときに必ず参拝をする過程が、 自分の心に作用しています。作品を目にする人には見えない部分かもしれませんが、(作品に)直結しているんですよね。 どんどん便利になる世の中で、目に見えないことをどれだけ大切にできるのか。 作品は氷山の一角ですが、その下の部分に美しさを表現するための行為の積み重ねがあるんです。 そして、わたしにとっては京都でしかできない美しい行為が、確実にあります。

<ワコールスタディホール京都 1周年 冊子より>

中澤 希水
書道家
1978年1月生まれ。
静岡県浜松市出身。
書道教室 希水會(東京・恵比寿と京都・御所南)主宰。
東京・御所南で書道教室を開講しながら、個展などで定期定期に作品を発表している。