冬だから真夏のように過ごしたい。
11月後半からクリスマスにかけては、クルーズ・コレクションの季節です。クルーズウェアのもともとの意味は「冬のバカンスに船旅を楽しむセレブのためのリゾートウェア」。カジュアルなのに贅沢、デイリーなのに非日常といった中間的な浮遊感を味わうことができ、眺めているだけで旅行気分にひたれます。
ファッションは、個人的な憧れや妄想、さらには世の中へのアンチテーゼを自由に取り込むことのできる装置です。寒い季節には太陽が貴重であるように、いつだって季節を先取りし、周囲にたりない空気をまとってしまいたいもの。殺風景なテーブルに花を飾るなら、冬こそチャンス。ジビエ料理に重厚な赤ワインを合わせるのは定説ですが、時には華やかなシャンパンで通してみることで、新しい世界が開けると思うのです。
なんだか疲れたなあという時も、思わず釘付けになってしまう絵や風景や音楽に出会えればラッキー。それは、自分が本能的に欲している必須アイテムのはずだから。下着だって、肌に吸いつくような快感に一度気付いてしまえば離れることはむずかしいし、離れるべきではないでしょう。自分らしさを見失わないための強力なベースになるはずです。
"Time To Breath"と題された2012年春夏のHANROのラウンジウェアコレクションは、まさに眠っていた快感を呼び覚ます新鮮なイメージがあふれています。ドレープの美しいポンチョは水着の上にかぶるのにぴったりだし、パイルウェアはスパで活用したくなる。ブラッドオレンジのワンピースはテラスで楽しむアペリティフに似合いそう......。
ラウンジウェアという名の社交服。
HANROは1884 年、スイスの小さな町リースタルで生まれた創業127年のアンダーウェアブランドです。選りすぐりの天然素材を使用した至福の肌ざわりは、世界中で多くのファンを獲得。社名は創業者の頭文字に由来し、誠実なものづくりの哲学により、ユニークかつコンテンポラリーなブランドであり続けています。
ブランドの要であるベストセラーのキャミソールは、極上の綿を使い、筒状にぐるぐると編み上げられカットされる独自の製法「サーキュラー・ニッティング・テクノロジー」にこだわった逸品。サイドに縫い目がないため、ボディラインに自然にフィットする心地よさが特長です。紙のように薄くて軽い「ペーパータッチ」シリーズは、ワコールのweb storeでもフィーチャーされており、人気のほどがうかがわれます。
南仏のサントロペで撮影された今回のラウンジウェアコレクションは、部屋着でも外出着でもなく、そのはざまに位置する服。プライベート(私)とパブリック(公)の間のソーシャル(社交)な要素が加わったリゾートスタイルなんですね。公私を二分しがちな日本人は、曖昧な領域である社交が苦手といわれますが、これをうまく取り入れることで世界が広がりそう。男性にもぜひおすすめしたいコレクションです。
ヨーロッパのラウンジウェアは一朝一夕に生まれたわけではなく、簡単にはマネできない哲学が息づいています。テロワール(土壌と気候)がワインを特長づけるように、光や水になじみ、空気感を引き立てる色と素材。日本はアメカジ派の男性が多いけれど、HANROのメンズラインをさりげなく着こなせるようになれば、世界でのモテ具合も格段にアップすると思うのですが。
※画像は掲載期終了のため削除しています。