「世の女性を美しく」という思いで、
一人ひとりのこころとからだに寄り添ったものづくりをおこなっているワコール。
それは科学の目線からも支えられていることを知っていますか?
女性のからだを「美」「快適」「健康」の視点で研究しているのが、
「ワコール人間科学研究開発センター」です。
研究って具体的に何をしているの?どんなことをしているの?
ワコール広報・宣伝部の広報担当1年目の社員が勉強に行ってきました!
※2022年4月「人間科学研究所」から
「人間科学研究開発センター」に改称しました。
ワコール独自の研究開発をおこなう「人間科学研究開発センター」。
そのはじまりは創業者の塚本幸一と、初代研究所長の玉川長一郎の激論がきっかけでした。
釣り仲間でもあったふたりは、琵琶湖にすむ魚をうまく釣るにはどうしたらいいかを議論します。
「直観と経験が大切だ!」という塚本。
「魚の習性を知りデータを集めることが大切だ!」という玉川。
議論のなかでふたりは「どちらも必要なのでは?」という答えに行きつきます。
そしてそれは下着づくりにも同じことだと。
直感や経験を科学的なデータとして記録し、理論立てて得られた知識を組織に蓄積することが、
継続してよりよい製品をつくり続けることに繋がる……。
そうして1964年、製品研究部、現在の人間科学研究開発センターは誕生し、
人間工学に基づいた日本人女性の体型計測と研究を本格的にスタートさせました。
独自のデータベースを蓄積し、蓄えた理論を研究開発センター内の財産とすることで
熟練者が辞めても組織のレベルを維持し続けることができます。
当時も今も、女性の「からだ」をさまざまな視点から計測し、下着づくりに生かしています。
同じ人をずっと研究し続ける
「時系列データ」
バストが膨らみはじめ、初経を迎え、少女からやがて女性のからだへ。さらに出産を経たり、年齢を重ねたりと女性のからだは常に変化していきます。その変化をとらえるため、ワコールにはひとりの女性のからだの変化を30年以上にわたって記録し続けた「時系列データ」があります。この「時系列データ」は、女性の人生に寄り添い、あらゆる年代・サイズの女性を美しく、ここちよくサポートするための非常に貴重な資料です。
時代や年代ごとに変化するプロポーションとボディの意識を分析して、美しさを具体的なかたちや数値で表します。ワコールが考える女性美を、誰もが簡単に理解できるように研究を続けています。
ワコールの製品は見た目の美しさだけではなく、ボディラインのサポートや疲れにくくするなどの機能性も充実しています。また、開発・リニューアルした新製品が、設定した通りのパフォーマンス(機能)を発揮しているかどうかを正確に測定する計測・評価方法の開発をおこなっています。
ユーザーが求める製品をつくるため、魅力的なコンセプトの追求と、ヒントとなる人体情報を収集・蓄積しています。60年近く、女性の身体を記録し続けてきたからこそ見えてくるものがあります。
見学の様子を動画でご紹介
研究開発センターが設立された1964年からずっと、ワコールは女性のからだを計測し続けてきました。
美しい姿勢やボディバランスをめざすためには、からだのかたちを知り尽くしておくことが大切です。
数値的には同じでも、
個人で違うかたちを細部まで記録します。
※見学では服を着ていますが、実際に計測する際にはヌードや下着を着用しておこないます。
「非接触三次元計測装置」は、
レーザーを用いてからだのアウトラインを約2mm間隔という細かなピッチで計測。
数値的には同じでも、個人で違うかたちの細部まで記録します。
※見学では服を着ていますが、
実際に計測する際にはヌードや下着を着用しておこないます。
からだのアウトラインをとらえる「非接触三次元計測装置」に加え、
「ベクトラ」という3D画像解析装置なども活用しています。
これは美容医療などの場で活用される機器で、
皮膚のキメが見えるほどの高画質な画像を撮影できます。
「かたちの研究」において、
大切にしているのは研究員の手による人体計測。
テクノロジーが発達した今でも、
人の五感を使った計測の積み重ねがすべての基本となっています。
研究員の手でおこなう「マルチン式計測法」
これは世界共通の人体計測法で、
バストの大きさや地面からの距離、バストトップの距離、胴の幅など、
158か所もの、さまざまなからだの部位を計測します。
これに加えオリジナルの計測装置によるワコール独自の詳細計測を加えています。
1964年から現在(2021年4月)まで記録してきたデータは延べ4万5000人以上。
このデータの蓄積が、ワコール製品のクオリティの土台となっているのです。
いくらからだにフィットした下着でも、
それが動いた時にズレてしまっては機能を十分に発揮できません。
からだのさまざまな動きにフィットした下着づくりを実現するため、ワコールでは「光学式三次元動作解析システム」を導入しています。
これは「モーションキャプチャ」として映画撮影などに活かされている技術で、骨のポイントを基準にからだに反射マーカーを20〜30か所ほど取り付け、360度の全方位からからだの動きをとらえます。
スポーツシーンにおいて人気のコンディショニングウェア「CW-X」などは、 より運動効果・サポート効果を向上させるため、 運動の専門家の指導のもと計測し、 解析・分析をおこなうなどしています。
どれだけデザインや機能がすぐれていても、
それが実際にここちよいかどうか。
製品を実際にモニターの方に着用してもらい、
温度と湿度をコントロールできる「環境実験室」で
暑さや寒さにどれだけ対応できているか、
発汗状態や体温はどう変化するのかなど、
四季折々の日本の気候を想定した環境で着ごこちをチェックします。
たとえば、夏の環境を再現し、
人が実際に着用した状態を確認することで、
暑さや汗による不快感を軽減するポイントを見つけ、
製品の開発に役立てています。
他にもこんな研究をしています!
身体生理の研究
人は動く時、筋肉を伸び縮みさせます。そして筋肉は動くと電気を発生するという特徴があります。貼りつけた電極から、からだを動かして起こる電気信号をキャッチする筋電図計測。運動した時にからだがどう疲れるか、どんな負担が筋肉にかかるかを測定し数値化します。
製品の評価研究
下着には着圧機能などをもった製品があります。その製品がきちんと定めた部位に圧がかかってサポートできているかを測る装置もあります。女性の下半身のかたちをした独自の圧バランス適合性評価装置(通称:ビバリちゃん)。全体で16か所に圧力を測るためのポイントが設けられています。
スパイラルエイジング
ボディラインが年齢とともにどう変化するかは多くの女性が抱える疑問です。ひとりの女性のからだの変化を記録し続ける「時系列データ」、30年にわたる加齢の変化を200人分集めるという、世界でもワコールだけが集めた貴重なデータがエイジングの実態をとらえました。
それは、女性のエイジングには3度のスパイラルポイントがあるということ。16歳~18歳で成長が止まり大人のからだつきに変化、24歳~26歳で女性としてのからだが完成し、それにあわせたサイズへの変化、そして37歳~39歳で急激な体重増加が起こることによる体型の変化。この3つのターニングポイントを契機として、前後でボディラインが大きく変わっていくという事実です。
バストのエイジング
重力によるバストの動きと皮膚
加齢以外にバストに大きな影響を与えるのが重力。バストの肌のキメは重力方向に流れていきます。つまり重力によってダメージが蓄積されていくのではないだろうか。そう考えたワコールは、なんと実際に飛行機での無重力実験を敢行。そこで、無重力状態のバストは半球状のきれいなまる胸をしていることがわかりました。無重力状態こそが、重力の影響を受けずに本来のきれいなバストを保てるのです。
今まで「自分に合ったブラジャーを着ける」ことを提案してきたワコールですが、それに加えて「生活シーンによるダメージに対応できるブラジャーを着ける」ことも重要であると、今回の研究を経て判明。新製品の開発に大きく影響しました。
研究開発センターが設立された1964年といえば、まだ終戦から20年経っていない時代です。その当時に「データや経験を蓄積すること」の重要性に気づいていたというのは、社員の私も驚きました。そしてまさか、あんなに緻密な計測を何十年も続けてきたなんて……。
女性のからだに真摯な目を向け、寄り添うだけでなく、コツコツと経験と知恵を積み重ねてきたからこそ、今日のワコールがあるのですね。美しいってなんだろう、どうやったら女性のからだを美しくできるだろう。そんな当たり前の疑問や願いを胸に、科学という視点からワコールのものづくりやサービスを支えているのが人間科学研究開発センターなのでした。