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産婦人科医・高尾美穂

「生理不順だけど、大丈夫かな?」産婦人科医・高尾美穂先生に聞きました

生理不順といっても、周期や期間はさまざまです。10代の排卵が不安定なときと、更年期になり閉経が間近になると月経周期のバラツキが見られるようになりますが、それ以外の年代の生理不順は注意が必要かもしれません。産婦人科医・高尾美穂先生に解説をお願いします。

生理不順にもいろいろある

月経が前の月より遅れたり、すぐ始まったりと月経周期がばらつくと、ホルモンバランスの乱れやなにか病気が潜んでいるのでは?と心配になるかもしれません。しかし、医学的に月経周期は、月経開始から次の月経前日までの日数が25日~38日であれば正常とされています。数日のずれを気にしすぎなくても大丈夫です。どんな状態が月経不順なのか、そしてどんな種類があるのか見てみましょう。

無月経

妊娠中や授乳期ではなく3か月以上、月経がない状態を「無月経」と呼びます。原因としてはハードな運動や無理なダイエット、過労、痩せすぎなどが考えられます。無月経のまま長期間放っておくと、エストロゲンが分泌されないので、閉経以降のような骨粗しょう症の心配やコレストロール値が上がるといった症状が出てきます。また、子宮や卵巣などが縮小してしまい、治療に時間がかかる場合があります。無月経は放置しないようにしましょう。

月経周期の乱れ

24日以内の周期で月経がくることを「頻発月経」、38日以上の周期の場合は「稀発月経」といいます。排卵後、妊娠成立しなかった場合に、排卵から14日後に月経が来るため、排卵が安定しないと月経周期も不安定となります。また、月経周期が長くなる原因のひとつに「多のう胞性卵巣症候群」という排卵障害があります。卵巣に卵胞がたくさんあるにもかかわらず、うまく排卵できないために生理不順になるというもの。不正出血の原因にもなります。また、男性ホルモン値が高いことも特徴のひとつであり、多毛やニキビ、肥満の傾向が出ます。「卵巣のう腫」という良性腫瘍(しゅよう)ができて生理不順や不正出血が起こる場合もあります。多くは超音波検査で発見されます。良性の場合は問題ありませんが、のちに悪性に変わることもあります。大きいものは検査します。

月経期間の乱れ

月経の期間が8日以上ある「過長月経」、2日程度ですぐ終わってしまう「過短月経」があります。

生理不順だと妊娠しにくいって本当?

生理不順=不妊というわけではありません。若いうちは排卵が不安定なためにそもそも妊娠しにくいですし、生理不順だと排卵日の予測がつかなくて妊娠できるチャンスが減ることになります。無月経で排卵が起こっていない場合は、排卵していないために妊娠しません。

また、肥満も痩せすぎも不妊の原因とされています。まずは痩せすぎ・太りすぎにならないよう適正体重の維持を心掛けましょう。アルコールは肥満の原因にもなりやすいので、気を付けて付き合って。

生理不順は低用量ピルで改善もできる

生理不順は未成熟な思春期と女性ホルモンのバランスが乱れる更年期に起こりやすいものです。一方、成熟した20代~30代で生理不順である場合は、子宮や排卵期の異常を疑って婦人科を受診してください。基礎体温の記録は、婦人科で診断の根拠になります。いまはスマートウォッチで基礎体温が計れるものもあるので、記録して診断のときに見せてください。

生理不順に悩む人には低用量ピルがおすすめです。低用量ピルは、エストロゲンとプレゲスチン(人工的なプロゲステロン)を配合したお薬です。このお薬で排卵を止め、子宮内膜が厚くなるのを防ぐことができるので、月経困難や過多月経などの治療に使われています。月経も予定通り起こるので、予定が立てやすくなります。「次の生理がいつくるのかわからない」と心配な人にとってはストレスが軽減されます。

閉経が近くなったときの生理不順

閉経までには、エストロゲンの分泌量は、増えたり減ったりしながら、だんだん減っていき、やがてストップします。その過程で月経周期や経血量がばらついて、生理不順の状態になります。閉経の時期は人によって違いますが、早い人は40歳過ぎから、月経周期が短くなったと思ったら、その後2~3か月ないという状態になり、最後の月経から1年以上が経過すれば閉経したと判断します。閉経前後の時期は、さまざまな更年期の不調が起こりうることを知っておきましょう。ただ、40代は仕事や子育てに忙しい年代です。過労やストレスで月経が止まる場合もあるので、もう閉経かと思っていたら違ったという場合もあります。閉経したのかどうか?が気になる場合は、婦人科に相談してみましょう。

(産婦人科医・高尾美穂)

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参考:高尾美穂著『女性ホルモンにいいこと大全 オトナ女子をラクにする 心とからだの本』 (扶桑社BOOKS)
高尾美穂著『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)