美しさをめぐる進化論

■動物行動学的に“美しさ”を考えるきっかけとなった本

すでに廃版になっているようだが、当研究所でも昔にご指導いただいた事がある蔵 琢也さんの「美しさをめぐる進化論 : 容貌の社会生物学」という本があります。この本は動物行動学的な背景から書かれていると思う。動物行動学(Ethology)とは、利他的行動や求愛行動などのように、なぜこの動物はこんな行動をするのか?その行動をとることでどんな利益を得られるのか?といった事を解きあかす研究。特に面白いと思ったのは、人間のように倫理観や社会的通念のない動物の世界を調べる事で、ある個体の行動特徴や形態特徴が、別の個体に“生得的な反応”を引き起こすという考え方です。

■生物としての女性の3つの魅力

手元に本がないので間違っている可能性もありますが、本を読んだ後に「そうか、”女性の外見から受ける印象”には、以下の3つの要素があり、その3つの信号に対して見る側に生得的な受容器があるという事かな・・・」と思ったのを覚えています。

〇女性信号  バストの大きさウエストのくびれなど、見る人に女性性(性本能)を喚起させる信号
〇保護信号  子供特徴で、頭身や目の大きさなど、見る人に可愛らしさ(保護本能)を想起させる信号
〇健康信号  左右差、歪などがなく、健康な遺伝子を持っている(健全さ=非病気)を想起させる信号

■「健康だから魅力的で美しい」

三番目の「健康信号」というのは、まさに今の時代のキーワードかと思います。「無理してセクシーにしたり、可愛らしくするのではなく、健全・健康である事が美しい」という事かと思います。つまり、左右差がなくシンメトリーな様子や姿勢の歪がない様子などが今の時代の「美の基準」かなと思っています。

人間科学研究所 所長