1993年入社
2002年に女性の睡眠時のすがたについていろいろと調査をしたことがきっかけです。どんな服装で、どんな状態で寝ているのかなどいろいろ調べたんですが、なんと調査した人たちのうち約3割の人が、寝る時もブラを着けているということがわかりました。睡眠時にバストのかたちが崩れそうな不安感からというのが着用理由なんですが、立っている姿勢での着用を前提にした昼用のブラは寝ている時のバストに対しては適切にサポートできません。なにより窮屈ですしね……。そういう調査結果をもとに「寝る時用のブラをつくろう」という取り組みがはじまりました。
寝ている時のバストを適正な位置にサポートしつつ、眠りを妨げるような締め付け感がない、構造はどうあるべきか?
試作と着用テストを重ねました。寝ている時は仰向けだったり横向きだったりと、かかる重力の方向が昼間の立っている時とは異なるので、睡眠時のバストの状態の観察がとても大切でした。
そもそも当初、アドバイスをうかがった睡眠研究の専門家からは「寝ている時に圧迫するものをつけると睡眠の質が低下するとの研究結果がある」と開発自体に難色を示されてしまって(笑)。ですので、寝た時のバストの変形をきちんと抑えつつ、締め付け感のないブラジャーをつくるという、矛盾した要素をうまく両立させたものをつくらなければいけませんでした。基本構造を決めるだけでも1年、微調整に1年がかかりました。普通のブラの3〜4倍ほど手間と時間がかかっています。
リリースしたばかりの時はまだ「寝る時用のブラ」というものがなく、あまり売れなかったんですが、買っていただいた方がどんどんリピート・口コミで広めてくれました。最初は縫い目がカップ表面に見えて、いかにも機能性下着というビジュアルだったんですが、リニューアルを重ねてカップを二重構造にするなど見た目のアップデートもこだわっています。コロナ禍で「おうち時間」が広まったこともあるので、単に睡眠時用の下着としてだけではなく、家でリラックスして過ごす時の下着としても、さらに愛される商品になっていければいいなと思います。
1994年入社
私は1994年入社なので、勤続年数27年ですね。今までは基礎研究や製品開発など、研究開発センター内のさまざまな業務に携わってきましたが、現在は、1964年の研究開発センター設立以来、ワコールが蓄積し続けている人体データベースに関する業務を担当しています。
計測はいろんなテーマや目的があっておこなわれます。人を決めて一人ひとりの女性のからだの変化を追い続ける時系列計測もあれば、幅広い属性の方を公募して一度に500名レベルの大規模計測をおこなったり、ターゲットを絞って少人数で実施したりすることもあります。数多くの方々のご協力によってデータベースが成り立っているので、私たちも真摯な姿勢で計測させていただくように心がけています。
モニターさんとの信頼関係の構築ですね。時系列計測をお願いしているモニターさんはとくに。私たちがこの先何十年にもわたって計測をお願いしたいと思っていても、進学・就職・結婚・子育て……と人生のなかでライフステージが何度も変わるなか、ずっとモニターをしていただけるのは、よほどの繋がりがない限り難しいんです。
過去に時間が戻せない以上、「いま」の計測が非常に大切。データベースといえども、その数値のひとつひとつはモニターさんの「いま」を、時間や手間をかけて私たちに提供してくれた証です。その真心には真心をもって向き合っていかなければなりません。人と人とのおつきあいがもっとも大切。それを常に意識しています。
「時系列データ」の計測は69歳までお願いしているんですが、現在60代のモニターさんの大半は1950年代生まれ。計測期間は終了していますが、データ自体は1940年代生まれの方からあります。加齢による体型変化の法則を見出した「スパイラルエイジング」の発見や、エイジング世代の下着の開発は、この大先輩方の協力あってのことなんです。
現在モニターとしてご協力いただいている20代の方なんですが、その方は生まれる前からモニターさんなんです。というのも、その方のお母様もモニターで、妊娠中のからだを計測させていただいたことがあるから。その後、生まれてからもモニターさんとして、小さい頃からデータを取らせていただいているんです。
親子揃って計測に協力してくださったり、私が入社当時にはじめて計測に来られた方がいまでもモニターをしてくださったりと、本当にこの仕事は人に感謝することが多いですよ。
1988年入社
大学ではヒューマンインターフェースの研究をしていたんですが、私が教わっていた先生とワコールの研究員の方とが仲が良くて、「ワコール人間科学研究開発センター(現:人間科学研究開発センター)」を教えていただいたことがきっかけです。私の場合、実家が日用雑貨を扱うお店をやっていまして、そこで女性用下着も販売していたのでまったく馴染みがないというわけではありませんでした。
しかし、女性用下着は知っていても、下着の勉強などやったことはありません。業務のなかで下着とは何か、女性の美しさとはなにかを深く知っていきました。
出身の学部・学科は多岐に渡ります。家政学部の被服学科、電気工学、応用化学、情報処理、最近は健康生理学やスポーツ科学などの出身の人もいます。みなさん大学で学んだ分野をいかしていますが、私はあまり「どの学部で何を学んだか」は重要ではないと考えています。
どうやって研究員になれるかというと、「人に興味をもてるかどうか」、これに尽きると思います。人間科学研究開発センターは人のからだを研究するところ。人のからだに実際に触れなければいけませんし、コミュニケーションも生じてきます。単に商品が好きとか、素材が好きとかではこの仕事は務まりません。計測させていただく際も単に数字を測るだけではなくモニターさんは今どんな気持ちだろうかとか、快適に協力してもらえているのかなど、人そのものを観察することが大切です。私も長く研究開発センターで働いてきましたが、モニターさんに教え込まれて経験や知識を集めてきたといってもいいんじゃないでしょうか。
過去の下着は「おしゃれであること」と「健康を生み出すこと」は相反するという考え方でした。しかし、美しさと健康は両立すると私は思います。若い時はもちろん、歳を重ねても女性のすべてが健やかで美しくあるために、何をすればいいのかを考えるのが人間科学研究開発センターの仕事です。今後もより、美しさと健康の両方を得られる商品を、研究開発センターを中心につくっていきたいですね。難しい課題に直面することばかりですが、仕事していて楽しいですよ!
ちなみに研究部門というと暗いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、ワコールの人間科学研究開発センターは女性も多く、日常会話が絶えない明るい職場です!
飛行機での無重力実験で証明された「重力の影響を受けないバストはきれいなまる胸になる」という、状態を目指してつくられたブラ。カップ肌側にある「バストケアシート」がバストに密着して、重力による皮膚の伸びを抑えます。立つ、座る、動くなどさまざまな姿勢のバストを重力から守ります。
※「バストケア」とは、からだのサイズを測って自分に合うブラをつけて、バストを重力から守ることです。
睡眠中、重力に引っ張られるバストを支えるためのブラ。仰向け・横向けなどさまざまな寝姿勢により、バストにかかる重力の方向は一定ではありません。バストの横流れや上流れをやさしくサポートしながら防ぎ、適正な位置に安定させる設計なので、就寝中もバストを重力から守ることができます。
「テーピング原理の応用」と、女性用下着の「ガードルの技術」を組み合わせて生まれたコンディショニングウェアブランド。テーピング原理に加えてワコールならではの技術や素材開発などが盛り込まれ、多くのスポーツ愛好家に愛されています。
ワコール独自の3Dボディスキャナーを用いて、約5秒でバストサイズを正確に計測し、AIが最適なブラジャーを提案するという新しい接客サービス。計測したデータをもとに、AIと会話しながら自分に合った下着を選ぶことができます。
左右のバストの大きさの違いやバストの輪郭などを丁寧に計測し、約3,000通りのサイズの中から、自分のからだにジャストフィットする「わたしだけ」のブラジャーをつくることができるサービス。全国34(2021年4月現在)の店舗で実施しています。
ワコール人間科学研究開発センターの
みなさん、ありがとうございました!
お出かけでボディラインを整えたい時、家でリラックスしている時、運動している時……さまざまな女性のライフスタイルに合わせた商品をワコールではつくってきましたが、「どうしてこんな形をしているの?」というディテールの理由まではなかなか自分でも考えられませんでした。しかし、人間科学研究開発センターの人々の努力と熱心な研究によって得られた「女性のからだの理解」がワコールの製品やサービスをつくっていると知ることができました!