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    ■編集部セレクト 

    ものづくりの現場から〜パジャマができるまで〜vol.10 縫製工場(後編)

縫製の品質のみならず最終工程を担う責任を背負って

前編では裁断や前加工など、縫製にいたるまでの準備段階を紹介してきました。今回はいよいよ最終回です。ここで再び「睡眠科学」のパジャマの追跡に戻り、多種多様なミシンと多くの担当者、工程を支えるシステムメカニックや不良・欠点を減らす取り組みまで、縫製工程におけるさまざまな工夫や縫製技術に光を当てていきます。

マシン・担当者・システムが巧みに連動している縫製工程

縫製工程は2階のワンフロアで、約650台のミシンを駆使して、約120人の人員によって行われています。人員よりミシンの台数の方が多いので、一人で複数の工程ができる多能工が推奨され、定期的な研修やトレーニングも行われています。縫製といってもさまざまな工程に分かれており、それぞれが担当する内容によって使用するミシンも異なります。12班に分かれ、縫製が1班から10班と、試作品や販売サンプル商品を作るマルチ対応班、縫製加工班(ミシンやアイロンで前加工するチーム)から編成されています。ひとつの班の人員は平均で11人編成で、仕事量や素材などによって編成は細やかに変えることはあるものの、環境やモチベーションなども考慮し、なるべく固定した編成ができるように工夫されています。

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(写真:工場2階の様子)

フロアには30分に一度チャイムが鳴り、30分ごとに設定されている目標生産数をクリアしたかどうかの区切りを知らせます。例えば一日の目標枚数が210枚の場合、30分ごとの生産目標は14枚となるので、14枚以上生産できた場合にはボードに緑のマークを、13枚未満の場合は赤のマークを貼っていきます。始業は8時30分で各班とも朝のミーティングをするので、目標のスタートは8時45分からとなっており、30分ごとにボードで確認していきます。これは同時に班長など管理者へのシグナルにもなっています。班長はボードを見ながら赤マークが出た場合には、即座に工程の確認や改善策を考えています。

縫製の効率化を追究したオリジナルシステムの構築

縫製の中でもパジャマのズボンの縫製を担当している縫製9班は、ハンガーシステムと呼ばれている独自のシステムを採用しています。このシステムは20年ほど前に考案されたもので、作業台の脇に一本のレールが走っていて、そのレールにハンガーを使って生地を吊るします。ハンガーにスプリングが仕込んであることで伸び縮みするため、担当者は生地が吊るされたまま作業台の方へ生地を引っ張り、縫い付けが終わると前へ送るという流れを繰り返していきます。メリットは、まず大きな身頃のものでも縫製箇所が見つけやすく、縫製しやすいという点があります。また吊るすことによって工程が滞ってストップしている箇所が視覚化されることから、サポートに入るべき場所や必要な技能を持った人員の確保など、班長が指示を出しやすいことも挙げられます。一本のレールになっているので、後ろの製品が前の製品を追い越すことがなく、たとえばMサイズとSサイズの混入というようなミスも防ぐことができます。青いテープと発泡スチロールでつくられたリングは、ハンガーを前へ送る際にハンガー同士がぶつからないように緩衝用としてつけられていて、細部にこだわった縫製担当者を配慮したシステムになっていると評判です。

それぞれの工程を細分化することで、スピードと正確さを両立

パジャマの上着の縫製を担当する縫製2班は、11人がUの字を描いて並び、時計と反対周りで製品を渡していきます。赤いリボンは縫製2班の班長で、ピンクの色は副班長の目印です。基本的にはこの二人で1つの班を管理しています。まずは前編の最後に紹介した、アイロンでの前加工で、織り込んでいたポケットやアップリケなどをつける工程です。ここではミシンに生地をセットし、蓋をしてボタンを押すと自動で縫製する電子プログラムサイクルミシンを使用しています。パソコンのソフトによって、縫い方はすでにプログラムされているので、そのプログラムに合わせて型をカットして、そこに指示書通り生地を合わせます。生地の大きさや縫い方など製品指示に応じて、型や縫い目を変えることができます。このミシンはこの工場で独自に改造し、他メーカーの機器などを組み合わせて、カスタマイズしたものを使っています。

次の工程では袖下と呼ばれている、パジャマの袖の脇の下を縫い合わせます。1度に5袖分をまとめて縫製します。ここではオーバーロックミシンというタイプのミシンで縫い合わせます。縫いしろが肌に当たってしまい着ごこちに影響が出るため、睡眠科学のパジャマは肌あたりをよくするために、縫いしろを倒して平らにする潰し縫いと呼ばれる工程を追加しています。

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(写真:袖の脇の下を縫い合わせている様子)

続いては、U字型になっている後ろ身頃の切り替え部分を、オーバーロックミシンで縫い合わせる工程です。先ほどの袖下の縫製と同じように、縫いしろを倒していく潰し縫いを行います。袖下は形状が筒状で縦縫いであるのに対し、この後ろ身頃の切り替え部分は、形状が平面になっています。そのため袖下で使ったミシンとは異なるタイプのミシンを使って、縫製を行なっています。

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(写真:後ろ身頃)

後ろ身頃が完成したので、次は前身頃を縫い合わせる工程へと入ります。まずは前身頃の左右の脇を縫い合わせます。ここでもオーバーロックミシンで縫い合わされ、さらに縫いしろを平らにする潰し縫いを行います。ここでは表示付けの際に、取扱い絵表示ネームを一枚ずつ取りやすいように、両面テープを使うマシンをカスタマイズして、独自の工夫をしています。

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(写真:縫い合わせる前の左右の前身頃)

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(写真:左右の前身頃を縫っている様子)

次の工程は見返しの縫製です。見返しというのはパジャマの前身頃の端の内側部分、ボタンやボタン穴がある部分になります。その見返しと襟とを縫い合わせていく工程です。

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(写真:見返しの縫製の様子)

最初に袖が完成し、そのあと袖のない状態の前身頃と後ろ身頃が揃いました。次は前身頃と後ろ身頃とをつなぐために、袖を輪縫いという方法で丸く縫い合わせていく工程です。袖山(袖の上部)と両前身頃の肩の部分に、それぞれ合いノッチと呼ばれる目印がつけられているので、それを合わせ、位置を決めて縫い合わせていきます。

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(写真:輪縫いの様子)

次の脇縫いも袖付けも、オーバーロックミシンで縫製します。また、この睡眠科学の商品では、すべての工程で縫いしろを平らにする潰し縫いが徹底して行なわれています。

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(写真:脇縫いの様子)

次はアイロン工程です。縫ったばかりの時はまだ襟周りや前端がシャキッとしていないので、アイロンを当てます。

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(写真:アイロン当ての様子)

今度は逆に襟のつけ根など折り返しになっている箇所を押さえて、平らになじませていく工程です。この工程は難易度が高いため、熟練した技が必要となります。襟、見返しなどの縫う箇所や、生地の分厚さや縫い方、段差の大きさなどによって、抑え金ひとつとっても寸法や縫い目幅、先端に取り付ける付属品であるアタッチメントの形状なども変わります。そのためミシンのセッティングや、使用するミシンもその都度変えて、縫っていく必要があります。

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(写真:襟の付け根を平らに押さえ縫っている様子)

次は裾や襟周りなどの生地の端に、ステッチかけていきます。ステッチのかけ方は、生地の端を中に織り込んで三つ折りラッパと呼ばれる専用のアタッチメントに折り込み部分を挟み込むことで、一定幅に縫えます。

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(写真:三つ折りに縫っている様子)

続いてカン止めと呼ばれる工程になります。縫い終わりの部分は弱くなってしまい、ほつれが生じやすい箇所になるので、ほつれが出ないよう補強するために行う止め縫いを、サイクルミシンで行います。次のボタンホール(ボタンの穴)を開ける工程もサイクルミシンを使用します。

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(写真:縫い終わりを補強するためのカン止めの様子)

次はブランドネームをつける、ネームつけの工程になります。次のボタンつけの工程もサイクルミシンを使用します。これでパジャマがついに完成です。

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(写真:睡眠科学のブランドネーム)

お客さまの肌に直接ふれる製品を作るものとしての責任感

出来上がったパジャマは検品工程に移り、全数検査を行います。不良品と良品とを分ける基準や範囲は場所によっても異なりますが、マニュアルで決められており、付属品が正しくついているか、結合部分の縫い目が縫い外れてないか、縫い目が飛んでいないかなど、縫い目がある場所は一つ残らず、すべてチェックします。とりわけ睡眠科学のパジャマは、高度な工夫が随所に施されているため、検品でのチェックポイントも必然的に多くなっています。検品において不良が発見された場合は、問題のある箇所まで縫製をほどいてやり直します。不良の内容や状況によって、原因や不良が出た工程は特定されるので、その工程のミシンや環境などのチェックを行い、即座に改善を図ります。たとえば針が金属疲労などで劣化し、不良につながったというケースもあるので、その場合には針を変える指示を出します。

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(写真:検品の様子)

検品に関連する部署として、メカニック担当7人(男性5人、女性2人)がいます。ここでは縫製などの担当者がより早く・安全に縫製を行い、不良をなくすために、ミシンやセンサー、モータなどの駆動部分などを組み合わせて、機械の改造やカスタマイズを行なっています。またメカニックの部屋の前には、みつけ太郎と名付けられた検針機などのセットが設置されています。これはオリジナルのツールで、ミシン針が折れた際に、針を捜索するための道具が揃っています。針が折れた場合は、四方八方に勢いよく針が飛散してしまうため、マグネットがついた器具で折れた針が落ちていないか、半径数メートルにわたって針を探索し、基本的には見つかるまで探します。針が見つかった場合は、保存してある同種の新品の針と比較して、完全に復元できるか、長さなどを細かくチェックします。そのために過去・現在を問わず、使用しているすべての針の新品が保管してあります。また同時に針の飛散防止カバーなどで、飛散距離を少なくするための工夫もしています。

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(写真:みつけ太郎)

また、試作品や販売サンプルなどを作るマルチ対応班と呼ばれる部署があり、主に試作品の作成をしています。すべての工程に対応できる担当者が所属しているため、試作品の作成がない場合は、縫製のサポートに入ることもあります。このように、様々なスタッフがそれぞれの部署でサポートしながら、品質の向上や環境改善を通じて、不良や欠点をなくすための努力を続けています。

品質はもとより、最後まで安全性に手を抜かない姿勢

検品を終えたパジャマは再び1階に戻され、続いて畳み込みの工程へ移ります。担当者がナンバリングをチェックしながら、同じナンバーのズボンと上着をセットしながら畳み、1着1着、手作業で包装していきます。畳み込みから包装工程の際には、値札ラベルやタグ(紙ラベル)のセットも同時に行われます。セットする際には、枚数を瞬時にカウントできるカウントマスターという機械を使って、数量をチェックします。たとえば生産数が100の場合、値札ラベルやタグが1枚不足していたり、逆に余ったりした場合に、担当者のセットミスなのか、取り出した枚数が間違っていたのかが分からなければ、すべての包装を再度チェックし直す必要が出てきます。そこでカウントマスターで、あらかじめ確実に枚数を確認しておくことで、数量チェックのミスや負担を小さくしています。

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(写真:包装工程の様子)

包装検針工程では、自動検針機を使って、折れた針が残ってないか、金属片など異物が混入していないかなどを検査します。X線ではなく磁性による検針で金属を探知し、金属が探知されるとアラームが鳴り、機械は自動で止まります。縫製で使用した針だけではなく、たとえば材料を提供する他社の前工程の段階での混入の可能性も考慮し、検針は特に入念に行われています。検針が終わると、次は照合機を使って、ラベルに印刷されているバーコードを照合し、違う品番のものやサイズ違いの製品が混入していないかをチェックします。こちらも正しくない製品を検知した場合には、アラームが鳴り、機械は自動でストップします。

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(写真:自動検針機)

最後の最後にさらなる抜き取り抽出検査を実施します。この検査では社内規格による割合の製品を抽出し、たとえば絶対に出してはいけないとされている「Ⅰ不良」が一枚でも発見された場合は、その製品と同じ条件で製造した全品の検査をやり直します。この最終検査工程における抽出のパーセンテージや検査基準などは、商品や生地の条件に関わらず必ず行われます。

こうして紡績に始まり、製織、捺染、縫製という緻密かつ長きにわたるプロセスを経て、生み出されてきたワコールの睡眠科学のパジャマは、ついに完成し、流通センターへと出荷されていきます。
さまざまな工程でさまざまな人たちが、議論や技術改良、工夫や苦闘を重ねながら、1着のパジャマを完成させるために尽力していることが、今回の取材で明らかになりました。
着ごこちは、寝ごこち。いま見直されている睡眠の質を、パジャマの生産現場から光を当ててきた今回の「ものづくりの現場から」シリーズも、これで最終回となりました。ワコールはこれからも皆様にとって、着ごこちの良いパジャマを作り続けていきます。(完)

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(写真:出荷されるパジャマ)

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