毎年3月8日は国際女性デー。女性たちが政治的自由や平等を勝ち取るための活動を讃えるとともに、全ての女性が自分らしく、健やかな人生を生きるために何をすればいいのか、どんなことができるのかを考える日です。
国際女性デーに合わせ、ワコールでは、2023年の3月4日(土)に「CW-X ランニング&トークイベント by Be a better you For WOMEN」というイベントを開催しました。
ゲストには、「ワコールフェムケアポータルサイト」のアドバイザーでおなじみ、産婦人科医でありスポーツ科学の専門家の高尾美穂先生。
そして、ワコール女子陸上競技部アドバイザーでもある、日本陸上界を牽引してきた、福士加代子さんにお越しいただきました。
福士さんは、機能性コンディショニングウェアブランドの「CW-X」WOMENSアンバサダーを務めています。
イベント「CW-X ランニング&トークイベント by Be a better you For WOMEN」では、前半に皇居の周りを福士さんとともにランニング。福士さんが参加者たちに笑顔でアドバイスをするなど、ゆったりとした雰囲気で「春ラン」をみんなで楽しみました。
後半には、高尾先生と福士さんによるトークイベントを開催。参加者からのアンケートをもとに、女性のライフスタイル、そしてスポーツとの関わり方についておふたりに語っていただきました。
女性は捻挫が多い!?ケガをしないように自分の調子に耳を傾けて
最初のトークテーマは、女性特有の運動時のケガについて。
イベントに際して事前にアンケートを取っていたのですが、約半数の人が運動中にケガをしたことがあると回答しました。
運動時の女性のケガについて、骨折が比較的多い男性と比べて、女性は捻挫(ねんざ)をしてからだをいためてしまうことが多いと高尾先生。
「『捻挫くらいたいしたことない』と思うかもしれませんが、日常生活にストレスをあたえ、捻挫した所をかばうことで別の筋肉を緊張させてしまうことがあります。きちんとケアすることが必要なんです」。
ケガをしたときのケアだけでなく、そもそもケガをしないようにすることも大切だと高尾先生は話します。これは、いわゆる予防医学的な考え方です。スポーツにおけるケガは、舗装されていない道で不安定な着地になるなど外的要因だけではなく、オーバーワークも大きな原因になっているそう。
福士さん「わたしは現役時代、朝・昼・夜とそれぞれ走る時間があって、最低でも1日20kmは走っていました。でも、調子が悪いときには自分で申告して休む時間をつくっていましたね。ケガしたときは完全にオフ!」
プロはコーチとのコミュニケーションも大切ですが、自分の調子を把握して、練習メニューを決めることができるのが理想的だと高尾先生もあいづち。
高尾先生「わたしも医局にいたとき、飲み会苦手だったから行かなかったもん!」
自分のペースを保っているおふたりには無縁の悩みかもしれませんが、「うまく休む」ことは、アスリート生命を長持ちさせるためにも必要なスキルかもしれません。
生理のときでも体調に合わせた運動はOK
次のアンケートでは、生理のときでも運動をするかという問いかけ。約半数の人が「生理でも運動をする」と答えましたが、なんらおかしいことではないと高尾先生は話します。
「月経って3〜7日ありますけど、ずっと同じ量の経血が出るわけではありませんよね。だから、『生理中はずっと動かない』って人は少ないのかもしれません」と高尾先生。
しかし、生理=病気じゃないからいつも通りにすべきという考え方には警鐘を鳴らします。「昔は『生理は病気じゃない=我慢できるもの』という認識でしたが、生理の不調は千差万別です。お腹が痛い、腰が痛いだけではなく、メンタルバランスが崩れることも、まとめて月経困難症なんです」。
本人が生活に不調を感じれば月経困難症として、対策すべき問題ですと高尾先生は話します。
「本人が困っているなら、ケアすべきものなんです。これは生理中の不調だけでなく、更年期による不調もそう。検査で数値的に問題なかったとしても、本人が生活に困っているなら、症状を軽減する取り組みがなされるべきなんです」。
現役時代から、自分の体調について敏感に意識していた福士さんも、不調時のケアについては重要だと話します。「わたしは比較的、生理は軽いほうでしたが、それでもお腹が痛くなることもありました。そういうときはベストなパフォーマンスを出せないのですが、絶好調ではないなかでいい動きをしているって自分を評価すればいいと思います!」と強く話してくれました。
「生理中はさまざまな不調が起こります。ただ、ずっと動かないのがいいのかといわれればそうではなく、『自分の調子のよさを自分でゲットしにいく』のが大切」と高尾先生。
高尾先生は続けます。「いちばんしんどいときはゆっくり休むのがいいと思います。ただ、しんどいときこそストレッチをして血行をよくしたほうが体調がいいという人もいるでしょうし、経血量が少ないときはからだを動かしたほうが調子がいいという人もいます。大切なのは、自分の体調に合わせて運動量を調整できること」。
ナプキンのズレや経血のもれは、機能的な下着でストレス軽減を
生理中の運動に関して、ナプキンのズレや経血のモレが心配だという声もあがりました。ワコールでは、生理中でも安心して運動ができるよう、スポーツに対応したサニタリーショーツも展開しています。
機能性を持った下着の可能性についても高尾先生が言及しました。
「運動は股関節を動かすことなので、太ももの動きとおまたの動きが連動しない下着がいいと思います」。
本体の素材が、通気性のよいメッシュになっているなど、むれにくさにも配慮されたプロダクトは、ワコールが展開するもののなかでもおすすめです。
高尾先生は「生理でも運動したほうが調子がよくなる人もいます。ただ、不快感はないほうがいいですよね。気持ちよくからだを動かすためにも、機能性を持った下着にサポートしてもらうというのは、とてもいいことだと思います」と話してくれました。
生理中の不調は人それぞれだからこそ、誰もが「不調の存在」を認識することが大切
続いては、生理中の不調を周囲に相談するかどうか。事前アンケートでは、生理中の不調を周囲に相談しないと答えた人が34%に上りました。
ひと昔前は「生理は病気じゃないから我慢するもの」という認識も強かったですが、年々その意識は変わりつつあります。しかし、まだまだ認知が高いとはいえません。
「『生理の不調が女性にはある、しかもその症状は人それぞれである』ということを社会のみんなが知って対応を考えることができる、いまはそんな時代の過渡期であると思いたいです」と高尾先生。
「ざっくりでいいので、女性には調子が悪くなる時期があることを知っておくと、対応しやすいと思うんです」という高尾先生の言葉に、参加者のみなさんもうなずきます。
「心身の不調について、なるべく相談できる関係がいいですよね」と福士さんも話します。
体調がベストでないときは、そのなかでどう動くかという判断とともに、普段から自分の体調に耳を傾けておくことが大切なんですね。
日ごろから婦人科を受診して専門家に相談も。
終始和やかなムードでありながらも、本質を捉えるふたりのお話に参加者のみなさんも熱心に聞き入っていました。
大切なのは「これくらい大丈夫」と思わず、不調のときにはしっかり休んだり、婦人科を受診して専門家に相談したりと日ごろからのケアが大切ということ。
参加者からの質問とゲストの回答は、後日Q&Aにてご紹介します。
高尾美穂
医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。婦人科の診療を通して女性の健康を支え、女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポートしている。ワコールフェムケアポータルサイトのアドバイザー。NHK「あさイチ」などのTV番組への出演多数。音声配信アプリstand.fmの『高尾美穂からのリアルボイス』では、リスナーの多様な悩みに回答し人気となっている。著書に『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)、『超かんたんヨガで若返りが止まらない!老けたくないなら、骨盤底筋を鍛えなさい』(ともに世界文化社)、『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)など。
福士加代子
1982年3月25日生まれ。青森県北津軽郡板柳町出身。五所川原工業高校で陸上を始め、2000年にワコールへ入社。トラック種目で2004年のアテネから2012年のロンドンまでオリンピック3大会連続出場。2013年の世界選手権モスクワ大会で銅メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロオリンピックにマラソンで出場し、日本の女子陸上選手で初めてオリンピック4大会連続出場を果たした。世界選手権は5大会出場するなど、日本女子長距離界の第一人者として活躍した。2022年1月30日の大阪ハーフマラソンを最後に、第一線を退く。現在、ワコール陸上競技部アドバイザー。2023年3月「CW-X」WOMENS アンバサダーに就任。