-
●編集部セレクト
ものづくりの現場から〜パジャマができるまで〜 vol.1 紡績工場 (前編)
上質な糸を作るために
みなさんは、眠るときは何を着用されていますか? ワコールでは、ここちよく眠るためにパジャマに着替えて眠ることをおすすめしています。
そこで、パジャマの魅力を、すこしでも多くの方に知っていただけるように、パジャマが作られていく様子を、普段見ることができない工場を実際に取材してお届けします。
まずは肌ざわりのルーツ、素材となる綿の糸を作る紡績工場を訪ねました。
綿を開き、ゴミを取り、素材を混ぜる、混打綿工程
海外から圧縮して送られてきた原綿(綿花から種子をくりぬいたもの)は、荷を解かれて適切に管理された温度、湿度の中で放置されます。 (写真:原綿のかたまり)
混打綿機には、圧縮された綿を解きほぐす「開綿」、付着している葉かすや種子片などのゴミを除去する「除塵」、綿以外の素材や違う色の綿を混ぜ合わす「混綿」という3つの働きがあります。(写真:混打機)
昔は、収穫した綿を弓矢の弦の部分で打ちつけることで、殻などのゴミを取り除き、やわらかい綿にしていました。その綿打ちと呼ばれる作業を混打機がおこなっています。
混打機でやわらかくほぐした綿を、ドラム式洗濯機のように回転させます。持ち上げて落とすときの綿とゴミの比重の差で、原綿に付着している葉かすや種子片などのゴミを取り除きます。
調合機と言う機械では、開綿された600キログラムの綿を集積することができます。
この機械では、綿繊維の比重により積もり方が変わり、混じりの悪い層ができるため、積もった綿を縦に取り混打機に投入してよく混ぜ合わせます。
長い混打綿機を通って、開かれた綿はラップと呼ばれる厚さ1㎝ほどのシート状に整えられます。ここではまだ繊維の向きなどは整っていません。
(写真:ラップと呼ばれるシート状にされた綿)
綿に櫛(くし)を通すカーディング(梳綿 )工程
シート状の綿の繊維の向きを整え、細かなゴミや短い繊維を取り除き、ロープ状のスライバーに整えていくのがカーディングの工程です。
カードと呼ばれるカーディングの機械には、剣山のようにびっしりと針がついています。この針のついた板を回転させて綿をひっかけ、繊維を1本1本分離し、平行に整えていきます。混打機で取りきれなかったゴミもここで取り除きます。
(写真:カーディング作業をおこなうカード機)
(写真:カードについた剣山のような針)
2回にわけておこなわれるカーディングの工程。太い針で梳かしたあとに細い針で梳かすことで、不純物や短い繊維を取り除き、残った長い繊維を収束します。この工程で、重さ、太さがある程度揃った綿の束(スライバー)を作ります。(写真:カード機で、繊維の流れを整えて紐状にしたスライバー)
(写真:2回のカーディング工程を経て、白く、美しくなった綿のアップ)
綿の繊維を整え、繊維の長い綿を選りわけるコーミング工程
糸は工程により、カード糸とコーマ糸にわけられ、より精製されたコーマ糸は高級シャツ地やニット地目などに利用されます。
コーミングの工程では、シート状の綿に鋸歯状の櫛を入れることで、綿の中に含まれるネップ(繊維が絡みあってできた糸の節)や短い繊維、微細な不純物を取り除き、繊維方向が揃えられた長い繊維のみのスライバーを作ります。
(写真:コーマ糸と呼ばれる上質な糸を作るための機械)
コーミングの機械に通すことで、肌ざわりもさらにやわらかく、なめらかな綿になります。コーミングされた綿の束をコーマースライバーと呼んでいます。(写真:コーミングされた綿繊維、あきらかに手触りが違います)
紡績は、落綿(繊維長の短い綿)を取り除き、繊維方向を整える下準備と、整えられた繊維を引き伸ばし、均一の太さにして撚りをかけていく工程でできています。 今回は綿繊維を糸にするための下準備の様子をお伝えしました。次回は綿繊維が糸になる様子をお届けします。(写真:左)カード機で取り除かれた落綿 右)落綿を取り除き、繊維方向を整えた綿)