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産婦人科医・高尾美穂

高尾美穂✕福士加代子「女性とスポーツ」お悩み相談
【国際女性デー Be a better you For WOMENイベントレポートQ&A編】

産婦人科医・高尾美穂先生とアスリートの福士加代子さんが、「女性とスポーツ」に関するさまざまな疑問や悩みについて語ります。ここちよく毎日をすごすヒントとしてご紹介します!
(このQ&Aは、国際女性デーにちなみ、2023年3月4日(土)に高尾美穂先生と福士加代子さんをゲストに迎えて開催した、「CW-X」ランニング&トークイベント 「Be a better you For WOMEN」の際のQ&Aをもとに再編集したものです)

運動に取り組む女性ならではのお悩みから、生理にまつわる不調や成長期のからだの変化まで、さまざまな話題をピックアップしました。
アスリートである福士加代子さんが考える、運動を楽しむコツとは?そして、月経中のスポーツや女性アスリート特有の悩みに、産婦人科医でありスポーツドクターでもある高尾美穂先生が答えます。

Q:元気いっぱいのおふたりですが、疲れたときはどうしてますか?ゆっくりする日のルーティンを教えてください

A:好きなことを自由にやってすごします

福士加代子さん(以下、福士さん):
朝少し走ったら『ちゃんと外で運動したぞ!』って言い聞かせて、あとは家で動画の視聴三昧(笑)。映画とか、ドラマをみてのんびりしてますね。雨の日も気分が乗らないので、そういうときは家で家事をしながら、自由にすごします。

高尾美穂先生(以下、高尾先生):
私は『やらなきゃいけないこと=やりたいこと』なので、忙しいって感覚はあまりないかもしれないですね。あまりストレスもないかもなあ。

福士さん:
へー、それすごいですね!あ、あと私は、普段から体を動かす分、本を読むようにしています。活字を眺めることで脳の違う部分を使うことになり、結果的に休まりますね。いつもデスクワークをしている人は、疲れたときに運動するとリフレッシュになるって聞いたことがありますよ!

Q:運動が苦手で、運動への第一歩をなかなか踏み出せません……

A:記録にこだわらず、初めての体験や仲間とのコミュニケーションなど楽しんで

福士さん:
走らなきゃ!って思うと大変だけど、運動っていろいろある。たとえばその場でジャンプしても立派な運動じゃないですか。

高尾先生:
私や福士さんのように、若い頃から運動部だとか、もともと運動が好きなタイプと、運動が苦手で学校では体育の授業が苦痛だったって人は、運動に向き合う気持ちが違うと思うんですよ。

福士さんが『運動もいろいろある』って言うように、体育の授業でやってきたようなことじゃなくて、大人になるまであまり体験する機会のない動きに挑戦するのはどうでしょうか?たとえば、フラダンスとか、フラメンコとか。キックボクシングなんかもいいかもしれないですよね。

福士さん:
運動=辛いことをがんばるってわけじゃないんですよね。私の友達にも、運動が得意ではないけどフラメンコをやっている友達いましたよ!「オレ!」って元気な声で踊ってて、すごく楽しそうでした。スポーツやダンス、いろいろからだを動かしてみると、自分が楽しいって思える運動もあるんじゃないでしょうか。

高尾先生:
あと、運動にまつわるコミュニケーションがあるかどうかも大きいと思う。今日のランのようなイベントに参加したり、励まし合える運動仲間がいるとかね。記録などの数字だけじゃない部分でもやりがいを見つけられたらいいですね。運動習慣もつきやすくなると思いますよ〜!

Q:競技中、しんどくなったときはどう乗り越えますか?

A:しんどいときこそ「ツッコミを入れる自分」を脳内において、葛藤する自分も俯瞰する

福士さん:
きっつい顔してるときもありますよ!30kmくらい走っていると、しんどくてしんどくて、もう1人の自分が『もう歩いちゃいなよ!苦しまなくてもいいじゃん』って囁いてくるんです。でもね、『どうすんだどうすんだ!』『うー……や〜め〜ない!』って自分の頭のなかでやりあってる(笑)押し問答をしながら走っている自分がなんだか面白くなってくるんですよね……。

高尾先生:
あっはっは! 面白がるのって大事! ほら、福士さんのお顔をみてください。キュッと上がった口角なの。普段から、しんどいなかでも精神的な余裕を残しているんだと思いますよ。自分のなかで『やめよう・やめない』っていう自分を戦わせられる余裕があるから、きつくても笑えるんです。

福士さん:
自分を俯瞰(ふかん)でみるようにするのがいいかもしれない。しんどくて『もうだめ、倒れる〜!』って思っても『いやいや、実際倒れないから!』って同時に別の自分が脳内でつっこんできて、その掛け合いがもうおかしくなって、笑えてきちゃうんですよ〜!

Q:生理4日目から終わりにかけて頭痛が出てしまいます。なにか対策はありますか?

A:「頭痛くらい」と侮らないで!適切な対策のためにまずは頭痛専門外来を受診してみて

出典:高尾美穂著『オトナ女子をラクにする心とからだの本』

高尾先生:
生理周期に伴って頭痛が出るという方は一定数いるんですよ。今回のお悩みは生理後半だけど、排卵期と生理前に頭痛を訴える人が多いですね。これはホルモンの変動によるもので、女性ホルモンのエストロゲンが排卵前に山をつくって、生理前には谷をつくるように上下するんです。エストロゲンは血管の拡張と弛緩に関わっている。『月経関連頭痛』っていう頭痛のグループもあるんです。

痛み止めが自分のからだや痛みに合うなら市販薬の服用でいいけれど、頻繁に頭痛が起こるという人は、一度『頭痛専門外来』にいってみるのもおすすめです。専門家からの適切な検査とアドバイスをもらってほしいです。

福士さん:
頭痛専門外来っていうのがあるんですね。

高尾先生:
あるんですよ。『日本頭痛学会』という学会があって。日本頭痛学会のWebサイトに認定頭痛専門医が掲載されているから、お住まいの近くの先生を探してみてください。神経内科でも、より専門的な知識がある頭痛専門の先生に繋がれるかってすごく大切なんです。

産婦人科医は『生理のときにお腹や腰が痛くなる』っていう症状に対しては強いんですが、頭痛は正直言うと判断が難しいんですよね。頭痛ってピルをすすめにくいため、ホルモン治療をしにくい症状なうえに、ひょっとすると『月経関連頭痛』ではない可能性だってある。要素をふるいにかけて原因を探るために、頭痛専門医からのアドバイスを聞いてもらって、そのうえで婦人科医として対策を考えていけるかなと。

あと重要なのが、よく頭痛になる人って『みんなも普段これくらい頭痛を経験しているはず』って思い込みがちなんですよ。実際、頻繁に頭痛がする人ってそんなにいないです!まずはどれくらいの頻度であるのか調べてみてください。2日に1回なんて頻度は言わずもがなだし、1年の生理のうち10回くらいは痛くなるなら、病院にいってみてほしいです。

Q:発育期の女の子に対して、ナプキンやタンポンの使い方をどう教えればいいでしょうか

A:生理が始まるまえから、からだの変化を何度も伝えることが大切!下着のプロのアドバイスを聞くのも有効

高尾先生:
成長期の女の子に、生理が来るって話をどう伝えるかというのは、今も昔もずっと課題だと思います。ある日突然、からだから血が出るのはショッキングな出来事だから。でもじつは、本当に突然生理がやってくるわけじゃなくて、はじめての生理……初潮の前から、からだに変化というのは起きてきているんです。

胸やお尻の脂肪量が増えてふくらみが出たり、ワキやおまたに毛が生えてきたり、そういうからだの変化が起こったあとに出血がおこるんですね。だから『うちの子、からだに丸みが出てきたなあ』って思ったら、これから女の子のからだにどんな変化があるのか、どういうことが起こるのかを伝えてあげることが大事です。どういう順番でなにが起こるのか、繰り返し何度も伝え続けるんです。薄い紙を何層にも重ねるようにして。

福士さん:
思春期にさしかかる若い人たちって、からだのふくらみとか顕著に変わるものなんですか?

高尾先生:
変わる、変わる!成長著しい10歳〜15歳くらいは、毎月のように変化があります。男性だと筋肉が増えて、女性は脂肪が増えていくんですね。どういう変化が起こるかを何度も繰り返し伝えて、そのうえで本人が興味を持つようになってから『こういうときはコレで対処するんだよ』ってナプキンやタンポンを教えた方が、理解度も早いですよね。

そこから先は、本人の経験も大切です。血が漏れるとか、失敗もあるかもしれないけど、そういうときは親がそばで一緒に洗うなどのフォローもしてほしいですね。

高尾先生:
家庭によっては、お母さんがいないということもあると思います。スポーツ医学の専門家としても、シングルファザーが育てているジュニアアスリートをたくさん知ってます。お父さん自身で説明するのが難しかったら、お店まで連れてって店員さんにお願いするのがいいんじゃないかなと思いますね。生理用品だけじゃない、ファーストブラとかね。『お店で下着のプロに相談してみない?』って。

福士さん:
サニタリーショーツとか、お父さんだけだとどうしても知る機会が少なくなっちゃいそうですしね。

高尾先生:
もちろん、お母さんもプロの意見を聞くのは大賛成です。下着のプロに『こういうショーツがあるんだよ』って繋いでもらうことで、本人が納得したうえで生理用品を使うっていう、いいサイクルができるんじゃないかな。

高尾美穂
産婦人科医・医学博士・スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。産業医として内閣府男女共同参画局、人事局で職員研修を担当。長年ヨガを愛好し多くのヨガインストラクターを指導。YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答え、楽に生きられる考え方を配信している。
ワコールフェムケアポータルサイト 監修 https://www.wacoal.jp/femcareportal/
高尾美穂オフィシャルサイト https://www.mihotakao.jp/

福士加代子
1982年3月25日生まれ。青森県北津軽郡板柳町出身。五所川原工業高校で陸上を始め、2000年にワコールへ入社。トラック種目で2004年のアテネから2012年のロンドンまでオリンピック3大会連続出場。2013年の世界選手権モスクワ大会で銅メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロオリンピックにマラソンで出場し、日本の女子陸上選手で初めてオリンピック4大会連続出場を果たした。世界選手権は5大会出場するなど、日本女子長距離界の第一人者として活躍した。2022年1月30日の大阪ハーフマラソンを最後に、第一線を退く。現在、ワコール陸上競技部アドバイザー。2023年3月「CW-X」WOMEN’S アンバサダーに就任。