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産婦人科医・高尾美穂

産婦人科医・高尾美穂先生に訊く①
女性の一生に深く関わるホルモン-上手くつきあう時代です

女性のからだは変化していきます。初潮(初経)以降、毎月やってくる生理や、妊娠出産、そして閉経…苦痛や不快が伴うことも多く、生きづらさを感じる人も多いでしょう。女性の心身の変化は人生を通じて変化するホルモンの変化によるものが大きいのです。

「自分の人生にはこれからどのようなホルモンの変化が起こり、どんな不調が生じる可能性があるのか、全体像を知っておくことが、快適に生きるうえで大切」というのは産婦人科医・高尾美穂先生。

『ワコールフェムケアポータルサイト』を監修する産婦人科医・高尾美穂先生が、女性の一生とホルモン、そしてワコールとともにフェムケアを考えていくうえで大切にしたい思いをお話します。

女性の一生とホルモンの全体像をイメージできますか?

人生を通じて、どのように女性ホルモン・エストロゲンの分泌量が変化していくか、それに伴ってどのようにからだが変化するのか。全体像を知っておくことが、これからの人生の道しるべとなってくれます。このグラフの形を記憶の片隅においておくだけでもいいんです。

男女の違いがはっきりしてくるのが、思春期の第二次性徴期。身長が伸びるのと並行して、脂肪の量が増えてふくよかになっていき、女の子らしい体つきに変わっていきます。そして卵巣機能が働き始め、血中のエストロゲンの濃度が高まることで初潮を迎えます。

20代には、エストロゲンの分泌量が安定する性成熟期を迎え、これが20年間ほど続きます。この時期は働き盛りであると同時に、結婚をする人もいれば、妊娠・出産、子育てをすることも見込まれる時期。

また、エストロゲンの分泌が活発な時期であるがゆえに、生理痛やPMS(月経前症候群)などに悩まされることもあれば、子宮筋腫や子宮内膜症などになる人も増えたり、子宮頸がんや乳がんの心配が生じたりすることもあります。

そしてエストロゲンは35歳頃を境に徐々に減少していき、40代になるとさらに急激に減少して更年期を迎えます。それに伴い、更年期の不調が起きる人も。その後、50歳前後で閉経すると、エストロゲンの分泌がなくなることで、動脈硬化、骨粗鬆症などといった不調や病気が起きやすくなります。

(高尾美穂著「大丈夫だよ」(日経BP社刊)より抜粋)

一生の単位でみると、エストロゲンが分泌される10歳から50歳の間の40年間と、エストロゲンがなくなる閉経後の40年間と、女性の人生は二分されるといえます。

エストロゲンと生理の関係

エストロゲンは月単位でみても増減し、生理周期を司っています。
女性の体では、毎月、排卵と生理が起こりますが、この仕組みを担うのが女性ホルモンの代表格である「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と、妊娠をサポートする「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモンです。エストロゲンには、妊娠に備えて受精卵のベッドになる子宮内膜を厚くする作用があり、この分泌量がピークを迎えると排卵が起こります。すると今度は卵巣から分泌されるプロゲステロンの量が増加。プロゲステロンは、子宮内膜を整えて妊娠成立を助ける準備をします。(高尾美穂著「大丈夫だよ」(日経BP社刊)より抜粋)

ホルモンの変調で起こる不調のポイントは3つ

女性にとっては、不調のタイミングが、ホルモンの変動のタイミングに合致するのです。たとえば、エストロゲン・プロゲステロン量が落ちるタイミングが生理前で生理前不調があり、それから妊娠中から産後にかけてはエストロゲン・プロゲステロンがほぼなくなるタイミングで、産後の不調があります。更年期は、エストロゲン・プロゲステロンがある状態からない状態、ない状態からある状態を繰り返す変調の時期なので、不調となります。

エストロゲンの増減を細かく気にするより、ざっくり次の3つのポイントで理解を深めることで、対応できるようになります。

・生理
・生理周期
・更年期

・生理

生理にまつわる困りごととしては「生理痛」がありますね。これは生理中の不調なのでわかりやすいと思います。

・生理周期

少しわかりにくいのが、生理前のPMS(月経前症候群)。このPMSという状態は、異常ではないんです。不調を感じて検査しても、どこにも異常は出ない、なぜかと言えば、正常な生理周期において起こることだからです。
PMSについて詳しく知りたい人はこちら>

PMSはホルモンバランスが崩れているせいでも、なんでもなくて、ちゃんとホルモンが分泌されているからこそ、起こる変化。それをまず知ると、前向きにこの不調を理解できます。そのうえで対策しようという考え方を持てるといいですね。

ここまでは、生理が順調に来る年代や成熟期における課題ですが、次の困った症状が出るのが更年期世代です。

・更年期

更年期世代は社会のなかで責任世代になってきています。責任ある立場で、仕事を辞めたくないのに体調が悪くてキャリアをあきらめてしまう女性がいるのはもったいないですよね。社会からドロップアウトをしない女性を増やしていくということが、これからの(日本の)1つ課題でもあります。

こだわりを捨てて快適を求めて

でも、ホルモンに揺さぶられる一生だから仕方ない、と悲観的になる必要はありません。今は対処方法がたくさん選べます。

生理痛や更年期の不調で「1日辛くて家で布団かぶって寝てます」みたいな人がやっぱりいます。でも、もう、そんな時代じゃないんですよ。生理痛やPMSがひどければ低用量ピルなどホルモン治療、更年期もホルモン補充療法や漢方など、ちょっとトライしてみれば改善します。

お薬は使いたくないとか、怖いとか、そんな、できるだけ小さなこだわりは捨てて、自分の体の状態が、まずは快適であることを求める。それが考え方としては、すごく大事じゃないかなと思います。

「産婦人科医・高尾美穂先生に訊く②」に続く