妊娠出産、更年期、生理など女性のからだとこころの変化に寄り添うワコールフェムケアポータルサイト

  C4040_main.jpg  

産婦人科医・高尾美穂

産後うつ、マタニティブルーはホルモンのしわざ…どうする?こころのケア

出産後、慣れない育児にこころとからだが追いつかず、不調や気分が落ち込む人も多いのではないでしょうか。『ワコールフェムケアポータルサイト』を監修する産婦人科医・高尾美穂先生が、女性ホルモンとこころの不調の関係についてお話しします。

うつになるタイミングってあるの?

なんとなく気分が沈んでしまったり、イライラしたり、人の言葉に過敏に反応してしまったり、なんでもないのに泣けてしまうなんてことがあるかもしれません。
女性は男性と比べ、メンタルが不調になりやすく、その原因のひとつに、女性ホルモンの変動が大きく影響していると考えられています。

たとえば、ハッピーホルモンと呼ばれているセロトニンは、女性ホルモンのエストロゲンが減少すると産生されにくくなることが分かっていて、メンタルの不調に影響している可能性もあります。

私たちの人生では、女性ホルモンが大きく変化する時期が何度もやってきます。女性がうつ病を発症しやすい変化のタイミングのひとつが産後です。

関連記事:産婦人科医・高尾美穂先生に訊く①女性の一生に深く関わるホルモン-上手くつきあう時代です

妊娠から出産まで女性ホルモンの分泌はダイナミックに変化

妊娠してから産後育児の期間のことを周産期(しゅうさんき)といいます。妊娠、出産、育児と周産期の女性には、心身ともにドラスティックな変化が起こっていて、なかでも、大きく影響を及ぼしているのが、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンです。

赤ちゃんを育てる胎盤は妊娠5カ月以降に完成し、大量のエストロゲンとプロゲステロンを分泌することで妊娠を維持します。
分娩後に胎盤は、「後産(あとざん)」というかたちで体外へ娩出されるため、エストロゲンもプロゲステロンも産生されなくなり、ほぼゼロの状態が続きます。この2つの女性ホルモンには、抗うつ作用や抗不安作用があることから、出産後にはメンタルの不調が起こりやすくなるのです。

また、産後は授乳のため、夜間の睡眠時間をしっかりと確保できないこともメンタルの不調を引き起こす理由になります。

産後の女性はこころもからだも大きく揺れ動く

産後のメンタルの不調は、マタニティブルーや産後うつ病などといった症状で現れます。
マタニティブルーとは、出産直後の女性に起こるイライラ、不安、悲しみなど一過性のメンタルダウンを指します。50~80%の人が経験し、2週間前後で改善していきます。
さらに重篤な産後うつ病は、周りや本人が気づきにくいことから治療や回復が難しいのが特徴です。母親が産後うつ病になると配偶者もうつ病になる可能性が高いという報告もあります。

「母親はみんな同じ経験をしている」と思わないで

産後の心身の変化や悩みは個人差が大きいものです。
同じような経験をしていたとしても、相手の経験と自分が感じている経験やつらさが同じとは限りません。生まれた赤ちゃんの大きさからお母さんの骨盤のサイズ、分娩方法などでも違ってくるのです。
相手と自分の経験は違うかもしれないという想像力を持って受け取ることが大切です。

産後うつ病を代表とするメンタルの不調は、小さな子どもを持つお母さんには誰にでも起こる可能性があります。このことを周囲の人たちにも知識として知ってもらうことが大切です。

(産婦人科医・高尾美穂)

高尾美穂先生のプロフィールはこちら

参考:
高尾美穂著:『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)
高尾美穂著:『オトナ女子をラクにする心とからだの本』(扶桑社BOOKS)