妊娠出産、更年期、生理など女性のからだとこころの変化に寄り添うワコールフェムケアポータルサイト

  D2050_main.jpg  

ウェルビーイング

【初経(初潮)前後で変化するからだ】親は初ブラを機会に性教育を積み重ねて

「一生を通じてわたしは、どのように変化していくのか?」女性の体型やホルモンによって起こる変化を追い続けている専門家によるディスカッション。

第3回目のテーマは、「成長期のからだとこころの変化と親の役割とは?」です。

親世代と比べてバストの成長が早まり低年齢化するファーストブラの着用時期、からだの変化と月経との関係性、また、月経がはじまる前から伝えておくべき家庭での性教育についてもお話ししています。

→第1回 女性の一生、これからわたしのからだはどう変わる?はこちら
→第2回【太りやすい?!更年期のからだは意識してつくって】はこちら


  • 撮影/藤沢大祐
  • プロフィール
    高尾美穂先生(産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター)
    /女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。ワコールフェムケアポータルサイトのアドバイザー。近著に「更年期に効く美女ヂカラ」リベラル社刊がある。

  • 撮影/合田慎二
  • 坂本晶子さん(ワコール 人間科学研究開発センター 主席研究員)/ワコール入社以来、人間科学研究開発センターにて、乳幼児~成長期、妊娠期を含む成人女性の人体計測に取り組み、女性美やエイジングなどの研究からの情報発信や、研究成果を活用したブラジャーやガードルなど下着の製品開発を担当。2020年には、微小重力研究から「重力に負けないバストケアBra」を開発。

「ブラはいつから?」迷う親子の姿。ブラ着用の年齢に世代差も…

___成長とともに小・中学生のからだは大人の女性へと変化していきますが、体型の変化について、親世代と子世代で違いはあるんでしょうか?

ワコール人間科学研究開発センター坂本晶子さん(以下、ワコール坂本さん): 1980年のティーン(1970年代生まれくらい)と2000年(1990年代生まれくらい)のティーンの体型変化を比較したデータがあります。とくに、バストが膨らみはじめている小学5年生・6年生に焦点を当ててみると、2000年代のティーンの方が成長は早くなっていることがわかります。


(資料提供/ワコール人間科学研究開発センター「『初経』をキーにした現代ティーンの成長と体型変化について」)

ワコール坂本さん: 成長が早くなることに加えて、ブラジャーの着用開始時期も、1980年代のティーンより2000年代の方が早いというところが見えてきました。20年前よりも、ブラジャーの着用が低年齢化しているんですね。

実際、保護の方からは「ブラジャーをいつからつけはじめたらいいのか」「うちの子にもブラは必要なの?」といった着用時期に関する悩みや、どんなブラを選んであげたらいいのかわからないという声がたくさん聞かれます。

また、お子さん自身も悩んでいることが相談事項から見えてきます。「友達がブラをつけているけど、私もつけた方がいいのか」という悩みや、「ブラをつけているのがクラスで私ひとりなんだけど、変かな……」といった不安を抱える意見がありました。買ってほしいという子もブラやバストの話題を親に言い出しにくいという声も届いています。

___バストの発育やブラジャーをつけはじめるタイミングとして何か目安はあるのでしょうか?


(資料提供/ワコール人間科学研究開発センター「子どものバスト成長の事実と正しいブラジャー着用の必要性」)

ワコール坂本さん: 4歳〜18歳までの同一人物(女子)約200人の追跡調査を含む、延べ約4,500人の計測データを分析した結果、バストの成長と初経の時期には、深い関係があることがわかったんです。バストは初経前後、約4年の間に3つのステップで変化していきます。
まず、初経の1年以上前にバストのトップ周辺が膨らみはじめ、初経をむかえる頃には、バストの膨らみが横に広がって、からだとの境目ができてきます。そして、初経から1年以上たつ頃には、バストは立体的に膨らんでまるくなっていきます。

___バストの成長は初経と関係があるということですが、その時期に個人差はありますか?

ワコール坂本さん: 私たちが体型の追跡調査をしたなかでは、初経年齢は11歳頃が多く、10歳から14歳ぐらいまでバラツキがありました。
11歳くらいだと、ほとんどバストに膨らみがない子から、丸みのあるバストの子まで、さまざま存在します。一律に年齢や学年でファーストブラ適齢期といえないために、本人も保護者の方も戸惑ってしまいますよね。

ファーストブラを検討し始めたら1年後には初経がくるこころづもりで

___バストが膨らみはじめたり、初経をむかえるとき、女の子のからだの内部では何が起こっているのでしょうか。

高尾先生: 第二次性徴期のなかで、はじめての月経が来るための必要条件として、からだに脂肪が増えていきます。どこにお肉がつくかというと、だいたいバストやお尻周りなんですよね。寸胴からだんだんくびれのあるからだに変化をしていく理由は、バストとお尻周辺の脂肪量が増えるからなんです。

それと並行して、脇や陰部あたりの毛が生えるという変化があって、はじめての生理がやってくる。いわゆる初経、初潮ですね。初経はいろんなからだの変化のあとの方に起こる出来事です。

ファーストブラを着けはじめる時期がいまは10歳ぐらいからなんですよね。

ワコール坂本さん: そうですね。

高尾先生: なので、ファーストブラをつけはじめるということは、もう初経がきてもおかしくないよ、と親が認識しておく必要があります。

自分の子どもが、からだがグッと大きくなって、お肉の量……正確には脂肪量が増えてきているという変化を感じられたら、その時点で、1年〜1年半後の初経を見越して、性教育をはじめていくっていうことが大事だと私は思っています。

初経前から家庭での性教育を


撮影/藤沢大祐

高尾先生: 生理というのは、出血をともなう、ある意味非常にショッキングな出来事なわけですよね。もともと血が出てなかったところから血が出るっていうのは、それまでの人生のなかだと、けがしたときぐらいなはずで。

世の中で性教育の必要性についてはすでに語られていますが、そのショッキングさゆえに性教育の多くが出血するところにフォーカスしているわけですよ。でも、出血があるもっと前から、からだは変化しているんです。だけど、その変化はけっこう見過ごされちゃっている。

家庭での性教育のよさは、授業時間中ずっとその話題をしなきゃいけない学校での性教育と違って「今日のお話はここまでにしよう」と途中でやめられること。

「薄い紙を1枚ずつ積み重ねるみたいに、ちょっとずつ、ちょっとずつ話をしていくということができるはず」というのが、私が思っている家庭での性教育なんですよね。からだの成長の話とか、ファーストブラをつけはじめる年代には、そういう情報がもたらされていくといいですよね。

ワコール坂本さん: 確かに、生理のことだけを気にしすぎっていうのは、おっしゃる通りだなと思ってハッとしました。家庭における性教育は、どんなふうに伝えていくのがいいと思いますか?


撮影/石川奈都子

高尾先生: からだから血が出るっていうショッキングな出来事が、あと1年半弱ぐらいで起こるという事実を、背が伸びて脂肪量も増える時期がきたら、伝えはじめなきゃいけないわけです。

そもそも脂肪細胞がつくる「レプチン」というホルモンが、卵巣が機能しはじめる引き金になるので、脂肪量が増えないと月経は来ないんですよ。

「あなたのからだは、子どもを産むことができるからだに近づいてきている」と女の子のからだの変化を、家庭のなかで親と子どもが一緒に見て、月経について話をはじめていく。月経自体は、その年代の子どもたちにとって多分わずらわしいことなんだけど、理由から話した方が理解はしやすいはずなんですよね。

学校のなかでこういった伝え方をするのはなかなか難しいので、家庭だからできる話だよなぁと思っていますね。

___ワコールでは、ブラなどの下着の提案を通してどういったことを伝えていますか?


出典:ワコール ジュニア公式ブランドサイト「10歳になったらブラデビュー~まずは知ってほしい3つのこと~」

ワコール坂本さん: 小・中学生の女の子向けのブラであれば、バストの成長を3つのステップにわけて、バストトップが膨らみはじめる初経1年以上前と、バストの膨らみが横に広がっていく初経の頃、そして立体的に丸みを帯びる初経1年後というバストの成長の特徴に合うブラやブラトップをおすすめしています。

同じ年齢でも成長段階に個人差の大きい時期ではあるので、初経を意識しながら事前にお話ができるっていうこと、そして「いまバストの変化に驚いたとしても、初経がきて1年もすればバストの成長は落ち着いてくるんだよ」ということや「17、18歳になったらバストの成長時期が遅かろうが早かろうが、同じように大人のからだになるんだよ」というお話を、商品の販売や下着教室を通じて女の子にお伝えしています。

参考:ガールズ親なび「からだやブラのことを学ぼう『ワコールの学ブラ講座』」

自分のからだを知ることで、数十年後の自分を大切にできる

___思春期には「痩せ願望」があらわれる子が多いのですが、摂食障害や月経不順の原因にもなりかねないのが心配です。

高尾先生: 脂肪量が増えるということ自体は、これからのあなたの人生に必要な変化だと伝えることが大切ですが、加えて、その変化は男の子の変化とは違うんだということも伝える必要があります。

女の子に比べて、男の子の方が1年半〜2年ぐらい成長が遅いんですよね。男の子は小学校高学年になってもあどけない状態が続く。その後グッとテストステロンの分泌が増えて、身長も一気に伸びて、筋肉量も増えていく。

変化に時間差があるので、同級生の男の子はそんなに変わってないのに、女の子は自分のからだだけが変わっているような感覚になるわけです。「太ったから痩せなきゃ」と思ったり、周りの何気ない一言で、食べることが怖くなったりするのもこれぐらいの年代から。体型の悩みがはじまる前に女の子のからだの変化や男女の差について日頃から話しておくのはすごく大事ですよね。

これまで身長も体重も運動能力もあまり差がなく、じゃれあってきたような男の子と女の子が、同じことをしたら一方にとって暴力になりえてしまうこともある。当事者となるこの世代の子どもたちが、その理由を知る機会はほとんどありません。

こういったことも、本当は親から伝えられたらいいですね。からだの変化の男女差も性教育に含めるといい、といつも思っています。女性の人生の、いろんなトラブルが起こるはじまりがたいてい初経なので、少しからだに脂肪がつきはじめたら、そんな話を必ずするようにしてます。

ただ、いま起こっているからだの変化が、これから何十年もあとの人生に大事なんだということは、親もそれほど意識できていないんですね。そうなると、子ども自身が理解できないのは当然です。まずは、親が女性の一生を通じた変化を理解し、子どもと一緒に確認する機会をもつとよいかもしれませんね。

___この先自分のからだがどのような変化をしていくのか、どんなトラブルが起こりうるのか、その意識が薄いと、今の自分に不安を感じて食べなくなったり、自分のからだを粗末に扱ってしまうかもしれないですね。

高尾先生: 本当に。短絡的に考えてしまうと、リスクになりえます。

からだの内側も外側も大きな変化が起こる、初経前後の4年間。個人差も大きく不安を抱えやすいなかで、「どうしてこんなに変わるのか」「これから何が起こるのか」、ブラ着用をはじめとする「変化にどう対応するのか」を、子どもと一緒に知り考えていくこと。

ひとつのからだで長い人生をすこやかに過ごすために、前もっての性教育を、家庭で少しずつ積み重ねていくことが大切なのではないでしょうか。

次回は「産後のからだとこころの変化」についてです。