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●すいみんコラム
生活環境のスペシャリストに聞く! 全6回睡眠スペシャルインタビュー⑤
第5回 快眠を実現する寝間着とは
■ ショーツを着けずに寝ることの科学的根拠はありますか?
下着を着けたほうがいいかについては、あるときパジャマ研究会で、色彩学の先生が下着を着けないと仰られていて、「ぜんぜん楽よ~、やってごらんなさいよ」と勧められました。
そこまでは調べていませんが、以前、裸睡眠法というのを唱える人がいて、それを否定するデータがどこにもなかったので、学生たちと、一糸まとわぬ人と、普通にパジャマの下にショーツだけの人、パジャマの下にブラとガードルを着けた人に分けて眠りの質を調べる実験をしたことがあるんですが、一番よかったのが裸だったの。パジャマの下にショーツというグループとそんなに違いはなかったんだけど、ちょっとだけ裸のほうが眠りの質がいいんです。ブラなどを着けている人たちはいちばん眠りが浅くて覚醒もしやすく、なかなか寝付けないということがはっきりわかりました。
ところが心理的なテストもしてみると、裸はやっぱり落ち着かないのね。それは慣れの問題もあるんです。中世ヨーロッパや日本でも東北の一部地域では裸で寝るという習慣があるんだけど、それは寝具と別に暖をとるためなんです。実際に見に行ったんですが、東北のある地域では、布団がなくて箱のようなものの中に柔らかく打ったわらを敷いて、そこに子どもたちも一緒に裸で寝るというのがあります。
裸健康法というのもありますが、私も、人間はずっと服を着続けているけれども、どちらかというと服は外に対するサインであって、逆にいろんな動物をみていると、寝るときは服は着ない方がいいのかも知れないという思いはあるんです。その思いを基に行った実験なんですが、それはすごく季節がよくて空調がばっちりきいているという条件の場合のみにおいて良いという結果なんですね。少し寒い目の環境だと、寝返りをうつたびに空気がお布団の間に入って、そのたびに覚醒が起きるのです。裸だと、ほんのわずかの空気の出入りでもそれが起きてしまう。でも一枚着ていればそれが動かない空気の層になって覚醒が起きない、それが大事なのです。本当に薄い膜でいいんですが、直に空気が出入りするのはだめ。
となると、普通のおうちでは無理なので、やっぱり寝間着は着た方がいいということになりますよね。そして締め付けないもの...という段階的な結論になったわけなんです。
■結論としては、締め付けない寝間着がいいということになりますね。
でもあまりゆったりしすぎると、しわになる、からまる、空気が出入りする...ということになるので、適度なフィット感も大切だと思います。
私は寝るときには自分がソラマメになる感じを想像するんだけど、ソラマメってふわふわの綿毛の中に入ってて気持ちよさそうじゃないですか。だからお布団は自分の気に入ったものをすごく吟味するのね。やわらかい内側のケットにくるまれて、シルクのケットとやわらかい羽毛を入れて、究極のふわふわでね、そこまでこだわるわけ。だって自分が気持ちよければいいわけでしょ。
ただ夏は脚が放熱器になりますから、そこをくるんでしまうのは損だと思いますね。強く冷房をつけて寝る人は別の話になりますが、これから省エネの考え方が進んで、空調のシステムもだいぶ変わってくる可能性があるので、それによってまた考えたらいいですね。
■寝間着には、清潔を保つという側面もあると思うのですが?
そうですね。洋服の場合は下着を着てそれを毎日洗濯しますよね。下着は汗や皮脂を吸い取ってくれるので、それを毎日着替えることで清潔が保てるわけです。でも寝るときは、もっと必要なんですよ。
起きているときとちがって、寝ると血液は皮膚の表面に来て、手足が暖かくなると眠くなります。ということは、寝ているときは皮膚の新陳代謝が活発になるので、汗や皮脂もよく分泌されます。なのでお風呂上がりに清潔な寝間着に着替えて...というのにはひとつの意味があります。 もうひとつは洗濯。枕カバーなどもそうなんですけど、意外とみなさん洗濯してないんですよね。1週間、2週間どころか1カ月以上なんていうのもざらに聞きます。
うちの学生が修士論文のために枕カバーを調査したんだけど、それとあわせて寝間着も調査すると男の子なんていつ洗濯したかわからないくらいで、1カ月くらい同じものを着ていても平気なくらいです。でも、寝間着は肌着よりも汚れるくらいで、一晩着た寝間着に付く汚れを染料で染めてみると、背中なんてべったりですよ。普段の下着と違って、寝間着は寝返りを打ったりして、汚れを繊維に練り込んでいるようなものですから、結構寝間着って汚れるものなんです。 しかし、逆にいうとその汚れが次の汚れを吸収の妨げにもなるので、寝間着はできるだけ絶えず洗濯して清潔にしておくことが大切なんです。
あまりみんな気が付かないんですが、毎日下着やショーツを洗う人でも、寝間着は3日とか1週間は洗わないもの。やはり適度なタイミングでのお洗濯と着替えをしたほうが、カラダから出てくる汚れに対しては効果があります。