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●睡眠の法則
毎日を充実させる睡眠の法則115
毎日の作業で健康な脳をつくる
『深い睡眠で認知症リスク低下』
年齢を重ねて、
自分が認知症になってしまうことへの漠然とした不安を抱くようになった、
という相談を受けることがよくあります。
認知症のリスクを低下させる1つの要素が
深い睡眠です。
深い睡眠を得るために
避けたいこととして、
今回は、次の2つを取り上げてみます。
それは、
①ぐるぐる悩み続けること
②運動不足
です。
①のぐるぐる悩むことは、
脳のデフォルトモードネットワークが関係しています。
デフォルトモードネットワークとは、
安静にしているときに働く脳の複数の領域のことです。
実は、
認知症の原因物質と考えられているアミロイドβが蓄積するのは、
このデフォルトモードネットワークの領域だと指摘されています。
デフォルトモードネットワークは、
課題に取り組んでいたり、
深い睡眠をとっていたりするときに活動が低下しますが、
認知症の方は、
活動が低下しないことが明らかになっているのです。
課題に取り組んでいるときに
デフォルトモードネットワークが低下しない、というのは、
ぼんやりして作業に集中できない状態です。
ぐるぐる考え事をしてしまい、
何も手につかないときは、
デフォルトモードネットワークが暴走してしまっていて、
アミロイドβの蓄積が促進されてしまうと考えられています。
また、デフォルトモードネットワークが低下しなければ、
深い睡眠も減ってしまいます。
②の運動不足は、
運動と脳の神経活動との関係です。
脳の神経は、新しい神経が生まれることもありますが、
衰退していく神経の割合が多いので、
年々、減っていきます。
あるデータでは、
記憶を司る海馬は1年間で1%程度小さくなっていくと
指摘されています。
そんな中、
運動をすることで、
神経が新しく生まれ、育ちやすくなることが明らかになっています。
軽度の運動を1年間継続したところ、
海馬が約2%大きくなったというデータもあります。
運動は、脳の健康を保つのに重要なのです。
そして、運動によって深部体温が上昇すると、
深い睡眠が得られて、不要な神経が淘汰されて、
新しい神経が他の神経と結びつき、生き残りやすくなります。
つまり、
日常生活で
ぐるぐる悩むのをストップさせる運動を取り入れられれば、
脳の健康を保つことができる、
と考えることができます。
そこでおすすめなのが、家事です。
家事は、あらゆる感覚を伴う作業なので、
脳のリハビリテーションでも頻繁に使われます。
例えば、雑巾がけ。
雑巾を床に押し付けないと床はきれいにならないので、
必然的に筋力を使います。
当然、深部体温も上がります。
さらに、
手を動かした結果、床がきれいになる、というように、
作業の結果がすぐに知覚できると、
デフォルトモードネットワークは低下します。
家事だと思うと面倒に感じますが、
脳の健康を保つための作業だと思うと、
案外いいかも、と思えるのではないでしょうか。
脳の健康を保つために雑巾がけを利用するので、
一度に全部の床を拭かなくても大丈夫です。
部屋を分割して、
数日に分けて拭いていけば、
継続的にデフォルトモードネットワークを低下させて、
筋力強化をすることができます。
さらに運動によって深部体温のリズムが整い、
深い睡眠を得ることもできます。
毎日の作業で、
脳の健康を保ってみましょう。
菅原洋平
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。国際医療福祉大学卒。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集める。主な著書に、13万部を超えるベストセラー『あなたの人生を変える睡眠の法則』、10万部突破の『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』など多数。
著書:あなたの人生を変える睡眠の法則2.0
イラスト/菅原洋平
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