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●睡眠の法則
毎日を充実させる睡眠の法則150
なぜ、夜間にトイレで目覚めるのか?
尿の生成は、
「バソプレッシン」と「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」という
2つのホルモンで調整されています。
まずは、「バソプレッシン」の機能について。
「バソプレッシン」が増えると、
尿が濃縮されて尿の生成が低下します。
通常、成人は
「バソプレッシン」の分泌が夜間にピークを迎えます。
22時から朝8時ごろまでは増え
日中に減少します。
睡眠中の脱水を防ぐために、
体に水分を貯蓄する仕組みが働くというわけです。
これにより、トイレで目覚めることは少なくなります。
ところが、
年齢を重ねると、
「バソプレッシン」の分泌リズムが
平坦化してしまいます。

加齢によって、トイレに起きる回数が増えるというのはこういう理由からです。
もう1つのホルモン、
「ANP」の働きも見てみましょう。
「ANP」は、
尿の生成量を増やして水分の排泄を促すことで、
血液の量を減らし、
血圧を低下させます。
日中は水分摂取により血液の量が増えて、
血圧も上昇するので、
排尿が促されます。
ただし、
重力の影響によって、
体の水分は、足元に溜まります。
夜になると、
血圧が低下し、
尿の生成は減ります。
ところが、
ベッドで横になると、
足元の水分が体に移動して再吸収されます。
水分が増えて血圧が上昇すると、「ANP」が分泌されて、
尿の生成が促されます。
人によっては、
夜間、横になったことで1000ml以上の尿が
生成されることもあります。
膀胱が溜められる尿量は
350ml程度なので、
トイレで目覚めてしまいます。
2つのホルモンの特徴から、
「夜間に水分を蓄えられなくなる」
「足元から水分が移動して尿が増える」
ことが、トイレ覚醒の原因と考えられます。
そこで、
この2つに対策を立ててみましょう。
どちらも
体内の水分調節のための働きであることはわかっていただけたかと思います。
そこで、
水分を溜めたり移動させたりする器官「筋肉」に注目してみます。
筋肉は、伸び縮みすると、
体の水分を移動させます。
筋肉量を増やし、
就寝前に足元の筋肉を動かせば、
夜間のトイレ対策になります。
お勧めは、
カーフレイズという
かかと挙げ運動です。
立った状態で倒れないように壁に手を当てて、
かかとを挙げて降ろす。
これを20回実施しましょう。
かかとを挙げたときに
両親指の付け根に体重が乗っていれば、
正しく運動できています。
夕方や入浴前に行えば、
筋肉の発熱で深部体温も上がり、
寝つきも促せます。

作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。国際医療福祉大学卒。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集める。主な著書に、13万部を超えるベストセラー『あなたの人生を変える睡眠の法則』、10万部突破の『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』など多数。
著書:あなたの人生を変える睡眠の法則2.0
イラスト/菅原洋平
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