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●睡眠の法則
毎日を充実させる睡眠の法則159
孤独と睡眠の深い関係
ショックな出来事があってその夜に眠れない。
これは、とても健康的な反応です。
具体的な出来事と眠れないことが直接結びついている場合は、
その出来事を忘れるか解決すれば、
眠りの問題も解決します。
ところが、
思い当たる出来事があるわけではないのに眠れない、
ということがあります。
こちらは、注意が必要です。
脳の中の扁桃体という部位は、
脅威に対して身構える役割があり、
これが就寝前に働いていると眠れなくなります。
この扁桃体は、
特に原因が思い当たらない漠然とした不安、
その中でも孤独感と関係があります。
周りの人と考え方が合わない、
風貌や文化が合わないと感じると、
脳はそれを脅威ととらえて反応します。
孤独を感じる人は、
扁桃体活動が高く、
睡眠のトラブルを抱えやすいのです。

孤独を解消するには、
私たち人間の行動原理を知ることが役立ちます。
毎日生活していると、
自分の言動や行動は同じパターンになっていきます。
この一定の状態を保つ現象は、
ホメオスタシスと言います。
これに対して、
その場の状況に合わせて自由に振舞うこともあります。
こちらはアロスタシスと言います。
人と違うことやいつもの自分と違う行動をすると
アロスタシスが働き、
それによって判断や行動の幅が広がります。
アロスタシスが活発に働けば、
周りと違うことを脅威に感じなくなります。
ただ、
人間関係やSNSなどで他人に合わせた行動を迫られ続けると、
アロスタシスが使われなくなって機能が低下します。
周囲と違いを脅威に感じるようになり、
睡眠トラブルに発展するのです。
孤独を解決するカギは、アロスタシスの活性化。
つまり、自由に振舞ってみることにあります。
大学生を対象にした研究で、
お題のエピソードに合わせてグループで即興演技をする活動を半年間したところ、
参加者が孤独を感じにくくなったという結果があります。
自由な発想で即興的に振舞ってよい、という場が経験できると、
アロスタシスが活発になり、
自分の振る舞いも自由になり、
相手の振る舞いも受け入れられるようになるのです。
周りの人に合わせ過ぎたり、
何事もうまくやらなければならないと考えたりせずに、
遊び心を取り入れ
気の向くままに行動してみると、
自分の行動に新しい自分を発見があるはずです。
自分の主義や価値観、好みを手放してみると、
違いを許容できるようになり、
孤独の脅威から離れることができます。

作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。国際医療福祉大学卒。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集める。主な著書に、13万部を超えるベストセラー『あなたの人生を変える睡眠の法則』、10万部突破の『すぐやる!行動力を高める科学的な方法』など多数。
著書:あなたの人生を変える睡眠の法則2.0
イラスト/菅原洋平
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