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冬だけが冷えではない
冷えというと、真冬の寒さを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
けれど実は、冷えを感じやすいのは冬だけではありません。
むしろ、身体が冷えていることに気づきにくい季節に、いつのまにか冷えをため込んでいることもあります。
東洋医学の暦では、季節は私たちが普段意識している時期よりも少し早く始まると考えます。
春は2月、夏は5月、秋は8月、冬は11月からです。
これは「二十四節気」という、一年を24に分けて季節の移ろいを捉える考え方に基づいています。
身体も実際の気温より少し先に、季節の変化に反応していると考えられているのです。
たとえば、まだ寒さの残る2月。
暦のうえでは春を迎え、身体も少しずつ春へ向かって動き始めます。
そんな季節の変わり目には、なんとなく調子が整わない、ということはありませんか。
冬の冷えは、気温という外からの原因がわかりやすいため、厚着をしたり、温かいものを選んだりと対策もしやすいものです。
一方で、春先の三寒四温、初夏の朝晩の冷え込み、冷房の効いた真夏のオフィスなどでは、冷えを自覚しにくいまま過ごしてしまうことがあります。
寒暖差が大きいと、自律神経のうち身体のアクセルにあたる交感神経も、その変化に合わせて働きます。
気づけば身体が疲れていた、なんてこともあるかもしれません。
冷えは季節を問わず、身体が発してくれているサインのひとつです。
「寒い季節ではないから大丈夫」と決めつけず、なんとなく冷えると感じたときには、少し身体に目を向けてみませんか。
夏の冷え対策
なかでも見落とされがちなのが、夏の冷えです。
外は汗ばむほど暑いのに、冷房の効いた室内では足元だけがひんやりする。
そんな一日を、毎日のように繰り返していませんか。
夏の冷えに気づきにくいのは、身体が「暑い」と感じているからです。
屋外と室内を行き来するたびに、身体は血管を縮めたり広げたりしながら、体温を保とうとします。
いわば、身体のアクセルとブレーキを一日に何度も踏み替えているような状態です。
こうした変化が続くと、自律神経にも負担がかかることがあります。
さらに、つい冷たい飲み物ばかり選んでいると、身体の内側からも冷えを感じやすくなることがあります。
とはいえ、暑い日に冷房を我慢する必要はありません。
養生は、無理に何かを足して頑張るというより、身体への負担を少し引いていく。
そんな考え方で取り入れてみるのもよいでしょう。
たとえば、冷房の効いた室内では膝掛けを一枚使ってみる。
足首が隠れる靴下を選んでみる。
それだけでも、足元の冷え方が違って感じられるかもしれません。
飲み物も、すべて温かいものに変える必要はありません。
常温や温かいものを選ぶ日をつくり、冷たいものは心地よく味わえる範囲で楽しむ。
自分に合うバランスを探してみてください。
そして、夏こそ湯船に浸かってみませんか。
シャワーで済ませがちな季節ですが、38〜40度くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、じんわりと身体がゆるむ感覚が得られるかもしれません。
その日の暑さや体調に合わせながら、「気持ちいい」と感じられる方法を選んでみるのがよいでしょう。
季節別セルフケア
最後に、季節ごとの身体との向き合い方を見ていきましょう。
医療が病気そのものに対処する非日常の技術だとすれば、養生は、季節に合わせて日々の暮らしを整えていく日常の文化です。
たとえるなら、木に起きた不調へ対処するのが医療だとすれば、養生は、木が育つ森の環境そのものを心地よく整えていくこと。
私はそんなふうに考えています。
春は2月頃から。身体が少しずつ目覚めていく季節です。
東洋医学では、菜の花や山菜など、苦味のある旬の野菜を取り入れる考え方があります。
春の食卓に、旬の味を少し添えてみるのもよいでしょう。
夏は5月頃から。
朝の太陽の光を浴びたり、無理のない範囲で身体を動かしたりしながら、季節の変化に身体をなじませていきます。
秋は8月頃から。
少しずつ乾きを感じやすくなる季節です。
温かい白湯を取り入れたり、夜はいつもより少し早めに休んだりしてみるのもよいでしょう。
冬は11月頃から。
東洋医学では、無理に活動量を増やすよりも、蓄える季節と捉えます。
つい頑張りすぎてしまう方こそ、ゆっくり過ごす時間を意識してみませんか。
また、その土地で育ち、旬を迎えたものをいただくことを、東洋医学では「身土不二」と呼びます。
季節ごとに、すべてのケアを完璧に取り入れる必要はありません。
人それぞれ、心地よいと感じることも違います。
できるときに、できることを。
冷えを感じたその日を、身体の声に少し耳を傾ける日にしてみる。
そんな小さな養生からで十分です。
季節に逆らおうとせず、その日の自分が心地よいと感じる方へ少しずつ身を寄せていく。
それが、一年を通して冷えと上手につき合っていくヒントになるかもしれません。