2026.10.19

巡りが滞るとどうなる?

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#養生 #自律神経 #東洋医学 #巡り #セルフケア

巡りとは何か

東洋医学のお話をしていると、「巡り」という言葉がよく出てきます。

なんとなく身体によさそうな言葉だけれど、具体的にはどういうこと?

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

「巡り」は、東洋医学で健康を考えるうえで、とても大切な視点です。

西洋医学では、身体のどこにどのような異常があるのかを調べ、その原因に対処していきます。

一方、東洋医学では、身体全体をひとつのつながりとして捉え、栄養や熱、エネルギーがすみずみまで行き渡っているかにも目を向けます。

この、身体の中を滞りなく行き渡っている状態を「巡り」と呼び、健やかさを支える土台のひとつと考えます。

たとえば、車のエンジンを思い浮かべてみてください。

エンジンが熱をつくっていても、その熱が全体へ行き渡らなければ、先の方までは十分に温まりません。

あるいは、森をイメージしてみるのもよいでしょう。

水が流れ、風が通り、光が届くことで、森全体の環境が保たれています。

どこかで流れが滞ると、その周りにも少しずつ影響が出てきます。

私たちの身体も、それと少し似ています。

巡りとは、特別な何かではありません。

なんとなく調子がいい、手足まで温かい、すっきり動ける。

そんな日々の当たり前を支えているもの、と考えてみるとわかりやすいかもしれません。

最近、「なんとなく巡っていないかも」と感じることはありませんか。

滞りのサイン

では、巡りが滞ると、身体にはどのような変化が現れるのでしょうか。

ここで大切なのは、ある日突然、大きな不調として現れるとは限らないということです。

その手前で、身体はいくつもの小さなサインを見せてくれることがあります。

夕方になると足がむくむ。

肩や首がいつも重い。

手足の先だけが冷たい。

朝すっきり起きられない。

寝つきにくい。

なんとなく疲れが抜けない。

「病院へ行くほどではないけれど、いつもの自分と少し違う」。

そんな感覚はありませんか。

東洋医学では、「病気とまでは言えないけれど、健康とも言い切れない」状態を未病と呼びます。

こうした小さな変化に気づき、日々の暮らしの中で整えていくことも、養生の大切な考え方です。

こうした滞りの背景には、自律神経の揺らぎが関わることもあります。

忙しさや緊張が続くと、身体のアクセルにあたる交感神経が働く時間が長くなります。

すると末端の血管が縮まりやすくなり、身体のブレーキにあたる副交感神経へ切り替わる時間を持ちにくくなることがあります。

気づけばずっとアクセルを踏んだまま。

そんな毎日になっている方もいるかもしれません。

ただ、身体からサインが出ていることを、必要以上に怖がらなくて大丈夫です。

「少し休みたい」「今日はいたわってほしい」と身体が知らせてくれているのかもしれません。

サインに気づけたこと自体が、自分の身体に目を向けるきっかけになります。

まずは「最近、無理をしていなかったかな」と、やさしく振り返ってみませんか。

整える視点

では、巡りを整えるために、どんなことから始めればよいのでしょうか。

ここで少し、発想を変えてみるのもよいでしょう。

何かをたくさん足すより、滞りにつながっているものを少し引いてみる。

養生には、そんな「引き算」の考え方があります。

たとえば、長く座っていると気づいたら、一時間に一度を目安に立ち上がってみる。

座ったままなら、かかとを上げ下げして、「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎを動かしてみるのもひとつです。

呼吸が浅くなっていると感じたら、鼻から3秒吸い、口から7秒ほどかけてゆっくり吐いてみる。

吐く息を少し長めにすると、身体のブレーキにあたる副交感神経が働きやすくなるとされています。

締めつけの強い衣類を、その日の体調に合わせて少しゆるめてみるのもよいでしょう。

夜は、38〜40度くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かり、身体がじんわり温まる感覚を味わってみる。

どれも、特別なことではありません。

医療が非日常の場面で必要になる技術だとすれば、養生は日々の暮らしの中にある文化です。

いつもの一日の中にこそ、巡りを整える小さなきっかけがあります。

そして、ケアを選ぶときの基準は、回数や時間だけではありません。

「自分にとって心地よいかどうか」も大切にしてみてください。

人と比べる必要はありません。

できる日もあれば、できない日もあります。

その日の体調や気分によって波があるのも自然なことです。

続かなかった日があっても、自分を責めなくて大丈夫です。

また身体に目を向けたくなった日に、できそうなことをひとつ選んでみる。

それくらいの距離感が、自分に合う養生につながるかもしれません。

ときどき、自分の身体の巡りに耳を澄ませてみる。

そんな静かな習慣が、未病の段階で自分の変化に気づき、自分らしく健やかに過ごしていくための第一歩になるでしょう。

伊藤 和憲(いとう かずのり)

鍼灸師 / 明治国際医療大学 鍼灸学部長・教授
鍼灸学医学博士・日本養生普及協会会長・日本疼痛学会理事。明治国際医療大学鍼灸臨床部長を務める。
慢性疼痛に対する鍼灸治療、東洋医学的な健康観である養生学の第一人者であり、
『今日からはじめる養生学』(集英社インターナショナル)など著書多数。
東洋医学に基づき、現代女性のための心身のセルフケア指導も行うなど活動は多岐にわたる。
*YojoCheck / Yojoコツ / 1日の過ごし方 / 二十四節気の過ごし方 を監修