魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

22 Aug, 2014

コルセットの代わりに筋肉を!

フレンチ・ランジェリー展が日本へ。

 7月末、原宿のバツアートギャラリーで「フレンチ・ランジェリー展」が開催されました。2012年のパリを皮切りにロンドン、上海、ドバイ、ベルリン、ニューヨーク、トロント、モスクワと世界を巡回してきた展覧会がついに東京に上陸したのです。コルセットから始まったフレンチ・ランジェリーの歴史と功績を称えるもので、19世紀後半から現代まで、フランスを代表する11のブランドのランジェリー130点が展示されました。
 特筆すべきは解説図録の美しさで、フランスのフェティッシュ・シーンをリードするジル・ベルケがランジェリーを撮影。バタイユ、トルイユ、モリニエから影響を受けた、きわどいボンテージ写真で知られる人で、鋏やコンパス、分度器などの小物使いにそのテイストが現れていますね。2年前にワコールの展示会場でこの本を見て目が釘付けになりましたが、それが今回の展覧会の図録だったとわかり感激しました。

 会場では、ファッション史やランジェリー史のエキスパートであるキュレーターのキャサリン・オーメンさんが展示品の解説をしてくれました。コルセット全盛期の19世紀、既に高度なファッションセンスと技術を誇っていたフランスは、世界一のコルセット輸出国だったそう。コルセットが女性の身体的か弱さを補い、まっすぐな背筋、高く突き出したバスト、細いウエストという理想的なシルエットをつくっていた時代です。
 ただし着心地という点からは重く、非常に動きにくいものだったため、1880年代には伸縮性のある生地を使い、柔らかさが追求されるようになりました。史上初のブラが発表されたのもこの頃で、次第にコルセットは上下セパレートのタイプになっていきます(1905-1910)。やがてオーダーメイドのブラとガードルが登場し、締めつけずに自然な形でボディラインを整える方向へと進化しました(1930-1940)。

カラダも下着も、選べる時代。

 第二次大戦後は、工業化に伴い多数のブランドが誕生。ナイロンが普及しランジェリーが民主化します(1950-1960)。しかし次第にフェミニズムが台頭し、1960年代後半には女性解放運動の一端としてブラを燃やす行動「ブラ・バーニング」が勃発。女性らしい下着が抑圧の象徴と見なされたわけですが、この時代にはハイテク技術を駆使した「何もつけていないかのようなブラ」が登場。結局、ブラが衰退することはなかったのでした(1970-1980)。
 1980年代は、ボディコンシャスなファッションが流行り、コルセットの代わりに美しい筋肉が重視されるようになりました。ダイエット、スポーツ、整形手術などでボディをつくりあげることが可能になり、自分で体をデザインする時代が到来。身体的か弱さを補うためのコルセットが真の意味で不要になったのですね。ボディスーツも、ボディを整えるというよりは美しくセクシーな誘惑のシンボルになっていきました(1980-)。

 歴史を振り返ってみると、自由な選択肢がある現代は幸せだなと思います。最近、日本でもボディスーツの人気が高まっていますが、その効能として「姿勢がよくなる」という声を聞きました。最新のコレクションなどを見ると、コルセットのような矯正力がないどころか、背中が全開だったりするのに。セクシーな下着をつける緊張感が心のコルセットになり背筋を伸ばすのでしょう。ボディスーツのパワー恐るべし!
 セクシーな下着をつける勇気がない場合は、ランジェリーショップに行って、大胆なアイテムを眺めつつ妄想する「セクシーランジェリー鑑賞ダイエット」はどうでしょうか。などと言っている間に、現実の筋肉を少しでも鍛えたほうがいいのかもしれませんね。せっかくコルセットから解放された時代に生まれたのですから、いつだって、なめらかでセクシーな動作ができるくらいの筋肉は、常備しておかなくては。

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