「ハグするブラ」って、どんなブラ?
6月に新登場した「ハグするブラ」、もうチェックしましたか? ふわりと肌を包み込むような愛らしいデザインに加え、「ブラが、私を抱きしめる」というコピーにぐっときた方も多いのではないでしょうか。かく言う私もそう。「しめつけない」「つけていないみたい」とは逆方向の、プラスの発想がすばらしいなと思ったのです。一体その感触がどういうものなのか、期待は高まるばかり。先日ついに試着してみましたので、個人的な感想にはなりますが、さっそくレポートしますね。
結論から言うと、フィット感のここちよさは想像以上でした。脇下から背中にかけて感じられるほっとするようなやわらかなタッチと、両脇をスッと支えられるような安心感―。肋骨の脇あたりをやさしくサポートされる感触は、まさに求めていたもの。ああ、ずっとつけていたいと思いました。安定感のあるバストメイク力にも大満足で、即刻スタメン入りが決定です。
「ハグするブラ」をつけた状態で、改めてこのブラの「3つのヒミツ」の図解を確認してみると、そういうことか!と腑に落ちました。まずは、体温でやわらかくなり、カラダに合わせてなじんで、ハグされるようなここちよさが続く「ハグシート」。次に、ストラップまで続くレースで引き上げ、ギュッと抱き寄せ、谷間メイクする「リフティングレース」。さらに、上辺折り返し始末の脇高設計で脇も背中もすっきりさせ、全方向ストレッチなめらか素材が肌にとけこむような「肌ピタッバック」。
中でも感動したのが、脇下の絶妙な位置に配されている「ハグシート」の存在です。体温でやわらかくなりフィットする素材を使用しており、時間とともに自然となじんでくれるのですね。たしかに、からだと一体になったような不思議な親密感が生まれ、長時間つけても圧迫感がありません。このハグシートのここちよさが、バスト脇の「リフティングレース」の抱き寄せ感と、背中側の「肌ピタッバック」のとけこみ感と相まって、包み込まれるような幸せな気持ちにしてくれるのでしょう。
ブラジャーの歴史は、女性たちが支えてきた。
さて今回は、同じく6月に刊行された『ブラジャーで天下をとった男 ワコール創業者 塚本幸一』をもとに、ブラの歴史にも迫ってみましょう。この本には、戦争から奇跡的に復員した一人の男性が始めたビジネスが、世界に冠たる下着メーカーへと成長するまでが描かれています。彼には先見の明がありました。ひとつは、日本ではまだ未成熟だった女性下着の市場の可能性にいち早く気づいたこと。もうひとつは、敗戦体験によりビジネスという戦争も男だけでは勝てないとわかっていたこと―。
「ワコールは日本企業としては珍しく、女性が支えてきた会社と言っていい。その歴史の中で何人もの“伝説の女傑”が現れる」とは著者の言葉です。紹介される「女傑」は、販売イベントで獅子奮迅の働きをした内田美代さん(1949年入社)、生産体制の強化に貢献した渡辺あさ野さん(1951年入社)、ワコール生え抜きデザイナー第1号の下田満智子さん(1955年入社)など。創業者が女性を積極的に起用し、「女性のために女性とともに」奮闘する様子が活き活きと伝わってくるのです。
ワコール初のオリジナルブラジャーが製作されたのは1950年のことでした。新商品第1号であることから「101号」と命名され、脇布の長さをSMLの3段階にして売り出されたそう。本書に掲載されている1951年頃のブラの写真は、モデルさんが当時流行した真珠らしきネックレスとともにブラを着用。「よそゆき」のイメージで上品に撮影されているのがいいですね。当初からワコールのブラは、女性のカラダとこころをやさしく抱きしめるような存在だったのかなと想像がふくらみます。
ハグとは、愛情をもって両腕で抱きしめること。大切な人の背中にまわされる両腕は、ブラのようでもあります。「ハグするブラ」は、そんなかけがえのない愛情表現を形にしたものといえるでしょう。ハグされているようなここちよさと安心感は自己肯定感につながり、今日も胸を張って美しく生きていこうと思えるのです。そこには「真の平和とは、女性の美しくありたいと願う気持ちが自然と叶えられる社会であるはずだ」と確信していたという創業者の精神が息づいているのではないでしょうか。