定例研究会レポート

女性の「からだ」と「こころ」を科学する 乳房文化研究会 トップへ

人体の美しさを考えよう
--芸術学から・動物学から
2010年1月23日

1月23日(土)ワコール本社ビル2階会議室にて、73名の方にご参加いただき開催いたしました。

■問題提起 
からだの美のバランスを求めて
オーガナイザー 平田多津子
事務局長 + ㈱ワコール人間科学研究所 主任研究員

■芸術の中の裸体美――西洋から日本へ
高階絵里加
京都大学人文科学研究所 准教授

■綺麗な動物として人間を見る――容姿の進化論
蔵 琢也
早稲田意志決定研究所 客員研究員 + 進化心理学者

■パネルディスカッション
オーガナイザー 平田多津子
パネリスト 講師


■講演1・「芸術の中の裸体美」 ―西洋から日本へ― 高階 絵里加 先生 
古代ギリシア彫刻やルネッサンス絵画にみられるように、西洋においては理想的な身体イメージの伝統があり、数多くの裸体が芸術に表現されてきました。十九世紀後半には国を開いた日本にも裸体の美学が伝えられますが、西洋とは異なる身体美の感覚を持つ 日本において、それはどのように受け止められたのでしょうか。

■講演2・「綺麗な動物として人間を見る」 -容姿の進化論- 蔵 琢也 先生
世界には孔雀のように綺麗な、または奇妙で風変わりな外見を持つ生物が多い。その意味を進化論の視点から紹介する。これは人間にも当てはまるので、とりわけ女性の美しさの意味するところを生物学から考えてみたい。
 さらに、これは漫画や映画などの大衆文化から美観や化粧法など、日本や諸外国の文化にも大きな影響を与えている。それを本能的な観点から読み解いていきたい。

共立女子大学 教授
間壁 治子 (乳房文化研究会会員)

毎年、興味あるテーマのご案内を頂いても、なかなか日程が合わず、残念な思いでおりましたが、久しぶりに乳房文化研究会に参加させて頂きました。
今回は、高階先生の「芸術の中の裸体美」-西洋から日本へ-、
蔵先生の「綺麗な動物として人間を見る」-容姿の進化論-共に、人の形態と衣服の関わりを研究のメインテーマにしている私にとっては大変興味深い講演でした。
明治時代、先進国の西洋を規範として文明を取り入れようとした日本、芸術の面では渡欧による模写から出発し、西洋画法の吸収と裸婦という日本では新たなモチーフへの挑戦の歴史が良く理解できました。
 長い髪や、美しい衣服、衣からのぞく小さな手・足等で女性の美しさを表現していた日本人にとって裸婦は見てはならないもの見せてはいけないものの代表だった時代を考えれば明治時代の裸婦論争は当然と 言えましょう。
 一方で、人体と衣の関係は、衣は裸体以上に身体表現の役割を果たすことも事実であると思います。
 ギリシャ時代は裸体の上に衣服(濡れ衣)をおくことにより、裸より魅力的な人体の表現になっているし、岡田三郎助「あやめの衣」は、露出された背面の項から肩の表現により、衣で被われた他の身体部位を想像させるという裸体より強いインパクトを与える表現手法と言えましょう。
 一方、蔵先生の「綺麗な動物として人間を見る」は、種の持つ本来の形に変化をつける、色を変えるの二つの手法により♂♀の反応を捉えている。講演を伺いながら、突然変異に対する集団の反応を思い起こしておりました。
 第4章「人間の極端な姿」、マンガ・アニメ・ゲーム等に表現されるキャラクターが現実の人間とは異なるという指摘は、次回の「サブカルチャーと乳房(仮)」に繋がる問題と言えましょう。
最後に、いつもながら定例研究会のスケジュールの立て方は、講演者と参加者の交流時間があり、大変良い時間配分だったと思います。

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