定例研究会レポート

女性の「からだ」と「こころ」を科学する 乳房文化研究会 トップへ

『乳がんは予測できる?』
2014年10月25日 (土)

『乳がんは予測できる?』

■乳がんと遺伝子
 田代 眞一 会長 (病態科学研究所 所長)
■ジャーナリストがみた、乳房の切除
 柴田菜々子 先生 (朝日新聞西部報道センター 社会部 記者)
■遺伝と遺伝カウンセリング
 荒井 優気 先生 (理化学研究所/先端医療センター病院/遺伝カウンセラー)

■パネルディスカッション
・コーディネータ :田代眞一 会長
・パネリスト:柴田先生 荒井先生


遺伝子とは何か、何が予測できるのか? 最新の遺伝子検査の実情や課題を正しく理解することを目的に研究会を開催しました。
まず、当研究会の会長である病態科学研究所長の田代眞一先生から「乳がんと遺伝子」というタイトルで問題提起をしていただきました。遺伝性乳がんのこと、DNAのこと、BRCAという遺伝子とそのトラブルのことを分子生物学の視点から話していただた上で、今、大きな話題になっているが、遺伝子が関係していることがはっきりしているのは乳がんのうち、せいぜい10%程度であり、ほとんどのがんについては遺伝的な背景というのはよくわかっていないこと、今一斉に遺伝子検査が商売になりつつあることの問題提議がありました。

次に、朝日新聞社の柴田菜々子先生から予防的切除をめぐる社会的な関心の高さや取材現場で乳がん患者の方々から聞いたお話を説明いただきました。アンジェリーナ・ジョリーの予防的切除の記事が生活面でなく社会面に登場したことや乳がん関係で見出しが3段にわたって書かれたことは業界では異例であり、ニュースを扱う側にも、それを受ける側にも「おっぱい」というものに関する本能的な反応関心があるのではないか、アンジーの告白について乳腺外科医の方にお話を聞いたときに遺伝性乳がんというのはせいぜい1割程度であり、乳がん検診・早期発見をまずは大切にしてほしいということ、アンジーの告白はニュースとして消費されてしまう可能性があり、そうならないために、こつこつと取材をし、定期的に見ていくことが大事ということが印象に残りました。

荒井優気先生からは、遺伝子カウンセリングの現場について話をしていただきました。「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」の方ががんになりやすい仕組みや遺伝子カウセンリングの事例、遺伝性がんは全体の中でも10%以下で多くないこと、がんに対する早期発見・早期治療が大事であることを説明いただきました。また、遺伝カウンセリングの役割は自分の価値観と向き合う場所を提供することであり、情報提供における医療提供者側のスタンスとして「Shared Decision Marking」=何が必要な情報なのかを一緒に選んで選択のプロセスを一緒に歩むことを大事にされていることをお話されました。
パネルディスカッションでは、検査費用のこと、日本と米国の違い、カウセリングの後に遺伝子検査される人の割合や実際にご自身の家系の事例など具体的な質問が出ました。

最後に会長から今日は結論が出るような話ではなく、今わかっている事実をもとにして皆さんがどう考えるかという話であることを強調されて閉会いたしました。参加された方から、今回のテーマと内容に少しずれを感じたという声もいただきましたが、一人一人がこのテーマにどのように向き合うのかを考える機会になったのではないかと思います。       

(研究会事務局)

▲ 上に戻る