魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

24 Jul, 2013

セクシーの反乱

世の中がドール化している。

「水辺のファッション 1900年代~1970年代」<br>2013年8月16日までKCIギャラリーで開催中
「水辺のファッション 1900年代~1970年代」
2013年8月16日までKCIギャラリーで開催中

 京都服飾文化研究財団に付属しているKCIギャラリーでは、今、とても夏らしい展覧会「水辺のファッション1900年代〜1970年代」が開かれています。近年多くの収蔵品が加わった1950〜1970年代の水着の展示が中心だそう。会場写真を眺めるだけで、ジャン=リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」(1959)やミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」(1966)など、お洒落なファッション映画を思わせる空気感が伝わってきます。
 この時代のモードは古びるどころか、年々新しく見えてくるから不思議。もちろん現代のデザイナーが当時のエッセンスを取り入れているわけですが、ドール系ファッションは明らかにこの流れでしょう。最近はナマ足からシアータイツへ、眉メイクからアイラインへ、ナチュラルリップから赤リップへと流行が変わり、黒目を大きく見せるカラコンを就活で使う人も。ピアスやタトゥーなどの肉体改造ではなく、着せ替え人形的な変身が主流なんですね。

 男性はどうかというと、若い世代は夏でもスーツや長袖シャツを着る人が増加中。クールビズはおじさん世代のイメージが強いため、敬遠されているのだとか。いわれてみれば、成熟世代が派手にカジュアル化していたり野性的だったりするため、反動として、お洒落な若い世代がこういうことになっているのかもしれません。汗をかかないツルツルの肌で涼しげにスーツを着こなすアンドロイドのような男の子なんて、まさにドールです。
 ここで気になるのが、ドール系は果たしてセクシーであるかということ。キラキラ可愛い、あるいは、すべすべクールなドール系ファッションは、ウェットでミステリアスなセクシー系からは遠く、下手をすると制服のように没個性になってしまいがち。そんなロボット・ドールに人間性や色香をプラスする魔法のアイテムが、社会的な見た目ファッションから隠蔽され、個人的な領域に属する「下着」ではないかと思うのです。

セクシーは個性である。

IMPLICITE(アンプリスィット)2013秋冬コレクションより

 他人の目を気にせず、自分の好みを追求できる下着って、なんて自由なんでしょう。セルフイメージとのギャップだって、楽しめればいいのです。ドレスコードが気になる面接のような場面でも、清楚なスーツの下に、写真のようなクリスティーズのセクシーランジェリーをまとえば、気分が上がることは間違いありません。アピールという点でも、カラコンで目ヂカラをアップするより、内側からパッションがにじみ出たほうが効果的かも......。
 インポートランジェリーの秋冬コレクションの中では、アンプリスィットのブルーのオールインワンもおすすめ。レトロな水着のようなデザインは、ドール系ファッションとの親和性も高いです。布がたっぷりあるように見えるものの、バストやウエスト部分の露出バランスはかなり高度。露出度が高いほどセクシーということではなく、どこを見せ、どこを隠すかが重要な問題であることを教えてくれます。

CHRISTIES(クリスティーズ)2013秋冬コレクションより

 グラマラスとロックの出会いをテーマにしたシモーヌ・ペレールのブラとショーツは、恋人を驚かせたい時に。タトゥーのような刺繍は、ベースに肌色のチュールを使っていることを感じさせないリアルさです。フロントホックのおかげでシンプルになったバックスタイルの美しさといったら! タトゥーに興味があっても実際には入れることができない人が、ランジェリーで気軽にその魅力を取り入れることができるのは嬉しいですね。
 タトゥーマニアで知られる女優のアンジェリーナ・ジョリーは、長男との養子縁組後に「死」という漢字のタトゥーを、2番目の夫との離婚後には彼の名前のタトゥーを、レーザーで除去したといいます。タトゥーからタトゥーランジェリーへ、ピアスからイヤーカフへという今年の流行を、私たちは、リスクのない変身術として活用したいものですね。ドールな自分は着せ替え自在。しびれるようなセクシーを、思いっ切り楽しんでしまいましょう。

■SIMONE PERELE(シモーヌ・ペレール):https://www.wacoal.jp/import/perele/
■京都服飾文化研究財団(KCI):https://www.kci.or.jp/

Related Story

着る、見る、学ぶ、クールビューティな夏へ。

着る、見る、学ぶ、クールビューティな夏へ。

Yue(ユエ)でかなえる真夏のクールビュ…
  • CULTURE
  • KCI
  • LIFE STYLE
  • Yue
  • ワコールスタディホール京都
  • 下着
  • 展覧会
ブラウン系という選択肢をからだに。

ブラウン系という選択肢を
からだに。

砂漠のリゾートを思わせるハンロのコレクシ…
  • CULTURE
  • HANRO
  • 展覧会