感じのいいスタッフとは?

今年7月、人気TV番組の司会者であり資産家として知られるアフリカ系アメリカ人、オプラ・ウィンフリーさんがスイスのセレクトショップを訪れた時のこと。彼女が「あの棚のバッグを見たいのですが」と3万8千ドル(約370万円)のトム・フォードのクロコバッグを指さしたところ、イタリア人ショップスタッフは「こちらではどうですか。あちらは高価すぎるのでお求めになれないと思います」と別のバッグをすすめたそうです。
この件について多くのメディアが「推定28億ドルの資産を持つビリオネラに、スイスの店が人種差別」などと報道。お店側の言い分はともかく、彼女が気分を害したのは確かなようです。この事件は、ショップスタッフとのやりとりひとつで、いちいち気分が上下してしまう「客側の現実」を私たちに突きつけます。ショッピングを楽しむ最も重要なポイントは、お店やスタッフとの「いい関係」なのだなと結論づけざるを得ません。
私がかつて、このスタッフはどうかなあと思ったのは、商品を見てまわっていると、少しあとからせかせかと乱れた商品をたたんでまわる人。ほかにお客様がいないのに整理ばかりしていたので、これ以上見るなと言われているように感じてしまいました。逆に、いいなと思うお店では、スタッフが次々と商品を広げて見せてくれるので店内が散らかります。片づけるのはあとでいいという感じで、接客に集中してくれるのです。
ショップスタッフには、目の前の相手が求めるものを瞬時に見極めてほしいですね。とくにランジェリーはからだに近いものですから、ランジェリーショップのスタッフは、客観的な見極めのセンスのほか生理的感覚が一致している人が理想。さらにプロの知識が得られるなら「彼女から買いたい」「彼女がそう言うなら」と思うようになる。買い物の予定がなくても、彼女のおすすめを見たいという動機でお店に通いたくなってきます。
トレフルのスローな誘惑。

「いつも見るだけのお店で、ようやく買い物をした」という経験はありませんか。それはたぶん、いいお店。買わない人にも見ることを楽しませてくれたのだし、商品にも魅力があるのでしょう。ショッピングは恋愛のようなものですから、お店や商品に吸い寄せられスタッフの対応もよければ、むしろ衝動買いを控え、またゆっくり見に来たいと思うはず。そうして直感(衝動買い)が恋愛(目的買い)に発展していくのではないでしょうか。
ワコールのショップを見ていて、そんなふうに吸い寄せられるブランドのひとつがトレフルです。店頭のセール品を眺めていたのに、気がつくといつの間にかお店の奥に分け入り、光り輝く新作のディスプレイを見つめていたり......。高貴なランジェリーは美術品を眺めるみたいに鑑賞したくなるものです。一目惚れしたアイテムと、しばし対峙する空気をつくってくれる(許してくれる)お店がいいなと思います。

というわけで今回は、見れば見るほど魅力が増すトレフルのクチュール感あふれるコレクションをご紹介しましょう。純白のブラ、そしてイブニングドレスのようなスリップにご注目ください。チュールエンブロイダリーレースの流れるようなプリーツのテクスチャーは、幼いころに憧れていたドレスのイメージそのもの。スワロフスキー・クリスタルが輝くコサージュ風アップリケもロマンチックで、いつまでも見飽きることがありません。
これらのアイテムには展示会で出会って一目惚れしましたが、発売予定の10月、どんなふうにお店でディスプレイされるのかなと期待してしまいます。ワコールのショップスタッフなら「こちらはとてもいいものなので、どうぞじっくり見てくださいね」と言ってくれることでしょう。恋愛もランジェリーも「焦ってお手軽なもの」に出会うより「少し時間をかけて上質なもの」に出会うほうが、はるかに感動がありますから。