魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

23 Oct, 2013

したたかな下着と私

多面的な魅力で翻弄するシモーヌ・ペレール。

SIMONE PERELE(シモーヌ・ペレール)2014春夏コレクション「無邪気さの策略」より<br>写真左:薄バラ色に輝くアシンメトリーなコレクション(無垢)<br>写真右:鳩の羽をモチーフにしたサンガレン刺繍のボディスーツ(傲慢)
SIMONE PERELE(シモーヌ・ペレール)2014春夏コレクション「無邪気さの策略」より
写真左:薄バラ色に輝くアシンメトリーなコレクション(無垢)
写真右:鳩の羽をモチーフにしたサンガレン刺繍のボディスーツ(傲慢)

 秋の深まりとともに旬なデザイナーのお店が次々と出現しています。10月5日にはアレキサンダー・ワンの旗艦店が南青山に誕生。黒いトランプやコースターなど本人の趣味を反映したアイテムも充実し、ファンにはたまりません。10月11日には、ルイ・ヴィトンを退任したマーク・ジェイコブスが本への情熱を注いだ店「BOOKMARC」が原宿に登場。口紅型ボールペンやウィッシュボーンチェーンなどを、私も思わず衝動買いしてしまいました。
 デザイナーが自らのライフスタイルを発信することで、ブランドの思いや世界観を多面的に伝えていく。意外な一面を知ることで、新たなファンも増えることでしょう。憧れの存在なのに、お茶目な部分もあって笑わせてくれる。そんな男や女やブランドには、いつだって抗いがたい求心力がありますから!(ちなみにアレキサンダー・ワンには本人にそっくりなスタッフが常駐していますが、これも戦略的なサービスだと思う)

 ランジェリーの世界で、デザイナーの思想が多面的な魅力につながっているブランドといえば「女性は魅力的であるか、快適であるかのどちらかを選ぶ必要はない」という言葉で知られるシモーヌ・ペレールでしょう。048「セクシーの反乱」でご紹介した「グラマラスとロックの出会い」も衝撃でしたが、2014年春夏のテーマは「無邪気さの策略」。女性に内在する無垢と傲慢、その両極を露わにするコレクションなのです。
 「無垢」の代表は、薄バラ色に輝くブラ。アシンメトリーなひねりを加え、優雅なドレープと60年代風の繊細な刺繍でピュアな官能美を生み出しました。ソングサスペンダーベルトを合わせれば最強ですね。「傲慢」の代表は、白い鳩の羽をモチーフに、したたかな高貴さを表現したサンガレン刺繍のボディスーツ。黒い羽バージョンもあり、より大胆不敵なパッションで人生を思い通りにしたいと考える方にうってつけです。

私のランジェリー全盛期はいつ?

 春夏コレクションを先取りする楽しみの一方で、過去のコレクションのアーカイブにも新鮮な好奇心をそそられます。西武渋谷店のインナーウエア売場では、10月21日まで「シモーヌ・ペレール回顧展」と題し、1950年代のアイテムと広告を中心とした展示が行われていました。新入荷商品のすぐ近くで半世紀以上前のお宝を眺められるなんて面白すぎ。販売の場におけるこのような企画展には意味があると思います。
 1950年代はナイロンが普及しランジェリーが変化した時代。シモーヌ・ペレールは心地よさ、ファッション性、アバンギャルドなどの観点から注目され、フレンチランジェリーの代名詞となったのです。歴史あるリバーレースにナイロンを組み合わせたコルセットとペチコートのセットや、小さなバストのためのドロップ型ブラ、透け感と心地よさを併せもつトライアングルブラなど、今につながる思想の原形を見ることができました。

 ブランドの得意技がわかってくると、シーズンごとの新作がいっそう待ち遠しくなってきます。ワコールにはたくさんのブランドがありますが、個々の歴史を探求することで、独自の世界を垣間見ることができる。どんな時代背景で生まれ、どう変化してきたのかが、進化する女性像とともに浮かび上がってくるというわけです。1枚のブラを選ぶ瞬間にも、歴史の中にいる自分を感じることができるでしょう。
 そして時には、自分の個人史をひもといてみたいもの。「モノトーンのブラとショーツの時代が長く続いたが、ある日スリップとガーターベルトに目覚めてセクシー路線に。その後カラフルな時代が到来し、今は多彩なレースにこだわっている」などなど。成功や失敗のアーカイブをおさらいすることで、明日からのランジェリー戦略が、よりしたたかで意外性に満ちたものになることは間違いありません。

■SIMONE PERELE(シモーヌ・ペレール):https://www.wacoal.jp/import/perele/

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