魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

21 Apr, 2014

神聖にして過激!パリのランジェリー

爛熟期をむかえたランジェリー。

シモーヌ・ペレール 2014秋冬コレクションより
シモーヌ・ペレール 2014秋冬コレクションより

 パリ市内で毎年1月に開催される「パリ国際ランジェリー展」について、毎回現地へ飛び、取材を続けているジャーナリストの武田尚子さんのお話を伺いました。今年は25か国156社、約550のブランドが出展。「ランジェリーは爛熟期に入り、商品も売場も立体的・複合的に変化している」というのが武田さんの見解でした。世界の下着のトレンドを左右する本場の空気を、肌で体感している方のコメントには説得力があります。
 爛熟とは、果実がくずれそうなほど熟し、衰えの兆しさえ含んだ状態を意味します。武田さんによると「別の場所に実が落ちて芽を出すような世代的変化」もちらほら。大きな変化の直前の、最もわくわくする時期なのかもしれませんね。日本からの来場者数は世界8位(前年比106%)。ネットで情報を得られる環境にあっても、現地に出向く人が増えているのです。何かが生まれる瞬間を目撃したいという思いが高まっているのでしょう。

 会場のテーマカラーは、南仏生まれのアーティスト、イヴ・クラインが1957年に特許を取得した「クライン・ブルー」だったそうです。ニースの空を愛したイヴ・クラインは、跳躍のパフォーマンスを何度もおこなうほど、空を飛ぶことを夢みていました。クライン・ブルーは、単色を使った絵画作品にこだわっていた彼がたどり着いた、宇宙を思わせる深いブルーです。パリ国際ランジェリー展はなぜこの色をテーマに選んだのか?
 秘密は代表作の「人体測定」にありそうです。正装したイヴ・クラインは、クライン・ブルーを体に塗ったヌードモデルをキャンバスに押し当てるなどして絵画を公開制作。観客にも正装を求めたといいます。それは神聖な儀式であり、過激なパフォーマンスでもあったのです。ランジェリーも同様ではないでしょうか。ボディに塗られ、神聖と過激の両極を体現したクライン・ブルーは、パリのランジェリーの精神を象徴しているのだと思いました。

シモーヌ・ペレール 2014秋冬コレクションより

停滞しないセクシーを目指そう。

 パリ国際ランジェリー展では、地元を代表するブランド、シモーヌ・ペレールが話題を集めたようです。私は後日、東京の展示会で見ましたが、歴史あるブランドでありながら、フレッシュかつモダンに進化した印象を受けました。秋冬のテーマは「Awaken your senses(感覚を呼び覚ませ)」。カタログの撮影を手掛けたのはポール・マッカートニーを父に、ステラ・マッカートニーを妹にもつ写真家のメアリー・マッカートニーです。
 コレクションの写真は、撮影現場のライブなメイキングシーン。緻密な刺繍、ゆるやかなプリーツ、優美なスイスドットの美しいディテールが、バックステージをドラマチックに盛り上げます。メインビジュアルのコピーには「神秘性をキープしインスピレーションを得ること」「未知の世界を切り開き激しく生きること」など、女性の刺激的な多面性にエールを送る「セクシュアリティの掟」が。まさにパリらしいブランド精神といえるでしょう。

STUDIO FIVE 2014 SPRING&SUMMER COLLECTIONより
シモーヌ・ペレール 2014秋冬コレクションより

 ファッションの世界には、同じ服でも時代によって評価が変わることを示した『レイヴァーの法則』(1937)があります。「お洒落な」流行の服も、1年早ければ「過激」、5年早ければ「恥知らず」と言われる。1年後には「やぼったく」なり、10年後は「醜く」、20年後は「滑稽」になる。だけど30年後には「面白く」なり、50年後には「味」が生まれ、70年後は「魅力的」、100年後は「ロマンチック」、150年後は「美しい」と評価されるのだと。
 最近、80年代後半のバブリーなファッションが面白がられているのは、流行の30年後に近づいているからでしょうか。世の中のトレンドは刻々と変化し、私たちはその動きから目を離すことができません。目を離せば停滞するばかりか、退化する危険性があるからです。だから今年も「お洒落な」旬のセクシーランジェリーを、何としても身につけたい。 万が一「恥知らず」と言われたら「5年早かったかしら?」と得意げに言えばいい。

■シモーヌ・ペレール:https://www.wacoal.jp/import/perele/

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