裸にまとう空気の研究

体温を感じる、ゆるめのクラシカル。

　クリスマスのイルミネーションも始まり、ウインドショッピングが楽しい季節。この時期は、限定のお得なアイテムやフリーのイベントが多いのも嬉しいですね。グランドハイアット東京では、11/26から12/25までロビーのツリー脇で、ピアノの生演奏やホットワインの無料サービス、チャリティと連動したフォトサービスなどを実施。喜びを分かち合う｢Share the Joy｣というテーマワードが素敵だなと思いました。
　今年の冬は、ファッション的にもきらびやかというよりは、ゆるめのクラシカルモードが主流。50年代の女優を思わせる長めのスカートやケープも目立ち、ふんわりと温かい空気をまといたい気分になってきます。

　写真はトレフルとサルートのクリスマスコレクション。ランジェリーの着こなしにも空気感が重要なのだと気づかされます。逆毛を立ててボリュームを出したアップスタイル、そして、まわりの空気を瞬時に変えてしまいそうな愛らしい存在感は、まさに50年代にブレイクした女優ブリジット・バルドーのよう。
　これらのイメージフォトを見て、私は、イタリアの作家モラヴィア原作の2つの映画を思い出しました。貧しくも美しい女が傷を負いながら男性遍歴を重ねる「ローマの女」(1954)と、ブリジッド・バルドーが惜しげもなくコケティッシュな裸体をさらした「軽蔑」（1963）。どちらの映画も女優の表情やファッションを見ているだけで楽しく、時を経ても色あせないお洒落のヒントがいっぱいです。

セクシーとは、空気である。

　名作映画に学ぶお洒落の哲学。それは、セクシーさがボディの造形のみから生まれるわけではないということ。少なくともヘア、メイク、下着は、裸にまとう最後の装飾として重要です。ボリューミーな髪、シャープで強い目元とぽってりと厚めに仕上げた唇、そして、フェイスパウダーをふわっとのせた肌。下着は、クラシカルなディテールを引き立てる自然な血色のカラーを選ぶのがポイントです。
　「ローマの女」はモノクロ映画ですが、美しい女が大きなパフでデコルテに粉をはたくシーンや、高価な化粧品を盗むシーンは忘れられません。思わず盗みたくなる化粧品って最近はなかなかありませんが、今年のジバンシイのクリスマス限定パウダーは久々の本格クラシカル。映画に登場するお宝アイテムのような吸引力を秘めています。

　一方「軽蔑」のブリジット・バルドーの魅力は、気ままに生きるネコのようなしなやかなさ。現在の彼女は動物愛護運動家として知られていますが、この秋ランセルとコラボレーションしたバッグも、動物由来の素材を一切使っていないそう。上流セクシーとは、毛皮や皮革を使わずに動物的な空気をまとうことなのかもしれません。
　空気感を演出する最終兵器は、やはり香水でしょう。香りは本当に、周囲の空気を変えてしまうのですから。温かく甘く、ほのかに動物香を含んだクラシカルな香水の使い方は難しいですが、クリスマスのような特別な機会に、ぜひ研究してみたいもの。つける人や時間、環境によって思いがけない変化が現れる香水をどんな下着とコーディネートするべきか？　想像するだけで悩ましく、ドラマチックではありませんか。