人を元気にしてくれるもの。
大震災を経験した日本は、その日を境に風景が一変してしまったように思われます。被災地の一日も早い救済と復興、そして原発の被害が最小限であることを祈りつつ、こんな時こそ、私たちをいつも元気づけてくれるモードや下着について書いてみたいと思います。光ある方向を見つめ、楽しいことや美しいものを愛する気持ちが、さまざまな力を生み出すことを信じて。
震災前、ジョルジオ アルマーニ ジャパンの副社長、フランチェスコ・フォルミコーニ氏に話を伺う機会がありました。彼は日本人についてこう言っていました。「以前は時間を節約するためにお金を使っていたが、今はお金を蓄えるために時間を使うようになった」と。具体的に翻訳するなら「以前は手間をかけたラグジュアリーなものをぱっと購入していたが、不況になり、安売り店などに長時間並ぶようになった」ということのようでした。
これを聞いて、私は寂しいなと思いました。同じような顔の人々が、画一的な品物を次々に買っていくシュールな光景が漠然と思い浮かんだからです。人はそれぞれ異なる容姿と嗜好を持ち、それぞれの役割を果たすために生まれてくるのに、大量につくられた同じ品で、すべての人が満足できるはずがないじゃないか、と。
心とからだにフィットするモードとは、下着とは、どんなものでしょう。かけがえのない一人ひとりの力を少しずつ奪っていくような味気ないものではなく、新しい力を注ぎ込んでくれる生気あふれるもの。そういうものを求めていかないと、日本人はもったいないよ。フェルミコーニ氏の言葉は、そんなアドバイスのように思えてきたのです。
わたしの楽園はどこ?
WACOAL DIAの2011春夏コレクションは、多彩な草花や木々が輝く楽園の丘をイメージした「いろどりの陽だまり」がテーマでした。光や水の力が細部までみずみずしくいきわたっているようなドレスやランジェリーを、展示会でたっぷり拝見。内側からの輝きを充電してくれそうなポジティブな空気が印象に残りました。
摘みたての葉をそのままつけたといった感じのキャミソールやベルト、ペチコートはプリミティブ。女性を美しく見せるルーツが自然をダイレクトに身につけることだったことを思い出させてくれます。サニーオレンジ、紫、白、黒を組み合わせた水玉のシリーズは、鮮やかなコントラストがまぶしく、太陽の季節が待ち遠しくなること間違いありません。
昼と夜とで異なる楽園を表現しているという色のバリエーションにも興味津々。「緑と赤、どっちが似合うかな」ではなく「昼の楽園と夜の楽園、どっちのイメージが似合うかな」と考えたほうが、はるかに世界は広がりそうです。このような想像力を研ぎ澄ませることで、女性はいつだって美しい力をふりまき、周囲によい影響をもたらすことができるのではないでしょうか。
コレクションを眺めていて、自分の楽園を見つけてみたいという思いにかられました。最もリラックスできて、自分らしく過ごせる約束の地を。さて、あなたは昼の光が似合う人でしょうか、夜の光が似合う人でしょうか。花咲く草原と針葉樹の森では、どちらがあなたを引き立ててくれるでしょうか。ファッションとは、自分が見つけた楽園を日々、自分のからだにまとうことなのですね。そう考えると、その可能性は計り知れません。