チュールのスカートが流行中。
最近、チュチュのようなチュール素材のスカートが流行しています。ウエストがゴムのものが多く、ラクに着られて長さも調整しやすく、可愛い点が人気なのでしょう。ハードな服やTシャツ、セーターにもすっきりと合わせることができ、タイツとも相性がいいため、冬もカジュアルな重ね着スタイルとして楽しんでいる人が目につきます。
バレエでいえば、本番のステージで着る衣装ではなく、レオタードを中心にその日の気分で組みあわせる「練習着」のイメージですね。チュールのペチコートをアウターのスカートとして提案した元祖といえばWACOAL DIAですが、3年前にD&Gが発表したチュールのロングスカートも、流行を後押ししたのではないかと思われます。
WACOAL DIAは、2003年のデビューコレクションから、バレエのシンボルのひとつであるチュチュが放つ特別な美しさを大切にしています。昨年グランドオープンした銀座店はバレエのレッスンスタジオのようですし、今年の春夏コレクションでは「ドガのまなざし」をテーマに、バレエを新たな視点で再構築してしまいました。オリジナルブランドとしての、ピュアな深化のベクトルがかっこいいなと思います。
トータルクリエイターの神尾敦子さんはこう言っています。「ドガのまなざしの中には、稽古にのぞむ若き踊り子たちの可憐な動き、光をはらんで揺れるチュチュ、そして、それらを包み込む、どこまでも透明な空気がありました。私は、この真剣な緊張感と可憐さをずっと忘れず美しくあってほしい、というドガの願いに思いを馳せ、そしてその視点に共感してくださる女性を思いながら、今シーズンのWACOAL DIAを創り上げました」
イタリア美女にない日本人の魅力。
エドガー・ドガは、フランス印象派の画家。バレエをテーマにした作品が多く、オペラ座の会員として、一般には立ち入れない場所からバレリーナの舞台裏や練習風景をたくさん描いています。彫刻作品としては、生前に唯一発表された「14歳の小さな踊り子」が有名ですが、ろうでつくられた約1mのこの彫刻が1881年、パリで展示された時は大騒ぎになりました。表現の手法が、当時の常識では考えられない斬新なものだったからです。
痩せた少女が片足を前に出し、背をそらすリアルな姿態。しかもその彫刻にはコルセットとチュチュが着せられ、頭部には本物の髪がはりつけられていたのです。後年、この彫刻のブロンズ版がつくられましたが、3年前、ロンドンのオークションで約17億円で落札され、話題になりました。
WACOAL DIAの今回のコレクションでまず注目したいのは、この「14歳の小さな踊り子」の練習着のイメージから生まれたアイテムです。ウエスト部分のギャザーなどは、後ろから見るとはっとするほど愛らしく、舞台裏からしか見えない踊り子の気持ちが表現されているような気がしました。実際の彫刻も、後ろから見ると髪にリボンをつけ、後ろで手を組むなどドキッとするような可憐な表情を秘めているのです。
チュール素材を使ったものでは、スズランのシリーズが美しく、そのまま肩にかけられる形にデザインされたショールもおすすめ。印象派の絵画に登場する女性を思わせるふくよかな胸になれそうなブラや、スペシャルアイテムとしてのコートも登場し、春への期待を高めます。身体も頭もやわらかくして、心躍る季節を満喫したいですね。