魅惑のランジェリーエッセイ 上流下着のつどい Upper Inner Salon|ワコール

14 Aug, 2012

ファッションという事件

世界に衝撃を与えた日本のデザイン。

「Future Beauty 日本ファッションの未来性」展覧会ポスター
「Future Beauty 日本ファッションの未来性」展覧会ポスター

 ロンドンオリンピックの開会式、見ましたか? ファッションの観点からオリンピックの楽しみは何かと考えると、毎回、各競技のユニフォーム以上に世界の注目を集めるのが公式ウエアの存在ではないでしょうか。今回の開会式で日本の選手団が着用していたのは、髙島屋が手がけた赤のジャケットと白のパンツ。特定のデザイナーの作品ではなかったようですが、青森県の2つの会社が一人ひとりの体型にあわせて縫製したエピソードなどを聞くと、ロンドンオリンピックの公式ウエアはメイド・イン・ジャパン、とりわけ東北のものづくりにこだわった震災後ならではの表現だったのではないかと理解するに至りました。次のリオデジャネイロオリンピックでは思い切った衣替えも期待できそうです。

 ロンドンオリンピックとほぼ同時に東京都現代美術館でスタートした「Future Beautyファッションの未来性」展は、世界における日本のファッションの位置づけを考える上で、とてもタイムリーな企画だと思います。既にロンドンとミュンヘンを巡回したそうで、今回の展示はさらにヴァージョンアップした内容。日本発のファッションの創造性を読み解き、広々とした会場で、その歴史と未来に思いを馳せることができるのです。
 欧米ファッションに「黒いぼろ」の衝撃をもたらした川久保玲と山本耀司。キモノの平面性を知的な現代服に昇華させた三宅一生。あるいは既成の素材に依存せず、オリジナルのプリントやテキスタイルの開発にこだわるミントデザインズ、ミナ ペルホネン、津村耕佑ら。建築家の藤本壮介による会場構成は、庭園をめぐりながらさまざまな年代に植えられた樹木(=エポックメーキングな服)を鑑賞するような楽しさがありました。

ミントデザインズ 2012年 「アーカイブスドレス」 ©mintdesigns

みせるファッション、まもるファッション。

 最後のセクションには、日本のファッションのDNAを継承しつつ、独自の道を歩む若手デザイナーたちの作品が展示されています。アニメなどサブカルチャーから引用された服、架空の職業や町をテーマにした服、建築的な視点から理想の空間を構築する服など、多くの作品に現実とファンタジーの世界を行き来する物語がひそんでいました。表現のスタイルとしては、派手なパフォーマンスでアピールするブランドと、地道で職人的なブランドに二極化していたような気がします。
 いずれにしても、若い世代が発信するファッションは意外にもメッセージ性が強く、旧世代とは異なる視点に驚かされます。震災後の日本に新たに生まれたハングリー精神や反骨精神も加わって、かつて川久保玲と山本耀司が与えたような衝撃を再び世界に与えることができるのか、興味深く見守りたいと思います。

ミナ ペルホネン 2005年 「forest parade」 ©minä perhonen

 外向性と内向性は、インターネット時代のファッションを語る上で重要なベクトルといえるでしょう。服にひそむ物語を誰にどう伝え、コミュニケーションしていくのか。一例をあげれば、ロンドンオリンピックの初戦でなでしこジャパンと対戦したカナダチームはピンクのヘアバンドをしていましたが、これは、途上国の女の子たちの支援に取組む国際NGOキャンペーンのシンボルなのだそう。世界へのPRと個人的な共感の間に位置するアクセサリーなのですね。
 ランジェリーのことを考えるとき、この2つのベクトルの意味はより鮮やかになってきます。ランジェリーの魅力には、セクシーさや可愛さを瞬時にアピールする演出的な要素と、個人的なこだわりや願いを叶えてくれるお守り的な要素があるからです。2つの要素を揺れ動く楽しみは、いわば女の特権。外向的な下着と内向的な下着、今日のあなたはどちらを支持しますか?

津村耕佑 「ファイナル・ホーム」 2012年

■京都服飾文化研究財団: https://www.kci.or.jp/

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