受け継がれるランジェリーの思想。
世界最古のブラジャーが発見されたというニュースが、今年の夏ごろから話題になっています。先日も「中世のブラにも乙女心」という見出しで、朝日新聞の国際面に大きく取り上げられていました。このブラが発見されたのは、15世紀に貴族が住んでいたオーストリアの古城。見つかった4つのブラのうち2つは肩紐がついており、リネン製でCカップだったとか、レースや刺繍が丁寧にほどこされていたなど、マニア心をくすぐる話です。
実際、このニュースは世界に広まり「復元して身につけたい」等の問い合わせが殺到したとのこと。掲載されていた写真を見ると現代のブラとほとんど変わらない印象で、もしそこに新品のものがあれば試着したくなりそうです。同じ城の床下から男性用の「ひもパン」も見つかったらしいのですが、こちらはあまり話題になっていないような......。女性のブラジャーというのは、特別なロマンをかきたてる存在なのだなと思いました。
フレンチランジェリーの代名詞、シモーヌ・ペレールの2013年春夏のテーマは奇しくも「遺産」。クラシックなデザインを復刻させたものがたくさんありました。写真のナイトドレスはエンブロイダリーレースとサテンの組みあわせが美しい「OLYMPE」というラインで、胸元と背中のVの切り込みが印象的。フランスで人気のスタイリスト、アレクサンドラ・エルビムさんも、今回のコレクションの中でいちばん着てみたいラインだと言っています。
シモーヌ・ペレールは、1948年の創業から現在まで、ファッションに敏感なパリジェンヌたちから支持されてきました。その魅力の秘密は、創業者マダム・ペレールのバランス感覚にあるのでしょう。女性が下着に求める「美しさ、エレガンス、上質、セクシー、快適」といった要素が網羅されているからです。彼女の思想は、息子のフィリップ・グロドネル氏（現社長）と娘のキャトリーヌさんにきちんと受け継がれているそうです。
木曜はラッキーカラーを身につける。
一方、日本に目を向けると、シモーヌ・ペレールとほぼ同時期の1946年にワコールが創業しています。1950年には第1号のブラジャー「101号」が誕生。衣料品は政府の統制下にあったため、材料となる布の仕入れに苦労し、反物の端切れを買い集めて縫製したということです。1951年ごろにつくられたブラの写真がホームページに掲載されていますが、これ、前述の世界最古のブラにもどこか似ており、ぜひ復刻版を出してほしいなと思います。
ちなみにワコール初の広告キャンペーンがおこなわれたのは1959年春。太陽族や六本木族とともにBG(ビジネスガール)、CG(キャリアガール)という言葉が生まれた時代です。初のキャンペーン商品は、その名も「CGブラ」。キャッチフレーズが秀逸で「ラッシュアワーからデイトまで」というものでした。機能的でありおしゃれでもあるというポイントがきっちり表現されたコピーですね。
1959年秋のキャンペーン商品は「ワコールネグリジェ」で、広告のキャッチフレーズは「夢をつつむ!!」でした。レトロ感あふれるボディコピーもご紹介しましょう。「ロマンチックなあなたの夢のひとときを ネグリジェでつつみましょう ワコールネグリジェは上品な色と肌ざわり それにデザインに品のあることも忘れてはならない大きなポイントです」。こんなネグリジェが復刻されたら、ぜひ、ぐっすり眠れる休前日に着てみたいです。
シモーヌ・ペレールは、今回のコレクションで曜日ごとの色の提案をしていました。フランスで重要な「幸運のブルー」は木曜のおすすめカラー。ボジョレーヌーボーの解禁日が第3木曜であることからもわかるように、フランスでは週末が木曜から始まる感覚だからでしょう。これを見て、曜日ごとに下着のイメージを変えるっていいなと思いました。手持ちの下着の中に眠っている「遺産」がある方も多いのではないでしょうか。週に１度、そういうものを引っ張り出して身につける「クラシック・デー」をつくってみてはいかがですか？
■SIMONE PERELE（シモーヌペレール）：https://www.wacoal.jp/import/perele/
