モテるお店は、寛大でやさしい。
久しぶりに神戸を訪れました。かつて東洋のウォール街と呼ばれた旧居留地は、銀行や高級ブティックが建ち並ぶエキゾチックな街。カジュアルブランドですら重厚なビルに入っており、通りを1本隔てただけで雰囲気が一変します。通勤時、クラシカルな建物に吸い込まれていく女性たちの姿が街と調和しているのを見て、ファッションを決めるのは環境なのだと確信しました。日々の装いは、その人が多くの時間を過ごす風景と似てくるのでしょう。
旧居留地のシンボルといえば大丸神戸店です。回廊や街灯を配した石造りの美しい建物ですが、この外観が生まれたきっかけは20年前の阪神・淡路大震災。倒壊した3分の2の部分を新たに建設することになったとき、旧居留地らしさを残そうという意識が強まったといいます。その結果、近代洋風建築の意匠を取り入れたクラシック&モダンな建物が誕生。復興グランドオープン初日には12万人が来店し、売上高でも地域一番店となりました。
私が神戸を訪れた理由はもちろんランジェリーです。昨年2月にリニューアルし、約1.7倍の広さになった大丸神戸店の婦人肌着売場ワコールコーナーを見てきました。注目すべきは拡張されたプレステージゾーンで、ゆったりくつろげるソファなどのインテリアにこだわったサロン風。ビューティーアドバイザーの継本さんと豊田さんにお話を伺ったところ、この売場には訪れる人を下着好きにしてしまう特別な魅力があるようです。
4タイプのフィッティングルームを備えており、何はともあれ試着しないで帰るのはもったいないです。店内の空気もスタッフの接客も温かく、お客様の滞在時間は長いそう。常連の方が多いというのもうなずけますね。こういうお店は、言ってみればモテる男性のようなもの。モテない男性は女性に幻想を抱いており狭量で厳しいけれど、モテる男性はいろいろな女性を知っているから寛大でやさしいのです(という説がありますよね?)
心ゆくまで試着して、新しい扉をひらく。
写真でご紹介したフィッティングルームはいちばん明るいタイプの部屋。鏡のサイドに照明が入っており女優の控え室といった感じ。鏡の一面は動くのでバックスタイルの確認もばっちりです。私は、初めて後ろ姿がチェックできる試着室に入ったとき、今まで何をチェックしていたのかというくらい意識が変わりました。下着も洋服も、デザインの魅力は立体感であるとわかったのです。後ろ姿にこだわり始めたら、下着の楽しみは倍増します。
ここで試着されるブラの枚数は、1人平均5枚くらいだそう。皆さん試着を楽しんでいるんですね。意外な色が似合うことや、つけてみると印象が変わることを発見する人も多いといいます。「1枚の白いショーツとの出会いがきっかけで、その後も白のランジェリーばかりをコレクションしている方もいらっしゃるんですよ」と継本さん。「素敵な白の新作が出ると、その方にご案内しなくては、と思うんです」。
お客様の年齢層は0歳から100歳くらいまでだそうで、中には母親と娘と孫娘を引き連れ、4世代で来店する女性も。3人が別のブランドのランジェリーを選ぶ姿を、小さな孫娘が指をくわえて見ているという図式でしょうか。下着の文化はそんなふうに受け継がれていくのですね。おぼろげな記憶として、私も母に連れられてデパートに買い物に来た幼い日を思い出しました。(神戸近郊に住んでいた幼少時は、まさに大丸神戸店に来ていたのです)
店長の継本さんは「下着売場に抵抗がある方にも気軽に立ち寄ってほしい」と言います。「お手頃プライスのものもありますし、何よりランジェリーは見ているだけで気持ちが豊かになりますから」と。トレフル、スタディオファイブ、ワコールディアなどプレステージブランドのディスプレイも美しく、目の保養になることは間違いないですね。大丸神戸店に来たら4階の下着売場へ。1枚のショーツから新しい人生が開ける可能性は、とても高いと思います。
■大丸 神戸店
兵庫県神戸市中央区明石町40番地 tel.078-331-8121(代表)
https://www.daimaru.co.jp/kobe/
4F 婦人肌着売り場(ワコールコーナー)
■大丸 神戸店※ワコールの店舗検索より:https://www.wacoal.jp/shops/detail.html?sid=280022